兼題:蓮根(れんこん)


2020年12月12日(土)放送

兼題:蓮根(れんこん)

 

▼選句ポイント

・蓮根の形や質・収穫の特徴

・産地や生産者への想い

 

▼ギュッと!特選

大海の栓を抜くごと蓮根掘(はすねほり)     池之端モルト

【解説】
胸まで泥につかって掘っている現場を思いました。『俳句王国がゆく』で宮崎のれんこん畑を訪ねた時掘るおじさんは足の指先でれんこんを探りあて、足の指で継ぎ目をひねり切って収穫していました。まさに「大海の栓を抜くごと」という比喩(ひゆ)ならではの動作。
しかもこの「大海」は泥の海なのですね。最後に、季語が出てくる語順も巧みでした。

 

▼入選

蓮根(れんこん)掘る掘る雨があたたかいよ  花紋

【解説】
れんこんの収穫は畑の水を抜き、手で丁寧に掘り出すやり方やホースで放水して泥を払いつつ収穫するやり方もあります。この句は、放水を思いました。水の冷たさ、泥の冷たさの中で、降り出した「雨」。顔に当たる「雨があたたかいよ」という、つぶやきに実感があります。

 

折らぬやう沈まぬやうに蓮根(はすね)掘る     かつたろー。

【解説】
「折らぬやう沈まぬやう」って何?と思わせておいて、下五で答えが分かるというタイプの句ですね。上五中七が、いかにもレンコンならではの言いまわし。丁寧に掘っている様子が分かるような、ゆったりとした調べが内容に似合っています。

 

色白の蓮根(はすね)吉野は水豊か       あずお       

【解説】
「蓮根(れんこん)」を詠んだ一句です。「色白の」で人物かなと思わせておいて「蓮根(れんこん)」が出てきます。「吉野」は吉野川、四国三郎の豊かな水がはぐくむ、れんこんの肌であるよという一句には、この地へのご挨拶の気持ちも込められています。

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

今回の兼題「蓮根(れんこん)」じつは少し意地悪な出題でした。ほとんどの歳時記が「蓮根(れんこん)掘る」という農作業を季語として載せていて、植物の季語として「蓮根(れんこん・はすね)」を載せているのは少数派の歳時記です。兼題「蓮根(れんこん)」といわれて、はて?と首をかしげた人は、とてもよく勉強している証拠。中には「蓮根(れんこん)掘る」と「蓮根(れんこん・はすね)」を作り分けてくれた人たちもいて天晴れ!です。

・地震あり動けぬままの蓮根掘     新濃 健          

 冬めくや蓮根並ぶ直売所         新濃 健          

・鼻先の泥は乾きて蓮根掘り       蒼奏

 不発弾の話し蓮根すりながす     蒼奏      

蓮根掘り畦より夫の指図かな     藤田ゆきまち      

 蓮根のあな菜箸のとらへたり     藤田ゆきまち      

鍬掘りの蓮根泥の乾くまま       一港             

 蓮根の先ずは灰汁抜く大三十日   一港       

左足沈み右足沈み蓮根掘る       木染湧水  

 蓮根を洗うシンクがまた詰まる   木染湧水

富山の露玉さんは、兼題「蓮根(れんこん)」は、歳時記に載ってないと判断し、別の季語と取り合わせて見事な作品を仕上げてくれました。

すりおろす蓮根白し雪もよひ   富山の露玉

 蓮根の穴の白じろ神の留守     富山の露玉

 

【解説】
なぜ、多くの歳時記が「蓮根(れんこん)」を季語として載せていないのか、その理由はよく分かりません。「図説俳句大歳時記(角川書店)」には「早いものは八月中旬、多くは秋の彼岸を中心として掘るが、農家の仕事の都合や市場の値段を考えて冬の間でも収穫する」とあります。秋の農繁期を終え、蓮根掘りの仕事にかかるのが初冬の頃、これが季語として定着していったのかもしれません。
「大根引く」「大根洗う」は人事の季語。「大根」は、植物の季語と区別する歳時記が多いように「蓮根(れんこん)」も「蓮根掘る」が人事の季語。「蓮根(はすね・れんこん)」が冬の植物の季語となっても良いのではないかと思います。
レンコンの産地が多い四国、「蓮根」そのものが多くの歳時記に載る日がくるよう四国から季語を発信していけたらいいと思いませんか。そのためには、たくさんの人たちが「蓮根(れんこん)」を冬の植物の季語として使い、多くの秀句が生まれる必要があります。レンコンの生産者を応援しつつ、私たちはレンコンの秀句に挑戦してみましょう。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

 

投稿時間:2020年12月12日 (土) 07時55分


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