兼題:秋祭(あきまつり)


2020年10月10日(土)放送

兼題:秋祭(あきまつり)

▼ギュッと!特選

猿熊鳥(さるくまとり)山に集ひて秋祭    じゃすみん

 

【解説】

こんな視点で「秋祭」を描くことができるのかと、少々驚きました。

「秋祭」の日は里も浦も、太鼓や笛や歓声で沸き立ちます。

「猿」も「熊」も「鳥」も一体何事かと、「山に集ひて」

じっと聞き耳を立てているに違いありません。

「山」も、木の実などの餌となるものが豊かに実った秋なのでしょう。

生きとし生けるもの皆、秋の実りに感謝する「秋祭」の今日は

豊作を見守って下さった田の神様が山へ帰っていく日。

田の神さまを迎えるため「猿熊鳥山に集ひて」いるのかもしれない。

そんな読みも膨らんできます。

 

▼入選

【選句ポイント】焦点を一つに絞る

 

・山頂は餅投げ始(はじ)む秋祭り  ねじり花 

【解説】

「宿毛金比羅宮の秋祭りには餅投げがあります」と

コメントがありました。

「始(はじ)む」は他動詞なので「投げ始(はじ)む」と

複合動詞で読んだほうが、現場の勢いがでるように

思います。

「餅」は冬の季語ではありますが、

この場合は、秋の豊作の感謝を捧げる「餅」。

主たる季語は「秋祭り」ですね。

 作者は、「山頂」にいるのか、「山頂」間近で

餅投げの歓声を耳にしたか。

いずれにしても、豊かな秋を喜ぶ気持ちが溢れる

一句です。

※文語「始む」=口語「始める」(口語「始まる」に対する他動詞。)

 

 

・秋祭鯛(たい)選(よ)る浜のさんざめき  藍月

【解説】

こちらは海辺の「秋祭」。

「桜鯛・花見鯛」ならば春の季語ですが、

「鯛」のみでは季語になりません。

「秋祭」の料理に使う「鯛」を選んでいるのです。

「鯛」の華やかさ、めでたさが、季語「秋祭」を言祝ぎます。

さらに後半の「浜のさんざめき」で海辺の町全体の喜びも

伝わります。

「秋祭」当日の朝でしょうか、「秋祭」を明日に控えて

準備をしているのかもしれません。

時間軸を前日、そして翌日と広げて句材を探す視点もあって

よろしいかと思います。

 

・石臼のゴリゴリゴリと秋祭り   ツユマメ末っ子@8

【解説】

「石臼」で挽いているのは、収穫した大豆

それとも蕎麦の実でしょうか。

「ゴリゴリゴリ」という当たり前のオノマトペを

「秋祭り」という季語が心躍る音に変えていくかのよう。

これもまた、秋祭りのもてなしのための「石臼」ですね。

ただ「石臼」を引いているだけなのに

季語「秋祭り」と取り合わせると、喜びと感謝が溢れてくる

これが季語の力なのだと思います。

 

 

▼夏井いつきの添削「はじめの一歩!」

◆焦点を一つに絞るヒント◆

 

・神輿(みこし)には旧(ふる)き町の名秋祭  キートスばんじょうし

・太刀(たち)は灯(ひ)を黄金(こがね)と返し秋祭     一港

【解説】

山車や神輿、お練りや舞いの動きなど細部の一点を

描写するのもコツです。

 

・秋祭水の都に「ヨイトサー」               あみま

秋祭チキテキトンと御練(おね)りかな     おぼろ月

【解説】

かけ声や、現場の「音」に注目してみるのも一手。

それぞれ勢いとテンポが違っていて、面白いですね。

 

>>夏井いつき添削「はじめの一歩!」
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2020年10月10日 (土) 07時55分


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