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無人駅活用し新たな風が到来! 駅舎にクラフトビール工場!?

無人駅でクラフトビール造りを決めた工場長や地元の人たちの思いは
  • 2024年04月03日

全国で年々増加している鉄道の無人駅。島根県内のJRの駅数は68駅でそのうち無人駅は59駅と割合はおよそ86%に上ります。こうした無人駅をどう活用していくかが課題になる中、地域を盛り上げようと新たな動きが出ています。
                             (浜田支局 記者 浅井和人)

無人駅に新たな風が!

無人駅・波子駅

江津市にあるJR山陰本線の波子駅。特急列車も停車しますが、34年前から無人駅になっています。外から見ると普通の駅舎ですが・・・。

 

駅舎の中に広がるクラフトビール製造工場

中に入ると、広がっているのはなんと工場。実はこれ、クラフトビールの醸造所なんです。駅舎の中にあった改札や駅長室などを取り外して改装しました。

 

地元に住む85歳男性

「駅舎に何もなかったから誰か活用してくれる人がいればいいなと思っていた。工場が来てびっくりした」

 

醸造所にはクラフトビールなどを提供するカウンターも

駅舎でクラフトビール造り。この一風変わったアイデアを実現したのが、山口厳雄さんです。江津市で7年続くクラフトビールを中心とした醸造会社の工場長です。

 

山口厳雄さん

「ビールなどのお酒と鉄道が非常に合う、マッチするなということでいい組み合わせではないかなと思っていました。無人駅で利用者数もあまり多くない駅ですが、活性化して地元の核になって人を呼べるような施設になればいいなということで移転しました」

無人駅・波子駅の栄枯盛衰

波子駅開業30周年

波子駅が開業したのは、今からおよそ100年前の1921年。多い時にはJR山陰本線の利用客は年間およそ3万人にのぼりました。

 

波子駅と停車する特急列車

しかし、過疎化によって利用客の減少が進み、無人駅に。その後、2000年から、江津市から委託を受けた地元の団体や協議会が管理してきましたが、利用客が減ってきたことなどが理由でおよそ2年前、業務を終えざるを得なくなりました。

活気を取り戻そうという動きが・・・!

ビール列車

そこで手を上げたのが山口さん。もともと、JR山陰本線で乗客にクラフトビールを提供する「ビール列車」を企画するなど沿線を盛り上げる活動を進めてきました。そんな中、波子駅の窮状を耳にし、今回の「クラフトビール工場」の建設を申し出ました。

 

山口さん

地域のインフラとして利用法を提案していかないと加速度的に鉄道の利用が減っていっています。われわれも元は三江線があった時に醸造所をつくって三江線の列車イベントも企画したことがあったんですが、残念ながら利用者が減っていくことで廃止になってしまったという経緯があるんです。大事なインフラの設備を守っていくためには利用率を上げる提案を民間もしていかないといけないのではないかなと思っています。

 

設置されたクラフトビールタンク

市の許可を得て、ことし1月から駅舎の改装に取りかかり、醸造に必要なタンクやクラフトビールを提供するカウンターなどを設置。今後、地元産のゆずを使った「ゆずスカッシュ」などの製造も開始する予定で、夏からは地元の素材を使ったクラフトビールの製造に取りかかりたいとしています。

 

波子まちづくり活性化協議会 黒川光憲 会長

こうした取り組みに、およそ2年前まで駅を管理してきた地元の協議会の関係者やJRも沿線の盛り上がりにつながるのではないかと期待を寄せています。

「やっと駅舎を有効に使える人が現れたことでわれわれとしては大歓迎です。まちの人たちもにぎわいの創出ができるので喜んでいると思います」

地元の協議会は山口さんと一緒に来月神奈川県横須賀市でお店を出店するほか、ことし9月にも「ビール列車」を企画しているということです。

 

山口さん

江津にはもっともっと楽しいことがあって、いろいろな観光ができたりおもしろい人たちだったり、まちの人がとても温かいよというPRを江津市の玄関口の波子駅でしていきたいです。1回降りてもらってお酒を飲んでもらってわれわれがPRをすることで江津市を観光してもらったり、散策してもらえる人が増えればいいかなと思っています。

山口さんの取り組みにはJR側も期待していて、担当者は「鉄道を利用して多くの人に足を運んでもらい、駅を利用して地域経済の活性化やまちの盛り上げにつなげてほしい」と話していました。

 

山口県萩市 無人駅・三見駅
移住者向けの体験宿泊施設の目の前は駅のホーム

中国地方では、山口県萩市の三見駅でも無人駅を活用して移住者向けの体験宿泊施設ができました。また、鳥取県大山町の下市駅や山口県下関市の阿川駅ではカフェが開業しました。
県内でも無人駅を活用して地域を盛り上げていってほしいですね。

  • 浅井和人

    浜田支局 記者

    浅井和人

    2022年入局。
    去年4月に広島局から松江局に異動し、ことし4月から浜田支局担当。
    鉄道旅と地酒が大好きで、学生時代には鉄道のみで北は北海道最北端の稚内駅、南は鹿児島県最南端の枕崎駅まで踏破。

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