ページの本文へ

しまねっとマガジン 島根特集

  1. NHK松江
  2. しまねっとマガジン 島根特集
  3. 「一畑百貨店」閉店まで1か月 従業員の思い 

「一畑百貨店」閉店まで1か月 従業員の思い 

  • 2023年12月15日

懐かしい!デパートのお菓子屋さん

一畑百貨店地下1階。
食品売り場の一角にあるお菓子屋さんが、今回の取材の舞台です。
 

 

くるくる回る「お菓子の回転台」は全国的にも珍しいそう


懐かしさを感じるお菓子の回転台。
古きよき百貨店の空気に誘われて、子どもからお年寄りまで幅広い世代が足を運んでいます。
 

 

お客さんからの評判も上々! 接客中の大江さん

大江美保子さん(63)。
30年以上、この店で働いているベテラン店員です。
“大江さん目当て”で来店するお客さんも多いんだとか。

常連客

大江さん、すごく親切な方でね。ファンですよ。

人生の大半を百貨店とともに

高度経済成長のさなか、1958年に松江市殿町に開店した一畑百貨店。

殿町時代の一畑百貨店
大江さん(当時18歳)

大江さんが百貨店の従業員になったのは18歳の時のこと。
当時は別のテナントの店員として働いていました。

 

オリジナル商品もたくさん!

その後、結婚・子育てを経て、今のテナントに復帰。
今では、店内の装飾から商品開発まで運営を一手に担っています

大江さん

自分が作った商品を買ってもらえるのは、“やったな”って感じでうれしい。
仕事は毎日一緒ですけど、毎日違う人に会える。
それが販売業の醍醐味かなと思います。

閉店発表の衝撃と 近づく“最後の日”

しかし、百貨店は業績の悪化などを理由に、2024年1月14日に閉店することに。
大江さんを取り巻く環境も一変しました。

“すき間”が目立つバックヤード

本来ならクリスマス商戦に向けて、お菓子で満杯になっているはずのバックヤード。
ことしは閉店が近いことから、在庫は半分以下の量しか置いていません。
 

 

朝礼に参加するのも、あとわずか

“第2の家庭”といえるほど長い時間を過ごした職場とも、まもなくお別れ。
大江さんをはじめ、多くの従業員が仕事を失うことになります。

 

大江さん

定年まで続いてほしかったです。
無職になってしまうので、閉店の発表を聞いたときは“どうしよう”と思いました。

背中を支えてくれるもの

“最後の日”に向けてー。
大江さんの背中を支えているのが、長年交流を深めてきた常連客の存在です。
閉店が迫る中、連日多くの人が激励に訪れています。

 

こちらのお客さんとは学生時代からのお付き合い
常連客

大江さんは“松江のお母さん”みたいな存在。
いつも優しくて、いろいろなことを気にかけてくれます。

店内に掲げられた利用客からのメッセージボードにも、感謝の言葉が並んでいます。

感謝のメッセージがあふれていました

閉店後のことは、まだ決めていないという大江さん。
今は、店にとって“最後のクリスマス商戦”に専念しています。

「1月14日までやっています」

 最後の1日までー。
大江さんはお菓子と笑顔を届けます。
 

大江美保子さん
30年は長かったようでもあり、短かったようでもあり…。
いろいろな人にも出会えましたし、本当にお客様には感謝しています。
くよくよしても仕方がないので、お客様と楽しく会話をしたりとか、
楽しく仕事をするのが一番だなと思っています。
お客様にも、楽しくここに来店していただきたいです。

従業員の再就職支援が課題

テナントを含め、再就職を希望している従業員はおよそ160人にのぼります。
2023年12月現在、従業員向けの求人は、県内外のあわせておよそ130社から600人余りにのぼり、希望者の3倍を大きく超えていますが、これまでの経験を生かせるかなどの“マッチング”が重要になります。 

最後の営業日まで職務を全うしようとする従業員たち。
百貨店側は「ベストな再就職ができるよう1人1人に寄り添う」として、関係機関とも連携しながら、
最後までサポートを続けていくことにしています。

  • 堀場貴登

    松江放送局 記者

    堀場貴登

    遊軍担当

ページトップに戻る