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群馬 こけしの"刃"がピンチ 工房減少の中で伝統継承するために

  • 2023年03月13日

「ほっとぐんま630」でお伝えしている「菅原が行く、中谷が行く」。今回は、群馬県の伝統工芸品「創作こけし」についてです。その制作現場では今、こけし作りに欠かせない「刃」を手に入れるのが難しい現状があります。危機に直面する現場に、行ってきました。

(前橋放送局 キャスター 菅原成美/2023年3月取材)

こけし作りに“刃”は必要不可欠

向かったのは、榛東村にある国内最大規模のこけし工房です。

伝統的なこけしから五月人形、人気のキャラクターを模したものまで、バラエティー豊かなこけしの数々が並んでいました。

この工房の3代目、副社長の岡本義弘さんに話を伺いました。

菅原キャスター

「棚には、いろいろな名前がはってありますけど、なんですか?」

岡本義弘さん

「こけしの削る刃物ですね。こけしの元となる部分なので、一番重要なところになります」

同じ種類のこけしを1万個以上作ることもある、こちらの工房。機械に取り付けて木を削り出す、この「刃」が必要不可欠です。

「こんなにいろんな種類の刃が必要になるんですね」

「200とか300ぐらいはあるんじゃないかなとは思います」

“刃”を探し求めて20年

そんな作品作りに欠かせない「刃」が今、危機に直面しています。

「今まで作っていた方が亡くなってしまって、もう10年くらいたつかな」

職人の高齢化などが理由で、新たな刃が手に入らなくなっているのです。

群馬の創作こけしは戦後、観光に訪れた人がおみやげとして買い求め、その後、発展してきました。ただ、工房の数は近年激減。50年あまり前には、170ほどありましたが、今では、20ほどしかありません。

それに伴い関連産業も衰退。制作のための道具の作り手も不足する事態が起きています。

岡本さんは、日本中を回り刃を作ってくれる職人を探したものの見つからず、気づけば20年ほどの歳月がたっていました。

卯三郎こけし 副社長 岡本義弘さん
「木を削る刃物は特殊で、形にはなっても削れないとか、削るための刃物を持って行って見せると『うちでは無理』と言われることががほとんどでした」

海の向こうで、ようやく

「このままではいずれ、こけしの生産を止めざるを得ない」

やむなく活路を求めたのは木工機械の生産が盛んな台湾でした。

台湾での商談の様子(写真提供:阿部真行さん)

今使うものに近い「刃」を製造する工場があると知り現地へ。
「じか談判」してなんとか入手に至りました。

(写真提供:阿部真行さん)

そして、すぐに試作を繰り返した結果、採用することに。当面の危機を何とか回避したのです。

「(刃が入手できて)安心感しかないです。やっぱり道具があって、自分たちも生かされている感じもするので」

次世代につなぐために

群馬伝統の「こけし」を未来へ継承していくために。岡本さんは、魅力的な作品をもっと多く生み出すことで、業界全体の活性化に貢献したいと意気込んでいます。

卯三郎こけし 副社長 岡本義弘さん
「関連した道具が手に入らないと1つのものが出来上がらないという課題は、どこの産業でもあるんじゃないかなとは思っています。次の世代でも長く続けられるように、しっかり、その先を見据えながらやっていくことがいいんだとは思っています」

岡本さんによると最近は海外からの需要が増えているということなんです。
ただ、「日本の人にも買い求められる商品の開発も大切にしていきたい」とも話していました。

  • 菅原成美

    前橋放送局キャスター

    菅原成美

    2019年からキャスター。夕方のニュース番組「ほっとぐんま630」の担当3年目に突入。群馬の「気になる!」を体当たりで取材中

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