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中之条 アートを詰め込む!彫刻家の“クラフトチョコレート”

バレンタインといえば、チョコレート。

「ちょっと変わったチョコレートを作っている人がいる」と聞きつけ、向かったのは県北部の中之条町。カカオ豆の焙煎からチョコレートの成形まで、作っていたのはなんと彫刻家!

町に移住したアーティストが、なぜチョコレートを?
チョコレートに込めた思いを取材しました。

 前橋放送局ディレクター 杉山 裕美/2023年1月取材 

一日限定30個!中之条発“クラフトチョコレート”

中之条の山並みをイメージした独創的な形に、
地元で作られたドライフラワーを生かしたお洒落なパッケージ。

一日の生産数は30個、売り切れてしまうこともあるという人気のチョコレート。
カカオ豆の焙煎からチョコの成形まで一貫して中之条町で製造された“クラフトチョコレート”です。

中之条にある小さな工房   作っていたのは・・・?

チョコレートを作っているのは、中之条町にある小さな工房。
ドアを開けると、さっそくチョコレートのいい匂いが!

中にいたのは、移住やUターンで町に集まったプロジェクトのメンバーたち。

西岳拡貴さん

「じゃあここから型に流し込んでいきます」

リーダーの西岳拡貴さんは5年前、千葉県からこの町に移住しました。

西岳さんが移り住んだきっかけ。それが中之条ビエンナーレです。
2年に一度、町全体を会場として開催されるアートの祭典で、西岳さんも作品を出展してきました。

2017年の西岳さんの作品 『STRIPPER』(画像提供:西岳拡貴さん)

実は西岳さんはパティシエではなくアーティスト。
中之条町を拠点とし、国内外で活躍する彫刻家なんです。

西岳拡貴さん

「『Hard Packing(過剰包装)』っていうタイトルの展覧会だったんですけど
一日一包装していって、毎日30日間包んでいったんです」

『Hard Packing』(画像提供:西岳拡貴さん)

見る人への問いかけなどメッセージ性を重視し、彫刻からプロジェクト作品まで幅広く手掛けます。中之条ビエンナーレに出展した際、町の空気や人の温かさに惹かれ、移住を決意しました。

「中之条町はすごく魅力的というか、いい規模感の町だなっていう感じがありますね。別の町で『アーティストです』とかいうと怪しいじゃないですか。その辺は、中之条ビエンナーレの下地があるので受け入れてくれてます。」

“アートの町”でアーティストができること

しかし、移住するアーティストが増え、中之条町がアートの町として成長するなか感じることがありました。

「アーティストがこの町でアート活動ばっかしていても、そんなに町に効果はないなって。中之条ビエンナーレが大きな船だとしたら、そこからどれだけ小舟を出していけるか。
なんか、アートをうまく使えるようになったらいいなとは思いますね」

アート作品を見るだけでなく、他の方法でも楽しんでもらうことはできないか?
そこで、目を付けたのが多くの人になじみがあるチョコレートだったのです。

“おいしい”だけじゃない?アートを詰め込んだチョコレート

手に取りやすい上、作り方はシンプル。工夫する余地が大いにあると考えました。
プロジェクトのメンバーに調理のプロはいないなか、半年以上、試行錯誤しました。

そうして完成したのが、中之条町の山並みをイメージしたチョコレートです。

西岳拡貴さん

「普通一般的なチョコレートって均一な厚みで、線が入ってる
僕たちのチョコレートは、たまたまその日に割れる大きさとか厚みとかが違ってくるんですよ」

口に入れる大きさや厚みで、味や触感も変わり、“一期一会”の味が楽しめるといいます。

さらに、素材にもこだわりが。
取材に訪れたこの日、作っていたのはバレンタイン限定のチョコレートです。

取り入れたのはなんと、中之条町で作られた一味としょうが!
できあがったのは、メードイン中之条の“ちょっぴり大人”なチョコレート。

「バレンタインっていうのを考えたときに刺激的なというか、甘いだけじゃないよっていう、そういうバレンタインデーにしたらどうだい?みたいな、そういうメッセージ性って感じかな」

“町への思い”  チョコレートに込めて

バレンタイン限定チョコレートの発売日。その完成を、多くの人が待っていました。
前橋市や渋川市など、中之条町以外からも買い求めるお客さんの姿が。

渋川市在住のお客さん

「遠いところの友達とかも、興味を持って一緒に来てくれる子とかもいるので
すごい魅力が伝わってるというか、盛り上がってるなと思います」

中之条出身のお客さん

「中之条の魅力を全国の人に発信してくれて、
活気づけてくれてると思ってるのですごく嬉しいです」

西岳さんが手掛けるチョコレート。そこには中之条町への愛が詰まっています。

「“おいしい”プラス“おもしろい”チョコレートを作りたいっていうのはありますね。僕らきっかけで中之条にちょっとでも興味を示してくれて、知ってくれれば、おもしろい町になるんだろうなと思いますね」

この町で“アーティスト”を取材して

「アーティストって普通の町では、不審者みたいな扱いなんですよ」

笑いながらそう話す西岳さんは、町への感謝を忘れません。

アートに、チョコレート。そして、中之条という町。
それぞれと真剣に向き合う西岳さんだからこそ、生み出せる味がある。
そう感じながら、私にはちょっとだけビターなチョコレートの味を、噛みしめました。

  • 杉山 裕美

    前橋放送局ディレクター

    杉山 裕美

    2020年入局。営業部門を経て去年からディレクターに。前橋局Twitterの“中の人”も担当。チョコ味ならなんでも好きです。

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