みなかみ町のカスタネット職人 この道60年の熟練技術に迫る
- 2022年11月02日

「ほっとぐんま630」でお伝えしている「菅原が行く、中谷が行く」。今回、菅原は芸術の秋ということで、子どものころ誰もが一度は手にしたことのある、「カスタネット」の職人さんを訪ねました。
(前橋放送局キャスター 菅原成美/2022年10月取材)
昔懐かしの赤と青のカスタネット

「昔懐かしのこのカスタネット。作っていた方を訪ねて今回はみなかみ町にやってきました」。
訪ねたのは、冨澤健一さん(とみざわ・けんいち)です。

この地で60年以上カスタネットづくりに取り組んでいます。

「昔懐かしの赤と青のカスタネット。これは冨澤さんが作っていらっしゃったものなのですか?」

「私の親が戦後それを開発しました」

みなかみ町で父の代から木工の工房を営んできたという冨澤さん。
カスタネットを作るようになったのは昭和22年ごろからだといいます。

子ども向けの教材として全国で使われ、最盛期の昭和50年代には、周辺の木工所とともに年間230万個を製造していました。
冨澤さんによると、カスタネットの響きを決めるのは内側の「へこみ」の部分。


「へこませばへこませるほど低くなって、へこみを浅くすれば浅くするほど、この音が高くなる。一番耳に聞こえやすい3000ヘルツぐらいの音になるように作っている」
いい音が鳴るへこみを作り出すため、冨澤さんは長年の経験と勘で刃をあてる角度や力加減を調整しています。


「大体のこの深さがどのくらいの音がするのかはわかる。音と手加減というか、手に行く感覚、重さとか、そういうのがあるから」。
かつては多くの注文でにぎわうも、日本の林業が衰退して木材が手に入りにくくなったことなどから
8年前にいったんは工房を閉めました。

そうしたところに自然保護団体などからカスタネット作りを続けてほしいとお願いされ、現在は、地元の間伐材を使って生産を再開しています。

材質や木目の異なる間伐材。
冨澤さんは、ひとつひとつの木と向き合い、それぞれの特徴を見極めながら加工していきます。
木の種類によって、完成したときの音の響きも変わってくるといいます。


「ブナで作るカスタネットは響きがいいですね。懐かしい音だけどちょっと高い音がする。でもヤマザクラで作るカスタネットもよく響きますね」

冨澤健一さん
「人が楽しんでくれれば自分の方も楽しくなるからいいじゃないかなと。子どもたちが喜ぶのが一番いいんじゃないかなと思います」
間伐材のカスタネットは、みなかみ町の道の駅「たくみの里」の中にある「森のおもちゃの家」で販売しているということです。
