群馬 部活動の地域移行 スポーツクラブから見えた課題は
- 2022年10月31日

教員の負担軽減などのため、2023年度から休日の部活動を段階的に地域のスポーツクラブなどに移す「部活動の地域移行」。受け入れに向けて取り組む群馬県内のスポーツクラブを取材すると、効果への期待の一方、課題も見えてきました。
(前橋放送局/記者/長谷川将万/2022年10月取材)
受け皿となるスポーツクラブの現場は

高崎市で活動している新町スポーツクラブの野球教室です。平日は部活動に取り組んでいる生徒たちが休日に個人のスキルアップを目指して参加しています。
この日は生徒9人に対してコーチは7人。きめ細かな指導を受けることができるとあって、生徒たちにも好評です。

「学校の部活は顧問が1人で教えていますが、地域のクラブは多くの先生がいるのでいろいろな教え方があっていいです」

またスポーツクラブでの活動は幅広い世代との交流も生んでいます。
新町スポーツクラブのバレーボール教室では、中学生だけでなく小学生や高校生それに大人たちも一緒に練習をしています。

こうした交流が地域との結びつきを強め、生徒たちの心の成長にもつながっているといいます。

「他校の人とか大人とかと交流できるのが1番いいと思います
私も頑張って小学生に教えようと思っています」
気になる保護者の負担は・・・
スポーツクラブに部活動を移行するにあたって、懸念されるのは保護者の経済的な負担です。
新町スポーツクラブでは、年間の会費は2000円(同一世帯であれば何人でも上限3000円)。
このほか、中学生の場合は月800円の保険料に加えて種目ごとに月の会費が1000円程度かかります。
クラブの数も運営できる人材も足りない
課題はほかにもあります。その1つが受け皿となるスポーツクラブの数です。県内で現在活動しているのは33のクラブ。市町村の数に対する割合は全国で2番目の低さとなっているんです。
さらにクラブを増やそうとしても、そう簡単にはいきません。クラブを運営するには日本スポーツ協会が認定するクラブマネジャーなどの資格が必要となります。
適切な経営管理や生徒がケガをしたときの対応などの専門的な知識を備えた人たちが講習や試験を経て資格を取得できます。
ところが、県内ではクラブマネジャーはわずか5人。
取得に10万円近くの経費がかかることなどがネックとなっています。

新町スポーツクラブ・クラブマネジャー 小出利一さん
「クラブマネジャーは地域と学校をつなぐコーディネーターの役割を担っています。
クラブマネジャーの不足は解消しなければならない課題です」。
クラブマネジャーの育成を

クラブマネジャーなどの人材育成はどうすればいいのか。そのヒントとなる自治体があります。
高崎市でことし9月に開かれたスポーツクラブの講演会。
そこに招かれたのが岐阜県スポーツ協会の藤堂綾子さんです。

岐阜県では、スポーツ協会と県が共同で運営するセンターが資格取得の補助を行うなど、
クラブ運営ができる人材の育成に力を入れています。
藤堂さんは、人材の育成には行政のサポートが重要だと強調します。

「岐阜県のスポーツ推進計画に、総合型クラブの支援として、講習会や資格取得にかかる経費を支援すると明記されています。これにより持続的に人材育成ができています」
地域移行スタートまであと5か月
部活動の地域移行をめぐっては、地域や学校ごとに事情や課題が異なるため、その調整役を担う人材は欠かせません。また、さまざまな競技がある中で指導者をどう確保するのか、そして保護者の経済的な負担をどうするのか。地域移行を5か月後に控える中、課題は山積しています。
部活動は人間形成につながる子どもたちの大切な学びの場です。それを守るためにも、十分な議論と体制づくりを進めていく必要があります。