ページの本文へ

ぐんまWEBリポート

  1. NHK前橋
  2. ぐんまWEBリポート
  3. 群馬クレインサンダーズ 水野宏太新ヘッドコーチインタビュー【全文掲載】

群馬クレインサンダーズ 水野宏太新ヘッドコーチインタビュー【全文掲載】

  • 2022年09月29日

バスケットボール男子、Bリーグ・B1の群馬クレインサンダーズ。昨シーズンは25勝して、B1昇格初年度の最多勝利数記録を更新しました。

そのチームの指揮を今シーズンから執るのが水野宏太ヘッドコーチです。新戦力を補強して臨む新しいシーズン、どのように勝ち抜いていこうとしているのか。30分の単独インタビューで、たっぷりその胸の内を語ってくれました。

(前橋放送局記者 中藤貴常/2022年9月取材)

バスケットを通して群馬を盛り上げたい

ーーーヘッドコーチに就任してから3か月ほどですが群馬の印象は?

自然が多くあって住みやすいところですね。家族で引っ越してきて、コロナ禍でなかなか外には行けないんですけど、子どもたちが育っていく環境としてとてもいいと思っています。

ーーー「ご当地グルメ」は食べましたか?

焼きまんじゅうを1回、スーパーで買って食べたのと、焼きそば、それもスーパーだったんですけど、食べたのと、あとは鳥弁当。練習会場に移動する時間がかかるので、その時に食べますね、すごく好きです。焼きまんじゅうは味が濃いですね。もともと自分たちの家の食事は薄味が多いんですけど、たまに食べるものとしては、ああいう“パンチ”がきいたものはおいしいと思います。

水野宏太ヘッドコーチ プロフィール

1982年 東京都出身 ウエストバージニア大学卒業
2008-13 リンク栃木ブレックス(アシスタントコーチ)
2009-11 男子日本代表(アシスタントコーチ)
2013-14 レバンガ北海道(アシスタントコーチ)
2014-15 レバンガ北海道(ヘッドコーチ代行)
2015-18 レバンガ北海道(ヘッドコーチ)
2018-22 アルバルク東京(トップアシスタントコーチ)
2022- 群馬クレインサンダーズ(ヘッドコーチ)

ーーー数あるチームの中から群馬を選んだ就任の決め手はどこにありましたか?

ありがたいことにいろいろな話をいただいたんですけど、群馬クレインサンダーズに決めたのは、まずは(スポンサーの)オープンハウスと群馬クレインサンダーズ、あと太田市の3者で行っている取り組みの中で「地方創生」というすばらしいプロジェクトがあった。バスケットボールを中心として、どう地域を盛り上げていくのかというプロジェクトをやっていると話をいただいて、その考え方、取り組みにすごく感銘を受けておもしろいなと思ったのが1つです。ほかには、トーマス・ウィスマン前ヘッドコーチが僕の恩師なんですけど、日本代表や今の宇都宮ブレックス、昔は栃木ブレックスという名前だった時に、ウィスマンがヘッドコーチで自分がアシスタント(コーチ)という形で一緒に仕事をさせていただいた。その中で、すごくいろいろ勉強させてもらって、自分のキャリアの本当にプロとしてのはじめの成長の部分だったり、立場だったり、いろいろチャンスをいただいて勉強させてもらった方だったので、その方が率いたチームの自分がその後にやるということにすごく魅力を感じたというのが大きいですね。

コーチとしての原点はアメリカに

ーーー「コーチを仕事にしよう」と決めたのは、アメリカでの大学生活が始まりだと聞きました

実はアメリカに留学したのは、ヘッドコーチになるということではなかったんです。当時、自分がプロとしてのキャリアもない、実業団でプレーしていない人が、まさかコーチになることができるというイメージがまったくなかったので、好きなバスケットに関わって仕事をするのにはどうしたらいいんだろうって考えた時に、スポーツ医学が進んでいるアメリカでトレーナーになったら、もしかしたら自分がバスケットの世界で働けるんじゃないかということをまず一番最初に考えたんです。それで、アメリカに行ってアスレチックトレーナーになることを目標に最初は(アメリカに)行きました。

ーーーそこからなぜコーチを目指すことに?

紆余曲折、いろいろありながら、自分が本当にどういう仕事をしたいのかと思った時に、「もっと現場でバスケット教える」、もしくは「バスケットに関わる仕事をしたい」というふうに思ったのがきっかけでした。最初はトレーナーになるためのプログラムに入る前のテストを受ける段階までいっていて、必要科目を取り終わって、その後いざ面接を受ける前に、75時間の実習を受けることが必要だったんです。それで実習を受けている時、本当に自分がこれを将来専門職としてやっていきたいって思えるかどうかと考えた時に、「現場でバスケットに本当に関わる仕事をしたい」って思ったんですよね。アメリカは本当に自分みたいに選手として大成していなかったような人も、コーチになっているようなことが当たり前にあります。本当にやりたいことは何だろうと考えた時に「コーチなんじゃないか」というふうに思ったので、そこで方向転換して、その当時通っていたウエストバージニア大学というところで、バスケ部もすごく強いプログラムだったので、そこで学生マネージャーとして働かせていただくことになって、そこから本格的にコーチを目指していた形になります。

ーーーアメリカでの生活では、特にどんなことを学びましたか?

本当に学べたことは、自分から行動しないと自分の欲しいもの、自分のなりたい、自分の欲しいものが得られないし、自分のなりたいものになれないというのが一番学べたことかなと思います。向こうは言語のハンディ(キャップ)もありましたし、もちろん知り合いがいるわけでもなかったですし、そういうときに自分が学生マネージャーになるということもすごく簡単なことではなくて、何度も事務所に通いました。学生マネージャーになりたいですと話をしても、最初は門前払いが続いたんですよ。メールを送ってもメールが返ってこない。でもメールを送ってくださいとも言われる。じゃあ、どうしようとなった時に、すごく無謀な話なんですけど当時は「選手をやりたい」っていう気持ちもちょっとはまだ残っていたんですね。じゃあ選手になるためには、僕と同じ同期の選手はそれこそNBAの1順目でドラフトされるような選手もいた中で、トライアウトを学生ながら受けて、もちろんそれは全然だめで、箸にも棒にも掛からず、落ちてしまったんですけど、その時にやっぱりアジア人で受けた人、日本人で受けた人は僕しかいなかったんですよ。そこから何回も事務所に通ってマネージャーになりたいという話を言っていた中で、たまたまその当時のヘッドコーチのジョン・ビーラインが事務所に戻ってきたとき「この間のトライアウトを受けた日本人じゃないか」みたいな話を言ってもらって。「ああ、そうなんです。そこでぜひマネージャーにしてほしいです」という話をしたら「じゃあそんなに意欲があるんだったら、自分が今度コーチングセミナーみたいなのをやるから、そこにまず勉強に来ることから始めないか」と言っていただいたんです。何かクリニックみたいにその学校ではビーラインコーチが教える機会があったみたいで、その機会があるときに行ってそこでもう1度「マネージャーになりたいです」という話をしたら「じゃあもう1回連絡をちゃんとしてみなさい」というふうに言っていただいて。そこからはもう話が通っている状況になって、マネージャーにならせて頂くっていうようなことがあった。そこも本当に何回も通って、自分から行動しなかったらそういう機会っていうものを得ることができなかったので、本当にそういうところから行動しないと何も起きない。ただいるだけでは欲しいものを得ることができないんだなというふうに、本当に“実地経験”を目の当たりにして経験することができたんで、そこは本当に自分の中でアメリカでいろんなことを学んだんですけど、一番大きく学びました。そしてそれは今でも本当に自分を助けてくれてる“学び”だったので、今考えたときにすぐとパッと出てきますね。

ーーーなぜそこまでバスケットボールに情熱を持てたんでしょうか?

バスケットは、単純に見ていてもプレーしていても、おもしろい。展開がすごく速いですし、いつ逆転されるかわからない、逆転できるかもわからないような、すごくいい意味での興奮だったりとか、スリルを感じられるゲームで、そこに魅了されていたというのがまずあったと思います。あとは自分が選手として本当に思い描いていたようなキャリアを送ることができなかった中で、多分、不完全燃焼をずっと感じていて、やりきったというふうに思わなかったからこそ「もっとこれを続けていきたい」、「もっと知りたい」、「何とかして自分はこのバスケットの業界に入ることができないか」というのが、自分のモチベーションになっていた。そういう意味でもすごくコンプレックスを感じていることが逆に自分の大きなモチベーションになって、何とかして、何とかしてこの世界に入りたいとなったのかなというふうに感じています。

強豪で学んだ教訓 “文化”の重要性

2017年 北海道ヘッドコーチ時代

ーーー帰国後すぐに栃木のアシスタントコーチとなり、続く北海道ではヘッドコーチも経験されました。しかしその後はヘッドコーチではなく東京のトップアシスタントコーチになることを選ばれました。その選択にはどのような意図があったんでしょうか?

レバンガ北海道で、自分の当時の力量でできることというのを模索しながら全力でやり、最後のシーズンでプレーオフに行けるような順位に最初はいながらも、最終的にそれをかなえられなかった。そしてアシスタントコーチも含めて5年間、レバンガ北海道でやっていて、あのとき自分でやれることというのはもう本当に精いっぱいやって、じゃあこの先、当時のレバンガ北海道をさらに高いレベルに持っていくために、自分は何ができるんだろうと考えた時に、そこでヘッドコーチとしてやり続けていても、その時にレバンガ北海道が掲げていた目標や自分がやるべきことというものに対して、自分が応えられないと思った。その時に何が必要かと思った時に、やはり、より学べる環境で、自分が一度ヘッドコーチという立場からアシスタントとして支える立場に戻ることによって(そのチームの)ヘッドコーチや、そのチームから学べることものを学ぶべきだなというふうに思った。それを次の糧にするということが自分の成長にとっても必要だと感じました。当時はレバンガ北海道でヘッドコーチをやっている時からライセンスの制度ができて、自分がヘッドコーチをやるためにはS級のライセンスが必要だったんです。そのS級ライセンスの1年目の指導員として、ルカヘッドコーチ(昨シーズンまでアルバルク東京のヘッドコーチ)が指導するコーチとして来てくれた。本当にあの方はすごくオープンな方で、自分がずっとコーチとして培ってきたものを出し惜しみすることなく、講習の授業で自分たちにすべて隠さず教えてくれることをしてくれて、そのスタンスが僕はすごく衝撃的だった。なのでこの人からちょっと勉強してみたいというのが当時からあったんです。それでずっと自分がヘッドコーチをやっている中で、ルカヘッドコーチもアルバルク東京のヘッドコーチになって、そこでずっと連絡を取り合っていたんです。いろいろその中でも教えてもらい、自分が疑問になっていることは聞いてみたり、ルカコーチからは「こういう状況ってどう感じる?」みたいな話もしてもらったり、とすごくいい関係をつくらせてもらって。それでたまたま自分が壁にぶち当たっている時に、アルバルク東京、そして、ルカから「トップアシスタント(コーチ)をやってみないか」という話をいただきました。成長するために何を本当にするべきなのかをすごく迷ったんですよね。ヘッドコーチとしてレバンガに残ることも、もちろん成長につながりますし、やっぱりあのチームを強くするということは自分もすごくしたいと当時もずっと思っていましたが、ただあのときの自分はそれをやることができないという風に思ったんです。自分がよりよいコーチになるためには、学びの期間が必要っていうふうに思って、そうなれば学びたい人のもとで学びたいというところがあったので、(アルバルク)東京さんの話を受けさせていただいて、自分はその環境でできることを精いっぱいやっていくということが一番よかったのかなという風に最終的に結論を出して移籍したというのが経緯です。

画像提供:©ALVARK TOKYO

ーーーそこで学んだこと群馬ではどう生かしていきたいと考えていますか?

ルカコーチから学んだことは、強いチーム、勝つチームというものに対して必要なものが何かといったらやっぱり「文化」をつくること、それをすごく学びました。その文化は何かというのは、東京であれば東京の文化があると思いますし、群馬クレインサンダーズでは群馬クレインサンダーズの文化というものがあります。ですので、必ずしも文化といってもその下の組織の成り立ちや、今までの歴史を考えた時に、必ずしもすべてが文化ということばで全く同じものをやるというわけではないんですけど、ただ、ルカコーチから学んだ“文化作り”というのは、やっぱり「やるべきことをしっかりやること」。遂行すること、やり切ることの強さ。文化をつくるというのは大切なベース、自分たちのスタンダードが何かということをちゃんと明確にして、それを持つことによって常にぶれずに何か難しい状況になった時に立ち返る場所がどこにあるのかということを、明確にチームづくりされる方だったので、そういうところはすごく学びになりました。ですので群馬で今僕がやりたいと思っている文化をつくるということは、まずはしっかり準備をする。それは練習に対しても試合に対しても、日々、自分たちが成長するためにどういうふうに自分たちが準備をすることができるかということを常に考えて、それに対して最善の策を見つけることをできるようにしていきたい。あとは争いをする文化。それはチームとして、個人個人、お互いが切磋琢磨(せっさたくま)して、チームが向上していくこともそうですし、対戦相手に対して自分たちが勝ちきる、勝つというしっかりとした意思を見せて戦うことができる集団になっていく。そういうことをちゃんとできる文化を作っていきたい。それをやるためにはやっぱりお互いが自主性を持って、ちゃんと当事者意識を持ってやらなきゃいけないというふうに思っているので、それをじゃあできるようにすることをどうすればいいかと考えた時に、多分やらされてるだけでは、絶対にそれができないというふうに思っています。「これをやりましょう」というふうに言って「やります」という一方通行なのはすごくよくないと思うんで、こういう指針、こうやりたい、それに対してみんながどう思うのか、もしくはこういうことをやっていきたいために自分が考えていることをちゃんと伝えた上で、そう感じた彼らの意見がどういうものなのかを“ツーウェイコミュニケーション”という言い方もするんですけど、その一方通行じゃない会話、対話をしていきたいというのを選手1人1人、スタッフ1人1人、チームの組織全体にも話して今やっています。そういう形の中で群馬として自分が今やりたいのは、そういうコミュニケーションをきちんととっていける間柄であること。それは言われたからやりますとか、そういう関係じゃなくて、こう思っています。じゃあ、どういうことができるのか、みたいな感じで解決策を見つけているような自分でいたいと思ってますし、チームでありたいと思っているんで、対話というのはすごく重要だなと思っています。

練習後にも積極的に1対1で対話する

ーーー確かに練習後などでも、1対1での会話をよくしている印象があります

ことばが必要なときもあれば、僕はことばよりもそのことばを受けた上で出した行動や姿勢が、一番重要なものだと思っている。ことばで会話をすることはもちろん大切にしているんですけど、そういう過程を経た上で、では僕自身がどのように練習に対して準備をするのか。コーチ陣とすり合わせをした上で、準備をするのも、対戦相手の分析をすることも、分析した上でどのように練習に対して持って行くのか。それが最終的に試合に出るのか、まず選手やスタッフに見せていくこと、プラスして、選手たちが話したうえで彼らがコート上に持ってきてくれるエネルギーや、態度、姿勢というのがことばよりも、その方があらわになると思っているんで、そういうところを見たいと思っています。ですので会話をする事で終わりにしたくないということもあるので、話したうえで自分たちがそれに対してどうアプローチしているかというところまで、しっかり見えるようにしていきたい。今、その過程を踏んでいるところです。

個々の力を最大限生かしたい

ーーー昨シーズンまでは外からの目線で群馬を見ていたと思いますが、どんな印象を持っていましたか?

個々の能力はすごく高いチームで、ツボにはまった時はどのチームも倒せるような潜在能力というか、力があるチームだなと見ていました。ただそれがコンスタントじゃない。継続したり、それを常に持ち味として出せたりというような状況はなかったのかなというのが外にいた時の群馬のイメージでした。

ーーーその高い個々の能力を常に生かすことができるようになるために、何が必要だと考えていますか?

まずは“文化”がないと多分何をやっても出せないなというふうに思っているので、よく最近練習で話しているのは、もちろん戦略・戦術を言っても、そこに自分たちがコミットできなかったら何を入れても意味がない、効果が薄くなってしまう。なので、まず文化ということが重要だと思っています。ただやっぱり個々の能力が高いということは、それを最大限生かすことがまずは自分たちの道。プラスして、それをチームとして出すこと、組織として出すこと。個人だけの強みだけじゃなくてチームとしての強みというのもあったので、そこをどうやって出すのかとなった時に、それをきちんと自分たちが狙って出せるようになるということが重要だったと思う。その整理整頓、精査するということはすごく必要だったかなと思います。

ーーー去年は攻守の切り替えの速さを武器に高い攻撃力があった一方で、失点が少し多いという結果でした。その点について、ことしはどう考えていますか?

攻撃回数が増えるということは、必然とディフェンスの回数も増えることになるので、失点で考えると、攻めるペースが速ければ失点するペースも速くなる、失点が多くなるということはある。オフェンス重視でディフェンスを向上しなきゃいけないということも、もちろんあると思います。その中でのよさというのは、まさに今言っていただいたとおり、攻守の切り替えの、攻撃に変わったときにしっかり走れるチーム。速い展開からフィニッシュして得点を決めてくるということが得意だったんで、ではそれをコンスタントに出せるようになるかと考えた時に、出ている5人全員、ないし、チーム全員が同じ絵を描いてそのシチュエーションを出せるようにするということが必要だと思います。そこをよりシステム化というかきちんと体系化して、どういう風に出すかというところを、よりことしは詰めて、そこをきちんと明確にして、こういうことをやりましょう、とすることによって、より効率的に回数多くよさを出せるようにしたいと考えています。ただ、ディフェンスは、攻撃を何回もすればディフェンスの回数も増えるので、ディフェンスは間違いなくより組織的な形でしなきゃいけないと思っていて、今そこにもトライしています。もう1つ言えるのは、オフェンスとディフェンス、攻撃と守備は表裏一体というか、必ずオフェンスをやったら、そのあとディフェンスが来るという形になるので、ではディフェンスをよくするためにはどういう守り方をすればいいんだろうという話にもなるんですけど、そこで何ができるかというと、オフェンスの終わり方をよくすれば、そのままいい流れでディフェンスすることができる形になりますね。僕たちは去年、オフェンスでターンオーバー(シュートまで行かずにミスなどで相手にボールを奪われること)が多かったです。ですのでオフェンスの終わり方をきちんと自分たちの意図的にできるようにする。ミスで終わらないことが、より相手に失点される回数を減らせるというところにつながってくるので、オフェンスの終わり方ということも考えながらやってますね。

新たな戦力 3人の新メンバー

八村選手に指導する水野ヘッドコーチ

ーーーことしは新メンバーが3人が入りました。八村選手はまだ大学生だった昨シーズンも特別指定選手としてチームに合流していましたが、ことしは正式契約となりました。どんなことを期待していますか?

ことし、彼の大きなチャレンジとしては、ポジションを変えてプレーをするということを今、念頭にやっているので、その調整をどれだけきちんとできるかというところにあると思います。今までは大型の選手としてセンターとパワーフォワードと言われるような比較的、このリーグでは外国籍の選手が担うポジションを大学まではやっていました。ただ彼が本当にこれから先の持ち味を生かしていって、よりよいプレーヤーになっていくということ、そしてリーグの特性を考えたときに、そのポジションではサイズ(体格)が足りないと感じました。ですので、自分たちとしてはポジションをコンバート、変えてやるというようにしてます。その中でいいところは、そのポジションの中ではサイズがあること。プラスしてシュート力も持ってるいるので、そのシュート力をきちんとどれだけ生かせるようになっていくのか、またドライブなど、果敢にリングの近くまで侵入していくということも得意な選手であるので、その良さをどれだけ生かせるようになるかということは、彼がコンバートを成功させるために必要になることだと思っています。逆にディフェンスの場合は、より自分よりもスピードがあり、サイズが小さい人を守らなければいけなくなるので、より俊敏性というのはディフェンスでは必要になってきます。そこにどれだけ彼が対応できるかということも1つ大きなカギになると思っています。そこは彼と常日ごろも話しているので、本人も課題として考えてプレーしてくれていると思います。選手としての可能性というのは、本人に伝えていただいてもいいですが、あると思っています。その可能性というものをどれほど自分のものにするのかということは、これからの彼の取り組みとやり方次第だと思っているので、その可能性をぼくらが最大限引き延ばせるようにやっていきたいと思いますし、そのチャンスを彼がどれだけことしつかむのかは、皆さんに楽しみにしてみていただいていいんじゃないかなと思っています。

ーーー日本屈指のポイントガードである並里成選手も加入しました

並里選手に関しては、創造性をすごく持った選手です。違いを生み出せる選手だと思っているので、その彼のプレー、打開する力やズレを生み出すということは、間違いなくチームの1つ大きな武器になっていくと思っています。よいこととしては、彼が入ることによって去年まで常に起点としてプレーをしなきゃいけなかったうちの(チームの)1人であるトレイ・ジョーンズ選手の負担が軽減されるというところですね。(昨シーズン)対戦相手として僕が思っていたのは、ジョーンズ選手のところをどう守るのか。彼に集中して考えなきゃいけなかったことを、並里選手がいることによってそこへの注意をずっとし続けたら逆にやられてしまうというような環境を作ることができると思います。そういう意味で周りを生かしながら、チームとしても抑えなきゃいけないところが増えるようにできる選手だと思います。

ーーー2メートル12センチの大型センター、ケーレブ・ターズースキー選手の活躍も期待されていますね

ケーレブに関しては、あれだけ大型の選手でしっかり走力もあって、運動能力もあるというのがなかなかいないです。その中で彼みたいな選手がいてくれると、自分たちのいいところをより伸ばしていけるし、それは攻守の中での切りかえの速さや、攻撃になった時にしっかり走ってくれることで、自分たちのトランジションオフェンス(攻守の切り替えの速いオフェンス)を生かせると思っています。そこに関して彼はすごく大きなものを持っていてくれると思っています。あとは、走力が高いところがすごく生かされていて、すごく守備範囲が広いですね。守備範囲の広さというところと、ジャンプした時の最高到達点に達するスピード。本当に短い時間で最高到達点に行けるようなジャンプの速さを持っているので、そういうところもショットブロックやディフェンスで自分たちの味方のことをカバーしてくれる。このように、いろいろなところに顔を出せる選手だと思うので、そこもすごく大きな助けになるんじゃないかなと思っています。

群馬のチームとして

ーーー今シーズンはどのようなシーズンにしていきたいと考えていますか?

文化をつくっていくというのは、Bリーグ1部の中で強いチームの仲間入りをするという所への足がかりだと思っています。文化をつくっていくことによって目指す方向性もそうですし、プラスして自分たちがどのチームと戦っても、しっかり戦えるようなチームになっていくということが必要だと思っています。その部分をまずことし1年で、どこまでいけるかということもやっていきたいと考えています。ただその中でクラブとして言っていることが「優勝に値するチームになる」ということで、それを考えた時に、文化ということもそうですし、なおかつ、自分たちがしっかりステップアップして自分たちのレベルを上げていかないと、そこの場所には行きつけないとに思っています。日々の練習、試合に向かう自分たちの姿勢、準備というものが本当にそういうように、優勝に値するチームになり得るのかというのは、常日ごろ僕たちが常にそこに立ち返って、自分たちのことを考えていくことができるような指標になっていると思っているので、そこを自分たちが目指してやっていきたいと思っています。

ーーー活動を通して、ホームタウンの群馬、太田にはどのような影響を与えていきたいですか?

地方創生という(目指すべき)形の中で、先ほど自分が就任した経緯として、オープンハウス、サンダーズ、太田市という「三位一体」というか「三者一体」でやっていくという話をしたんですけど、群馬クレインサンダーズという名前であるとおり、僕としては群馬を代表するチームになりたいと思っています。それを全国にどれだけ自分たちがアピールできるか、それが地方創生につながってくると思っています。ではそれをやるためにファンの皆さんも巻き込んでいかなきゃいけないと思うんですね。それは僕たちが活動して、ただの勝ち負けだけじゃどうにもならない。それによってチームが地方創生の役に立つのかといったら、そうではないと思っています。自分たちがチームとして、バスケットボールを通して活動している中で、まずは皆さんに誇りを持ってもらう。このチームと一緒に戦っているっていう風に思ってもらわない限りは、それをかなえることはできないと思っています。なので、まずは足がかりとして自分がいろいろなメディアの媒体で言わせていただいているのは、僕たちという存在が、まずはみなさんの「非日常」になること。その非日常になるということは、ここに来て一緒に自分たちと試合で戦う。勝つ、負ける。ともにそれを一緒に感じていくということで、日常の生活をその一瞬だけでも忘れて楽しめるような状況。戦って高揚感や、勝って、負けて、うれしい、悲しいっというような思いを持つ、ということを共有できる場にしたい。その非日常であることが、今度は当たり前になって日常になっていってくれれば(いい)。皆さんの中で、きょうは群馬よかったよね、きょうの群馬はダメだったねとか、そういう風に、常に話題の1つになる。もしくは生活の一部になるということができれば、日常が変わってくると思っているので、その非日常を日常にした上で、その中で僕たちがバスケットを通して皆さんと共にあることをやっていけることを、自分たちも見い出していくこともそうですし、群馬の皆さんからも見出してもらうことによって、自分たちは地方創生ということができるようになるんじゃないのかなと思う。その取り組みを1つ1つやっていきたいなと思っています。

ーーー最後にコーチとしての信念、大切にしていることがあれば教えてください

一番身近なところでいうと。関わってくれているスタッフ、選手のキャリアが今後群馬に来たことによって可能性を広げるようなことをしたいと思っています。バスケットが好きでバスケットを通して、それを自分たちがやっているので、関わってくれた人、すべての人がよりよいキャリアを積んでいけるような場所をつくっていけたらなと思っています。一番身近なところで。ただ、バスケットボールを通した社会貢献や、みなさんに元気を与えるとか、自分たちがいるから生活に潤いを感じてくれるとか。そういうふうな状況をつくっていきたいとも思っているので、そのためには自分たちがしっかりと今やっていることを楽しんでやることもそうですし、なおかつ、やっている意義を感じながらきちんとそれを自分たちの情熱や思いというものをきちんと見せることが必要になると思っているので、そういう活動を通して群馬県の皆さんに自分たちが存在してよかったと思ってもらえるような組織、チーム、クラブでありたいというふうに思っています。

  • 中藤貴常

    前橋放送局 記者

    中藤貴常

    警察・司法を担当後、現在は両毛広域支局で行政・スポーツなどを幅広く取材

ページトップに戻る