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群馬 85歳が"世界一のジャンプ" なぜ? 秘訣は飽くなき研究に

  • 2022年09月15日

群馬県内で行われたマスターズ陸上の男子走り幅跳び(85~89歳部門)で「世界記録が出た」という情報を受けて、記録を出した男性のもとを訪ねました。
取材を進めていくと、記録誕生に向けたさまざまな工夫が見えてきました。
                   (前橋放送局カメラマン 林拓美/2022年9月取材)

世界記録更新!

世界記録を出したのは前橋市に住む齋藤衛さん(85)です。
ことし7月、富岡市で行われた、マスターズ陸上の記録会で3メートル80センチを跳び、これまでの記録を3センチも上回りました。

陸上経験は学生時代に

齋藤さんは伊勢崎市生まれ。高校生の時は県の大会で優勝するなど活躍していましたが、大学卒業以降は陸上からは離れて、競技を再開したのはなんと79歳です。

競技は研究

実は齋藤さんは京都大学の教授を務めるなど、天文学の研究に長年没頭してきました。
63歳で引退しましたが、研究者気質は今も残っています。
競技の専門書を読みあさり、独自に分析しながら自分にあったトレーニングを考えています。
世界記録はこうした齋藤さんの「研究」によって生み出されました。

さらに研究成果として自分の経験を書籍化しようと執筆活動も行っています。

林カメラマン

「記録を出す秘けつはなんですか?」

齋藤さん

「私の分析によると走り幅跳びは、80歳を越えると、1年で10センチも記録が落ちます。少しでも記録を落ちないようにすることが世界記録につながるんです」

試行錯誤されたトレーニング

トレーニングで特に重点を置いているのが、ストレッチです。
齋藤さんは高齢になってけがをすると、筋力が落ちて記録がどんどん下がってしまうと考えています。けがのリスクを減らすため、練習は3日に1回にしています。

さらに効率的に練習を進めようと、3年前に自宅の裏の畑に手作りの練習場を作りました。
砂の総重量は1トン以上。ホームセンターで砂を購入して、一人で立派な砂場を作りました。

「都会じゃグラウンド行かなきゃこういうことできませんからね。
田舎だってコツコツやれば世界を狙える可能性はある」

いざ大会

世界記録を更新して2か月後、
地元の前橋市でマスターズ陸上の大会がありました。

群馬マスターズ陸上競技選手権大会(9/11)

齋藤さんも参加しましたが、硬い表情です。

「どうも今回はダメです。なんかぱっとしないですね。今までで一番不安かもしれないです」

いつになく弱気な発言です。もしかしたら世界記録更新の期待が集まり、ちょっとナーバスになっているのかもしれません。
徐々に順番が近づき緊張感が高まります

いよいよ齋藤さんの1回目。

踏み切りはバッチリでした。

気になる結果は?

いきなり3メートル83センチの記録! 
またまた世界記録を更新しました!

齋藤衛さん(85)
「自分のやりたいことをやれるのは幸せなことです。この先何があるか分かりませんが、90歳まではこういう大会でみんなと楽しみながら競技を続けていきたいです」

さらなる挑戦へ

齋藤さんは三段跳びと100メートルでも記録を狙っていきたいと意欲を示しています。

取材を通して齋藤さんは記録更新という「研究」を心底楽しんでいると感じました。
まさに「好きこそものの上手なれ」です。いつまでもお元気で陸上を楽しんでほしいと心から願っています。

 

  • 林拓美

    前橋放送局映像取材

    林拓美

    2008年入局 盛岡放送局、青森放送局、報道局映像センターを経て現所属へ

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