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群馬 伊勢崎 イスラム教の礼拝施設「モスク」にお邪魔してみた

  • 2022年09月08日

群馬県在住の外国人(=ネイバーズ)の素顔を紹介していくキャンペーン「ハロー!ネイバーズ」。外国人が多く暮らす群馬県で、共に生きる人たちの姿や取り組みを掘り下げていきます。

今回、紹介するのはイスラム教徒のネイバーズ。イスラム教徒の礼拝施設「モスク」にお邪魔しました。

(第1制作センター教育・次世代 ディレクター 大島悠也)

18億人の信者のイスラム教 どんな宗教?

イスラム教は、唯一絶対の神「アッラー」の言葉がまとめられたとされる聖典「コーラン」の教えを守る宗教で、全世界におよそ18億人の信者がいると言われています。信者の数は、日本国内におよそ23万人、群馬県内にもおよそ8500人いるとされています。

イスラム教徒には、1日5回のお祈りの義務、豚肉を食べてはいけない、女性はあまり肌を見せてはいけない、などさまざまな戒律があります。また、1年におよそ1か月間「ラマダン」と呼ばれる月には、日中の飲食を絶つなど独特の教えがあります。

髪や肌を隠すイスラム教徒の女性

イスラム教について、社会学が専門で、日本国内のイスラム社会に詳しい京都産業大学・岡井宏文准教授はこう語ります。

京都産業大学 岡井宏文准教授
「まだまだ外国のものという印象が強いイスラム教ですが、日本にもこうしたイスラムの教えに基づいた生活を送る人たちが少しずつ増えています」

イスラム教の礼拝施設 モスクとは?

イスラム教を語る上で欠かせないのが、礼拝施設である「モスク」です。群馬県内にも、10近くのモスクがあるとされています。

例えば、こちらは、JR伊勢崎駅から徒歩5分の場所にある「伊勢崎モスク」です。

伊勢崎モスク

モスクの中の礼拝のためのスペースは、こんな風になっています。

伊勢崎モスクの中

今回、取材させていただいたのは、伊勢崎市の境町駅から徒歩3分の場所にある「境町モスク」です。

境町モスク

モスクでは、礼拝「サラート」が行われます。イスラム教徒には、朝、昼、夕方、夜の2回と、1日5回のサラートが義務づけられています。

サラートをするイスラム教徒たち

この日は、金曜日。金曜昼のサラートは、イスラム教徒にとって特別なものであり、男性は家ではなく、モスクで行うことが推奨されています。そのため、モスクにたくさんの人たちが集まるのです。

サラートをするときは、まず体を清めます。足、口、手などを洗う行為で、「ウドゥー」と呼ばれています。

ウドゥーをするイスラム教徒

モスクを取りしきっているのは、「イマーム」と呼ばれるイスラム教の指導者です。こちらの境町モスクには3人のイマームがいます。

サラートを仕切るイマーム

サラートに訪れた人たちに、話を聞いてみました。

「毎日のお祈りをするとストレスがたまらない。気分的にすごくラクになります」

「友達と一緒にお祈りができる。幸せな気持ちになれる」

コミュニケーションの場でもあるモスク

モスクは、サラートだけでなく、イスラム教徒たちのコミュニケーションの場になっています。このモスクでは、寄付によって集めたお金で食材を購入し、ボランティアによって料理がふるまわれています。

モスクで食事をする人たち

国籍や民族に関係なく集まった人たち。暮らしに役立つ情報のやりとりや、お互いの仕事の話などをしています。食事に参加しているイスラム教徒たちに話を聞いてみました。

「スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、インドネシアなどさまざまな国の人がいて、日本人もいるんです」

「みんなウエルカム、誰でもウエルカム。イスラム教徒じゃなくてもウエルカムです」

「肌の色、国、言葉は関係ない。人間として一緒にいるんです」

”次世代にイスラムの正しい教えを伝えたい” イマームの思い

モスクでは、日本で育ったイスラム教徒の子どもたちのための教室も開いています。ここでは、イスラムの教えや、習慣などを学べる授業が、週5日、開かれています。

イスラムの教えを学ぶ教室

子どもたちに教えているのは、境町モスクでイマームを務めるムハンマド・ジャービルさん(37)。

ムハンマド・ジャービルさん

バングラデシュの大学院でイスラム教について学んだ後、11年前、イマームの仕事をするために来日しました。

教室で使っている教科書は、ジャービルさんが中心になって作りました。簡単な日本語を使って、アラビア語の基礎や、イスラム教の歴史、信仰、マナーなどについて書かれています。

アラビア語の基礎について書かれた教科書

普段は日本の学校で学ぶ子どもたちに、イスラム教徒として受け継いでいってほしいことを、まとめています。この教科書は、全国から問い合わせがあり、今では、日本各地のモスクで使われるようになっているそうです。

ムハンマド・ジャービルさん
「人を助けるとか、近所の人を大事にするとか、それがイスラムの教え。もちろん最初は人間ですので、良い人間になる、良い社会人になる、それが一番最初ですね。そのあと自分ができる限り、イスラムのことも守っていってほしいです」

温かくフレンドリーなイスラム教徒たち

モスクは、多くの日本人にとってあまり接点のない場所かもしれません。しかし、突然お邪魔した私にも、みなさんが笑顔で食事をふるまってくれるなど、フレンドリーで居心地のよい場所でした。

また、イマームのジャービルさんを中心に、子どもたちに正しいイスラムの教えを伝えようと奮闘している姿も印象的でした。イスラム教徒の「助け合い」「支え合い」の精神は、どこか「昭和的」で、今の日本人が失いつつあるものを守っているようにさえ感じます。

「モスクはイスラム教徒ではなくても、いつでも、誰でもウエルカム」とのことです。
みなさんも、一度足を運んでみてはいかがですか。

  • 大島悠也

    第1制作センター教育・次世代 ディレクター

    大島悠也

    前橋局に常駐しながら、外国人のライフスタイル・文化などの取材を行う。趣味は、海外ひとり旅、エスニック料理食べ歩き、など。

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