ページの本文へ

ぐんまWEBリポート

  1. NHK前橋
  2. ぐんまWEBリポート
  3. 群馬 高校生の自転車事故“全国最多” ヘルメットで“命”守れ

群馬 高校生の自転車事故“全国最多” ヘルメットで“命”守れ

  • 2022年08月05日

1万人あたり88.11人。

群馬県内で自転車通学中に事故に遭う高校生の割合です。群馬県は7年連続”全国ワースト”という不名誉な記録が続いています。
ですので、いざという時に命を守るヘルメット着用の重要性が高まっていますが、課題はその着用率。まだ3分の1程度にとどまっているんです。

その当事者の高校生たちが今、声をあげ行動を起こし始めています。

(前橋放送局記者 長谷川将万/2022年7月取材)

ヘルメット着けていれば…高校生の“後悔”

安中総合学園高校1年生の高橋愛叶さんです。今は毎日、ヘルメットをかぶり45分かけて自転車で通学しています。

高橋愛叶さん
「(ヘルメットは)着けているとちょっと邪魔だと思う時もあるけど、やっぱり安心だなと思います」

高橋さんは2か月前、この坂で転びケガをするまで、ヘルメットをしていませんでした。

その日は夜8時ころ、部活を終えて自宅に帰る途中、雨上がりで路面が滑りやすい状態でした。

高橋愛叶さん

「(坂で)前のブレーキをかけました。スピードが出ていて後輪が上がり、前に1回転した感じです」

頭を打ち、肩は傷だらけになり、ほおを骨折しました。一歩間違えれば命に関わる事故だったとして、今はヘルメットの重要性を強く感じています。

高橋愛叶さん
「学校でも(ヘルメット着用を)呼びかけていたので、自分から着けておくべきだったなと思いました。事故をしてからでは遅いので、(ほかの人にも)今からしっかりヘルメットをかぶって登下校してほしいなと思います」

自転車 “長距離通学”のリスク

後を絶たない高校生の自転車事故。

群馬県は自転車での「長距離通学」の生徒が多く、日々リスクにさらされています。

一方で課題となっているのがヘルメットの着用率。県ぐるみでの対策で数字は向上していますが、まだ、3分の1程度にとどまっています。

ヘルメットしていて助かった…高校生の“安堵”

こちらは伊勢崎清明高校の1年生、長島百伽さんです。「このヘルメットをかぶっていて命が助かりました」と当時のことを話し始めました。

長島さんも入学直後から自転車での「長距離通学」を始めました。1か月ほど前、およそ30分かかる帰宅途中に大きな事故に遭いました。交差点を渡ろうとしたところ、右から来た車にはねられ、頭をフロントガラスと地面に強くたたきつけられました。腰と足首、さらに骨盤を痛めて、まだ、自転車に乗ることは出来ませんがヘルメットをしていたことで九死に一生を得ました。

長島百伽さん
「車のフロントガラスが割れるくらいで、すごい衝撃が加わったと思うので(医師からは)ヘルメットしていなかったら、多分死んでいたと言われました」

ヘルメットかぶって…高校生の“訴え”

大泉高校

どうすれば、ヘルメットをかぶる高校生を増やせるのか。

高校生自身が動き始めています。大泉高校の演劇部は、自転車の交通安全を促そうと県などがおととしから始めた動画のコンテストで去年、グランプリに輝きました。

群馬県公式YouTubeチャンネルより

動画では、さまざまなヘルメットがあることや頭を守ることの大切さをユーモアを交えて紹介しています。

群馬県公式YouTubeチャンネルより

「みなさん、自転車による事故の致命傷は6割以上が頭部損傷によるもので、ヘルメット着用が死亡、重傷事故を防ぐことは明らかなんです」

群馬県公式YouTubeチャンネルより

「今月初めて事故にあったんです。交差点で出会い頭で車にぶつかっちゃって5メートルくらい飛ばされました。けど、ヘルメットをかぶっていたおかげで軽傷ですみました。ヘルメットをかぶっていなかったと思うとぞっとしますね」

訴え続ける ひとりひとりの命を守るため

高校生の自転車事故を1件でも減らすために、さらにできることはないか、話し合いを始めています。

演劇部部長

「ちなみになんですけど、事故にあったことがある人?」

こんなにいた!

「ほんとにやばい。リアクションできない!」

「どうせなら、やっぱおもしろいものを届けたいじゃない?」

そんな声をきっかけに、より“見てもらう”ために、演劇部ならではの“ストーリー”を作るためのアイデアが次々と生まれました。

「(自転車と)ぶつかるのが車ではなく馬車とかにしておいて、ヘルメットを探しにきた王子様みたいな…」

「イヤホンしながら、とか、パン食べながらとか、“ながらスマホ”とか…全部しながら自転車に乗っていて、ヘルメットも着けていなくて…」

まだまだ、考えが止まりません・・・!

「同じ状況の相手と出会い頭に“がしゃん”と衝突。一命をとりとめたけれど、今度は病室で『あー、なんであんなことになっちゃったんだろう』と後悔」

「そこに王子様がヘルメットを渡してくれる!」

「インスタ(グラム)は?」

今後は共有したいと思える動画を作り、SNSでの発信も考えていくことになりました。

大泉高校 演劇部部長 提箸香奈さん
「部員の3分の1ぐらいが事故に遭っていて、ちょっとびっくりしたんですけど、それぐらい事故が身近ということを感じました。私たちが命の大切さや、ヘルメットを着用することによって、救われる命があるんだよということを、少しでも伝えていけたらいいなって思っています」

入局3か月の私 思い新たに取材を続けます

ことし4月に記者になった私は今回が初めての特集取材でした。
自転車という身近で便利な乗り物が、時に命に関わる大事故の要因になり得ることに胸を痛め取材を進めました。その中でも、事故の当事者である高校生たちが率直に胸の内を語ってくれたことには感謝の思いしかありません。また、同じ高校生たちが悲惨な事故が少しでも減るように、と奮闘していることも知り、心強く感じました。

右が長谷川記者

念願かなって群馬の地で社会人としての第一歩を踏み出した私自身、悲惨な事故で涙を流す人が1人でも少なくなるように、できるかぎり取材を尽くし発信していきたいと、思いを新たにしました。

  • 長谷川将万

    前橋放送局記者

    長谷川将万

    2022年入局。記者1年目で県警・司法担当。大学から住む群馬での勤務を希望し実現。小5~高3までバスケットボール。大学では陸上に転向しフルマラソン2回で自己ベストは2時間57分台

ページトップに戻る