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群馬 "創作こけし"コロナ禍で苦戦 新たな発想で復活を

  • 2022年05月23日

群馬県で盛んに作られている「創作こけし」は、戦後から観光地のお土産品として親しまれていましたが、新型コロナウィルスの影響で観光客が減り大打撃を受けました。斬新な作品を作ることで、厳しい状況を打開しようと模索する作家を取材しました。 

(前橋放送局カメラマン 林拓美/2022年5月取材)

絶頂からどん底へ

 「創作こけし」は東北などで生産が盛んな「伝統こけし」とは違い、自由な形とデザインが特徴で、
群馬県の伝統工芸品に指定されています。戦後から群馬県内で盛んに作られていて、全国各地のお土産店で販売されています。特に海外からの観光客に人気を集めていました。

 年間12万個を生産する県内最大の工房も、生産が追いつかないほど忙しい日々を過ごしていました。しかし、新型コロナウイルスが発生して、海外からの観光客は激減し、売り上げはひどいときには2割まで落ち込みました。

アマビエのこけし

状況を打開しようと、キャラクターこけしなど、国内の若い世代に向けた商品の開発に力を入れています。経営者の岡本有司さんは若い作家の新しい発想が復活の鍵になると考えていますが、そこには課題もあります。

工房経営者 岡本有司さん
「伝統は守りつつも、やはり若い視点というのは大事だと思っています。しかし、まだ売り上げが回復しておらず、若手を育てる経済的余裕がありません」

注目の若手

数少ない若手作家で、力を伸ばしている大野雄哉さん(35)です。
工房所属の作家ではなく、渋川市が創作こけしの後継者育成のために作った、「地域起こし協力隊」として採用されました。現在は県内各地の工房で武者修行を重ねています。

林カメラマン

「なぜ応募したのですか?」

大野雄哉さん

「群馬のこけしは何でもありで自由度が高いのが魅力です。今までにないものを作り出せるし、なにか面白いこともできるんじゃないかなと思って応募しました」

異才を放つ大野ワールド

Tiny Dancer    作:大野雄哉

大野さんが作った妖精が踊る姿をイメージした創作こけしは、ことし2月に行われた県の創作こけしのコンクールで入賞を果たします。こけし作りの経験はなかったものの「もの作り」への関心が高かったという大野さん。誰も見たことがない斬新な作品を作ることが自分自身の生き残る道だと意識するようになり、一気に才能が開花しました。

独り立ちのための模索

修行期間である地域起こし協力隊の任期はことし9月までです。今は販売するためのこけし作りで、試行錯誤を重ねています。
 

この日挑戦したこけしは人の頭にウンピョウが乗った姿のこけし。
コロナ禍で生きていくために、個性をいかに作品に込めるかが大事だと考えています。

完成!

「昨日からです、頭にウンピョウ。」   作:大野雄哉

大野雄哉さん
「今後も個性を大事に制作していきたいです。お客さんがこけしを見たときに、自分の作品だって分かってもらえるような作家になりたいです」

コロナ前よりも親しまれる創作こけしに

大野さんは独り立ちした後、県内に工房を構えて制作を続けていくということです。
厳しい状況の中でもくじけず挑戦する大野さんや岡本さんを見て、群馬の「創作こけし」が伝統と新しい発想の融合で、幅広い世代の共感を呼んでほしい、コロナ禍の前よりも魅力あるものになってほしいと願っています。

 

  • 林拓美

    前橋放送局映像取材

    林拓美

    2008年入局 盛岡放送局、青森放送局、報道局映像センターを経て現所属へ

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