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ダーウィンポスト vol.9 しめ縄の稲穂を食べに来るスズメ どうやって米を見つけている?(奈良県)

2022年12月30日(金)

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総合テレビ 毎週日曜夜7時30分~8時に放送中の「ダーウィンが来た!」では、生きものに関する疑問や質問を募集しています。その質問と専門家からの回答は、こちら「ダーウィンポスト」で皆さんに随時公開します。ぜひ投稿ください!

(画像はこちらのフォームより、動画はこちらのフォームより投稿ください)


 

今回の質問

毎年スズメがしめ縄の稲穂を食べに来ます。
しめ縄設置後、数時間で食べつくされているイメージがありましたが、
12月31日にしめ縄を設置して1月1日の午前10時頃にスズメが食べに来ました。
米を食べ尽くした後はもう来ません。スズメはどうやって米を見つけているのでしょうか?
嗅覚、視覚、その精度は?ぜひ教えていただきたいです。
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投稿者

H.M.さん(奈良県) 

答えてくれた先生

スズメの生態に詳しい 北海道教育大学 三上修 教授  

先生からの答え

スズメが、そんな「季節もの」を食べるというのは面白いですね。
先に嗅覚についてお答えします。
と言っておいてなんですが、「嗅覚を使っているかどうかは分かりません」。
これが10年くらい前であれば「鳥の嗅覚は発達していないので、視覚によって探しています」と
言い切ったところです。
しかし、ここ10年ほど様々な研究がなされて、鳥の嗅覚も、それまで思っていたよりも発達していることが分かってきました。
おそらく恐竜の時代から発達した嗅覚を持っていただろうと考えられています。
なので「スズメが稲穂を匂いで見つけた可能性」を安易に否定はできません。
でも、今回の場合は、目立つところにあるものを見つけているわけですから、
視覚なのではないかと思います。なお、もし「匂いの可能性がある」とお思いであれば、次回、しめ縄を飾る際に、見えにくいところにも稲穂を置いてみて、スズメがやってくるのを確かめてみても面白いかもしれません。
とりあえず視覚だとして、スズメがどうやって稲穂を見つけたかです。
冬は、スズメたちにとって食べ物が不足している季節です。
なぜなら、多くの植物は枯れていますし、昆虫もほとんどいないからです。
なので、スズメたちは、絶えず食べ物を探しながら、町の中を動き回っています。その過程で、たまたま稲穂を見つけて、失敬したのではないかと考えられます。
その際、「よく食べる稲穂の色を覚えていたので見つけやすかった」という可能性は当然あります。
さらに、別の可能性を考えると、おそらくその地域では、稲穂がついているしめ縄がよく飾られているのだと思います。なので「しめ縄を見つけたら稲穂がついている」と学習し、各家のしめ縄を回っていた可能性もあります。
さらに、そこまでいくと考えすぎかもしれませんが、「人間が出てきて玄関先で脚立に載って何か作業をした後には、玄関先に稲穂がある」ということを、学習することができるかもしれません。
どの可能性が本当かは、実験してみないとわかりません。
このような、しめ縄についている稲穂を見つけられる
スズメの視覚の良さについても話をしておきます。
鳥は一般に、人間よりも良い目を持っています。いろいろな「目の良さ」があって、厳密に話すとややこしいので、ここでは、遠くのものを見つける「目の良さ」について簡単に話をします。
たとえば、ボールペンを手に取って、白い紙の上に、5㎜の間をあけて点を2つ打つとします。
それを壁に貼って、後ずさっていくと、いつしか2点とは、はっきりわからず、
「なんか点があるな」程度になり、さらに離れると、点そのものが見えなくなってきます。
これが遠くの文字が読めなくなる理屈です。つまり、対象物からの距離が離れると、我々の目は、細かいものの判別がつかなくなるのです。
もちろんこれには個人差がありますが、スズメは、人類の中で最高に視力が高い人よりも、
さらに離れても、2点を判別できるはずです。
しめ縄の稲穂について考えると、我々であれば、しめ縄そのものは、見慣れていれば、かなり遠くからでもわかると思います。しかし、そこに稲穂がついているかどうかは、どれくらいかは、やってみないとわかりませんが、10mくらいの距離まで近づかないと分からないのではないかと思います。
それに対して、スズメが何mから分かるかと正確には答えられませんが、
おそらく数十メートル離れていても見えているだろうと思います。
そんな良い目で、スズメは、いつも食べ物を探しているわけです。
スズメを観察していると、「こんなところにある食べ物をよくも見つけるな」ということがしばしばあります。散歩ついでにスズメがどこで食べ物を見つけているか観察してみるのも楽しいかと思います。