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中野淳アナのまなびノート ~8月~

2022年8月12日(金)

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「ハートネットTV」を担当する中野淳アナウンサーが
番組を通じての「まなび」を発信します

「ハートネットTV」番組HPはこちら 
放送:Eテレ 月〜水曜 午後8時〜午後8時30分 
再放送:Eテレ 毎週水〜金曜 午後3時30分〜午後4時00分


カンカンカン・・・。

私たちの身近にある踏切。
最近、踏切を通りかかるたびに、
線路の手前に「点字ブロック」はあるか。
見えない人、見えにくい人が歩くスペースは十分あるか、気になります。

きっかけは、司会を担当している「視覚障害ナビ・ラジオ」。
視覚障害のある人の暮らしに役立つ情報やニュースをお届けするラジオ番組です。

今年7月に放送したテーマが、「視覚障害者の踏切事故」。
(番組サイトで過去2年間の放送をまるごと聴くことができます)

踏切内に取り残されてしまう当事者

ことし4月、奈良県大和郡山市の踏切で、視覚障害のある女性が列車と接触して亡くなる痛ましい事故が起きました。
女性は踏切内に閉じ込められたとみられていますが、同様の事故は、去年8月に静岡県でも起きています。

22081001.jpg事故のあった奈良県大和郡山市の踏切。
事故のあと、踏切の手前の点字ブロックは張り替えられ、

踏切内にも新たにブロックが設置された。

なぜ踏切内に閉じ込められてしまったのか。
奈良県の事故が起きた踏切の手前には、点字ブロックが設置されていましたが、事故当時は一部が剥がれていたといいます。
防犯カメラの映像では、白杖を手にした女性が踏切内に入って、渡りきる直前に警報音が鳴り、遮断機が下りました。
女性は遮断機の手前で立ち止まり、しばらくすると踏切の中央付近に引き返し、侵入してきた特急列車に接触。
踏切の中に閉じ込められていたのに、踏切の外にいると思い込んでしまったとみられています。

220810021.jpg視覚障害者の歩行訓練などに取り組む
原田敦史さん(堺市立健康福祉プラザ 視覚・聴覚障害者センター長)と筆者(右)

安全に歩くための道しるべがない

ゲストにお迎えした歩行訓練士の原田敦史さんによると、道路との境目に気づかず、知らぬ間に踏切の中に入ってしまう当事者が結構いるようです。
「事故を受けてわりと多くの当事者から、踏切に取り残されそうになったとか、怖いので踏切を使わないようにしているという声を聞きました。私自身、歩行訓練士ですが、これまであまり問題視してきませんでした」と原田さん。

私も、駅ホームでの転落については取材をしてきましたが、踏切の危険性は考えたことがありませんでした。

どうしたら事故を防げるのか。
原田さんは「視覚障害のある人が踏切に入ったことに気づくためにも、踏切の手前に注意を促す点字ブロックをつけること。
さらに踏切内にも、踏切の手前とは異なるブロックを設置して、歩く方向を認識できるようにすることが重要」だと指摘します。
国も今回の事故を受けて、点字ブロックの設置などに関するガイドラインを改定して、こうした環境改善に乗り出そうとしています。

踏切でパニックになったときの備えを

ただ、点字ブロックの整備には時間がかります。
もし踏切を歩いているときに警報音が鳴りはじめ、焦ったらどうすればいいのか。
原田さんは、踏切の警報音が鳴ってから列車が通過するまでは少なくとも25秒あるという国の基準をふまえ、
「慌てて引き返したりせず、いつものペースで歩き切ることが大事。焦った状態で引き返すと、方向を失う可能性も高くなる」といいます。

さらに、万が一、遮断機が下りてきて、踏切の内側にいるのか外側にいるのか分からなくなったら・・・。
原田さんが問い合わせた鉄道会社からは、「列車と遮断機のバーの間には1メートルほどの隙間がある」と返答があったそうです。そのため、緊急時に遮断機のバーを見つけて、どちらに行けばいいか分からなくなった場合、「遮断機のバーの下にしゃがむと助かる可能性が高い」と原田さんはアドバイスします。

ただ、隙間が狭いところもあるので、必ずしも安全とはいえません。
それぞれの踏切によって取るべき対応も違うことが想定されますので、ふだん利用する踏切の状況について鉄道会社に問い合わせてみることを勧めていました。
なるほど、災害と同じように、こうした具体的な対策を普段から考えておくことが大切ですね。

そして、事故を防ぐには何よりも周りの「声かけ」が重要です。
ホーム転落を防ぐ対策と同じように、踏切を渡ろうとしている視覚障害者や、踏切内で立ち往生している人を見かけたら積極的に声をかけること。
さらに、「当事者も危険だと思ったら、自ら声をあげて周囲の人と一緒に横断してほしい」と原田さん。
私たちのひと声が、命を救うことにつながると感じました。

 

▼白杖を持って踏切を渡るときのポイントなど詳しい内容は、番組サイトで放送をまるごと聴くことができます。過去2年間の放送は、視覚障害ナビ・ラジオのWEBサイトからどうぞ!
▼「視覚障害ナビ・ラジオ」はラジオ第2で毎週日曜日の午前7時半から放送。
 「らじる★らじる」のサイトから聴くこともできます。
▼NHKラーニング「歩きスマホ 点字ブロックの上では特に注意!」の動画もご覧ください!

 

「まなびノート」、次回もどうぞお楽しみに!