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これまでの放送 2019年2月1日(金)の放送

ラフマニノフの交響曲第2番
激動の時代を生き抜き、心の叫びを美しいメロディーに変えたロシアを代表する作曲家ラフマニノフ。多くの人に愛された美しくも切ないメロディーが紡ぎだされる交響曲第2番に込められた思いとは…望郷と復讐をキーワードにその思いに迫ります。
ラフマニノフの交響曲第2番
激動の時代を生き抜き、心の叫びを美しいメロディーに変えたロシアを代表する作曲家ラフマニノフ。多くの人に愛された美しくも切ないメロディーが紡ぎだされる交響曲第2番に込められた思いとは…望郷と復讐をキーワードにその思いに迫ります。

リベンジの交響曲第2番

ラフマニノフは子供のころから天才ぶりを発揮し、9歳でサンクトペテルブルク音楽院に奨学金を得て入学します。しかしそこではふさわしい教育を受けることができず、ついに退学。それでも転校先のモスクワ音楽院ではピアノ科と作曲科を一番の成績で卒業し、瞬く間にモスクワ音楽界随一の人気作曲家になりました。その後、交響曲第1番をサンクトペテルブルクで初演すると大失敗。それには、ラフマニノフの才能を恐れるサンクトペテルブルク音楽界の陰謀が働いていたとも考えられています。しかし、その後次々に成功をおさめ、第1番の失敗から11年後、満を持して、交響曲第2番の初演をサンクトペテルブルクで行いました。誰もが認めざるを得ない才能を発揮し、初演は大成功。見事リベンジを果たしたのです。

望郷の響きどこまでも

ラフマニノフは、ロシア帝国末期の混乱を避けるために一時期モスクワを離れており、交響曲第2番もドイツのドレスデンで作曲されました。離れているゆえに高まる祖国への思い。子供のころに刻まれたロシアの情景が見事に描かれています。深く雄大な第1楽章、雪原を疾走するような第2楽章、美しく切ないメロディーの第3楽章、お祭りのように鮮やかな第4楽章。ラフマニノフにとって、ロシアの雄大な自然は創作の原動力となっていたのです。

切なさの仕掛けと「ラフマニノフ節」

この曲の魅力は何といっても第3楽章に現れる美しくも切ないメロディー。
その秘密はメロディーの枠組みが「6度」となっていることです。6度はさまざまなジャンルの音楽の冒頭やサビに用いられており、印象的で美しいメロディーを形作ります。
さらに、ラフマニノフの特徴といえば、クライマックスまでを長引かせること。この曲の中でもクライマックスとなるハ長調でかのメロディーを奏でるまでに、なんと12小節という時間をかけます。同じことを繰り返しながら、徐々に上昇させ、ついにクライマックスへと到達するのです。
このような仕掛けもまた、この作品が大きな成功を収めたゆえんと言ってもいいでしょう。

ゲスト

20世紀に書かれた一番美しいメロディーのひとつだと思います。

20世紀に書かれた一番美しいメロディーのひとつだと思います。

一柳富美子(音楽学者) 一柳富美子(音楽学者)

一柳富美子(音楽学者)

profile

モスクワ大学、モスクワ音楽院に留学。ロシアの歴史や音楽について深く学ぶ。
ロシア音楽研究の第一人者。

楽曲情報

交響曲第2番第3楽章(カット版)
ラフマニノフ
三ツ橋敬子(指揮)
東京フィルハーモニー(管弦楽)

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