これまでの放送 2019年1月25日(金)の放送
日本人の心に刻まれる数多くの歌を生み出してきた作詞家・松本隆。松本さんは昨年、26年にわたるライフワークの集大成として、シューベルト歌曲集「白鳥の歌」の訳詞を完成させました。その中には、「痛み」と「愛」をテーマにした両極端な歌曲が多く含まれます。今回は、松本隆の美しい日本語でシューベルトの「白鳥の歌」を味わいます。
シューベルト「白鳥の歌」
日本人の心に刻まれる数多くの歌を生み出してきた作詞家・松本隆。松本さんは昨年、26年にわたるライフワークの集大成として、シューベルト歌曲集「白鳥の歌」の訳詞を完成させました。その中には、「痛み」と「愛」をテーマにした両極端な歌曲が多く含まれます。今回は、松本隆の美しい日本語でシューベルトの「白鳥の歌」を味わいます。
日本人の心に刻まれる数多くの歌を生み出してきた作詞家・松本隆。松本さんは昨年、26年にわたるライフワークの集大成として、シューベルト歌曲集「白鳥の歌」の訳詞を完成させました。その中には、「痛み」と「愛」をテーマにした両極端な歌曲が多く含まれます。今回は、松本隆の美しい日本語でシューベルトの「白鳥の歌」を味わいます。



痛みと愛 不治の病から生まれた正反対の歌曲


31年という短い生涯の間に1000曲近くの歌曲を作曲したシューベルト。20代半ばで当時不治の病だった梅毒に感染し、絶望の淵に突き落とされます。その後、自分の内面の「痛み」をさらけ出すかのような暗い曲を作曲していましたが、どんな苦しみの中にあっても人を喜ばせたるものを作曲したいと、聴くものを優しく包み込む明るい愛の歌も作曲するようになりました。亡くなる直前に完成させた歌曲集「白鳥の歌」は、全14曲によって構成されており、その多くが、人間が抱える痛みや愛を歌っています。
痛みがテーマの曲「ドッペルゲンガー」


この作品で描かれる「痛み」は歌詞だけではなく、音楽にも現れます。それはまさに「ファのシャープ」に象徴されます。自分の内面や心の痛みを表す「ファのシャープ」への執着は、まさに感情が抑え込まれた様子を描いているようです。そして「自分の顔だ」という歌詞を歌うとき、ついに「ファのシャープ」から「ソ」へ移り変わります。それはまるで、自分を付きまとい、束縛していたものが、自分自身であったことに気付くかのようです。
愛がテーマの曲「鳩」


歌曲集の最後に置かれた「鳩」。ここに描かれる鳩とは、思いを誰かに伝える役目を持つ伝書鳩です。この曲からは、鳩を通して伝えたかった愛の歌が「憧れ」となり、やがて訪れる死へと旅立つというメッセージを感じると松本さんは言います。シューベルトはこの曲を作って1ヵ月後に亡くなります。シューベルトの最後の叫びの曲といえるでしょう。
ゲスト


松本隆(作詞家)
profile
慶大在学中、細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂とロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ドラムと作詞を担当。昭和48年解散後は作詞家として活躍。代表作に「木綿のハンカチーフ」「ルビーの指輪」「冬のリヴィエラ」などがある。また小説「微熱少年」などでも知られる。
楽曲情報
- 「ドッペルゲンガー」
- シューベルト
- ハイネ
- 松本隆
- 鈴木准(テノール)、巨瀬励起(ピアノ)
- 「鳩」
- シューベルト
- ザイドル
- 松本隆
- 鈴木准(テノール)、巨瀬励起(ピアノ)

光と影があって初めて心が立体的になる