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これまでの放送 2018年9月28日(金)の放送

サン・サーンス「動物の謝肉祭」
白鳥や象など、かわいい動物が次々と出てくる、とても楽しい曲というイメージが持たれるサン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。でも実は、曲のあちこちには強烈な皮肉が仕込まれているのです。今日はサン・サーンスが込めた皮肉に迫ります!
サン・サーンス「動物の謝肉祭」
白鳥や象など、かわいい動物が次々と出てくる、とても楽しい曲というイメージが持たれるサン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。でも実は、曲のあちこちには強烈な皮肉が仕込まれているのです。今日はサン・サーンスが込めた皮肉に迫ります!

皮肉の祭り「謝肉祭」

曲名にある「謝肉祭」とは「カーニバル」を意味します。それは、仮面をかぶって身分を隠し、日ごろは言えない不平不満を「皮肉」にしてぶちまけるお祭り。そんなカーニバルをテーマにしたこの作品にも皮肉がたっぷりと込められています。例えば、第4曲「かめ」。有名なオペレッタ「天国と地獄」をゆっくり演奏させた作品です。当時流行したオペレッタへの皮肉だといわれます。

皮肉屋サン・サーンス

多くの作曲家に影響を与え、交響曲やオペラなど数多くの傑作を残したサン・サーンス。しかし、当時の音楽業界からは評価されていませんでした。それはいつも一言多い、皮肉屋という性格ゆえのものでした。1885年には、当時大人気だったワーグナーについて、「私はワーグナーの作品を、その奇妙な面は別にして、ことのほか深く賛美している」とまた余計な一言を加えてしまいました。反感を招き、翌年に予定していたドイツを回る演奏旅行は次々とキャンセルされてしまいました。

曲に込められた皮肉

ゲストの宮川彬良さんが注目するのは終盤の「ピアニスト」、「化石」、「白鳥」の3曲。第11曲「ピアニスト」という曲はまるで練習曲。人間のルーティンワークへの皮肉です。そのサイクルが次第に早くなり、唐突に終わると、次の第12曲「化石」へとつながります。まるで、想像力を使わない世界は化石同然だと言っているようです。しかし、そのあとに続くのが、かの美しいメロディーを持つ第13曲「白鳥」。すべてを通り抜けた先に、芸術、そして美が残ったということがこの曲には込められています。まさにこの3曲は人に対する最大の皮肉の結集ともいえるでしょう。

ゲスト

サン・サーンスは結構いい人だったんじゃないか

サン・サーンスは結構いい人だったんじゃないか

宮川彬良(作曲家) 宮川彬良(作曲家)

宮川彬良(作曲家)

profile

最近では、連続テレビ小説「ひよっこ」の音楽を担当。テレビや舞台の音楽も数多く手がける。
音楽をわかりやすく伝える演奏会を各地で開催している。

楽曲情報

組曲「動物の謝肉祭」から「ピアニスト」「化石」「白鳥」
サン・サーンス
アンサンブル・ベガ+フレンズ
三上亮(バイオリン)、戸原直(バイオリン)、馬渕昌子(ビオラ)、丸山泰雄(チェロ)、新眞二(コントラバス)、鈴木豊人(クラリネット)、中村祐子(シロフォン)、宮川知子(ピアノ)、宮川彬良(ピアノ)

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