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これまでの放送 2018年8月24日(金)の放送

ベートーベンの交響曲第9番 ベートーベンの交響曲第9番は、今年で日本初演から100年を迎え、いまや日本人の愛唱歌といっても過言ではありません。今日は日本初演の物語、そして世界中で平和の象徴となった“第9”に迫ります。 ベートーベンの交響曲第9番
ベートーベンの交響曲第9番は、今年で日本初演から100年を迎え、いまや日本人の愛唱歌といっても過言ではありません。今日は日本初演の物語、そして世界中で平和の象徴となった“第9”に迫ります。

クラシック珍道中 徳島“第9”ぶらり旅

日本で始めてこの曲が響いたのは徳島県鳴門市、「第九の里」との異名を持っています。100年前の当時、このあたりには第1次世界大変の捕虜を収容する板東俘虜収容所があり、チンタオで日本と戦ったドイツ兵たちがこの地に送られてきました。自由を尊重したこの収容所ではスポーツや文化活動が行われ、音楽活動はその中でも特に盛んでした。捕虜たちはしばしば収容所の外へ出て、徳島の人々とも交流し、時には演奏を披露することもありました。その集大成が6月1日“第9”の日本初演だったのです。

“第9”とワーグナー

“第9”の世界初演は1824年、その4年後にライプチヒでこの曲を聴いて感動に震えた少年こそ、のちにオペラ作曲家となるワーグナーでした。“第9”の楽譜を研究し、自らのピアノ編曲版を作曲しました。後にドレスデンの宮廷歌劇場の指揮者となると、“第9”の演奏を提案しましたが、当時、あまりの難しさと規模から“第9”は敬遠されており、猛反対を受けたのです。そこでワーグナーは、観客に音楽のイメージを伝えるために音楽のドラマを解説したパンフレットを作りました。1846年に第九の演奏会はついに実現し、これを機に“第9”の演奏機会は増えていきました。作品に込められた平和へのメッセージから、東西ドイツ統一の際をはじめ、様々な国際的な行事で演奏されています。

歓喜のメロディーの秘密

“第9“の第4楽章は、それまでの壮大な3つの楽章を否定する形で始まります。そのあとに初めて挿入される旋律こそ、かの有名な「歓喜のメロディー」。作曲家・宮川彬良さんは歓喜のメロディーの構成音の音域の狭さに注目します。そしてこの音域の狭さゆえに、みんなが歌えるメロディーとなったのです。やがて歓喜の大合唱を導き出すこのメロディーは、誰もが歌えるという音楽の一番の喜びを体現するものともいえるでしょう。

ゲスト

歓喜の歌に歓喜した

歓喜の歌に歓喜した

宮川彬良(作曲家) 宮川彬良(作曲家)

宮川彬良(作曲家)

profile

最近では、連続テレビ小説「ひよっこ」の音楽を担当。
ミュージカルや演劇の音楽も数多く手がける。音楽をわかりやすく伝える演奏会を各地で開催している。

“第9”は平和の象徴

“第9”は平和の象徴

平野昭(音楽学者) 平野昭(音楽学者)

平野昭(音楽学者)

profile

古典派とロマン派音楽の様式研究を中心とし、特にベートーベン研究をライフワークとしている。
ベートーベン研究の第一人者。

楽曲情報

交響曲第9番(抜粋)
ベートーベン
ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)
シモーナ・シャトゥロヴァ(ソプラノ)
エリーザベト・クールマン(メゾ・ソプラノ)
ホエル・プリエト(テノール)
パク・ジョンミン(バス)
東京オペラシンガーズ(合唱)
NHK交響楽団(管弦楽)

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