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これまでの放送 2018年1月12日(金)の放送

バダジェフスカの「乙女の祈り」~世界初のミリオンヒット!? その数奇な運命~ ピアノを習う多くの人が、幼い頃「弾けるようになりたい」と憧れるという「乙女の祈り」。19世紀中頃に欧米でその楽譜が爆発的な売り上げを記録し、世界初のミリオンヒット作品ともいわれています。日本でも長く愛され続け、誰もがどこかで聴いたことがある身近なクラシック作品となっています。しかし現在、ヨーロッパでは忘れ去られた作品となり、作曲したバダジェフスカについても知る人はほとんどいません。なぜ忘れられてしまったのか…。「乙女の祈り」に秘められた物語を紐解きます。 バダジェフスカの「乙女の祈り」
~世界初のミリオンヒット!? その数奇な運命~
ピアノを習う多くの人が、幼い頃「弾けるようになりたい」と憧れるという「乙女の祈り」。19世紀中頃に欧米でその楽譜が爆発的な売り上げを記録し、世界初のミリオンヒット作品ともいわれています。日本でも長く愛され続け、誰もがどこかで聴いたことがある身近なクラシック作品となっています。しかし現在、ヨーロッパでは忘れ去られた作品となり、作曲したバダジェフスカについても知る人はほとんどいません。なぜ忘れられてしまったのか…。「乙女の祈り」に秘められた物語を紐解きます。

時代に求めた大ヒット!

「乙女の祈り」を作曲したのは、ポーランド人の女性音楽家、テクラ・バダジェフスカ。
しかし彼女の写真や肖像画は、第二次世界大戦の戦火に焼かれ残っていません。分かっていることは、22歳の若さで「乙女の祈り」を発表したこと。そしてこの曲が、聖母マリアの物語を描いた宗教的な音楽であるということでした。

「乙女の祈り」が発表された19世紀中頃は、貴族に代わり台頭した市民たちが、こぞってピアノを手にしていた時代。ショパンやリストなどの美しいピアノ曲に憧れが集まり、ピアノのレッスンが大流行していました。当時の若い女性にとって、ピアノを習うことは、良い結婚をするために必要な条件でもあり、「乙女の祈り」はそんな女性たちや親たちにとって、難しすぎないけれど聴き映えがするという、求められた要素が詰まった作品でした。有名な音楽雑誌の付録として楽譜が売り出された「乙女の祈り」は、瞬く間に売り上げ100万部を超える大ヒットとなりなりました。
そんな「乙女の祈り」が日本にやってきたのは大正時代の前後と言われています。そして、戦後の高度成長期にピアノが爆発的に普及すると、その清らかなメロディーが生む上品な雰囲気から、この曲は豊かな生活の象徴となり、一躍、女の子たちの憧れの作品ともなったのです。

祖国で忘れ去られた作品

日本では今も多くの人たちに愛され、身近な曲として親しまれている「乙女の祈り」。しかし、作曲したバダジェフスカの祖国ポーランドでは、ほとんど知られていません。なぜ忘れられてしまったのか?その事情を知る人が日本の川崎市にいました。ポーランド出身のフリージャーナリスト、ドロタ・ハワサさん。日本人から、同じポーランドの人間が作った「乙女の祈り」のことを聞かれ、全く知らない曲が日本で浸透していることに驚いたハワサさんは、「乙女の祈り」と作曲したバダジェフスカに興味を持ち調べ始めました。わずかに残った資料から見えてきたのは、バダジェフスカは、ほとんど音楽教育を受けていないアマチュアのような存在で、シンプルな作品を作り、本屋などで楽譜を手売りしていたらしいということ。そして、その作品のシンプルさから専門家から酷評されたことでした。

ゲストのピアニスト・小原孝さんは「現代のポップスに近い性質の作品だと思う」といいます。時代が違えば若きヒットメーカーと呼ばれていたかもしれないバダジェフスカ。重く複雑な音楽が良しとされる時代の中で、彼女の存在は忘れ去られてしまったのです。調べ続けたドロタ・ハワサさんは、その経緯をラジオ・ドキュメンタリーとしてまとめ、ポーランドで発表しました。それをきっかけに少しずつポーランドで再び知られるようになっていった「乙女の祈り」とバダジェフスカの存在。2011年には彼女を記念したコンサートが開かれ、翌年には研究者による本格的な評伝も発表されました。ハワサさんが見つけた時には荒れ果てていたバダジェフスカの墓は、近年では花やロウソクが供えられ、きれいに整備されるようになりました。

ピアニスト・小原孝が教える。“乙女らしく"弾くポイントとは!?

同じメロディーの繰り返しで構成された「乙女の祈り」。しかし“乙女らしさ”を出すには、ちょっとしたテクニックが必要!ゲストの小原孝さんが、そのコツを伝授してくれました。初心者向けの作品とは言え、難しい奏法も散りばめられているとのこと。一つ目は、一オクターブ離れた同じ音を同時に弾くオクターブ奏法。そして和音を分散させて弾くアルペジオ。隣り合う音を交互に細かく弾くトリル。慣れないと力が入ってしまい、バタバタと強く弾いてしまうこれらの奏法を、いかに優しく柔らかく弾くかがポイント!力を抜いて鍵盤をしっかりと下まで押すことを意識して優しい音を出すのがコツだそうです。スタジオではMCの牛田アナウンサーが乙女らしい「乙女の祈り」に挑戦しました。

ゲスト

「乙女の祈り」は、人気曲なのにプロはほとんど弾かない不思議な作品。単純なようでピアノの魅力が詰まった曲でもあるんです。

「乙女の祈り」は、人気曲なのにプロはほとんど弾かない不思議な作品。
単純なようでピアノの魅力が詰まった曲でもあるんです。

小原孝(ピアニスト) 小原孝(ピアニスト)

小原孝(ピアニスト)

profile

国立音楽大学大学院を首席で修了。クラシックだけではなく、ポップスや演歌、童謡・唱歌など、ジャンルを超えた作品を演奏し人気を集めるピアニスト。 NHK-FM「弾き語りフォーユー」のパーソナリティーも20年以上務めている。

楽曲情報

「乙女の祈り」
バダジェフスカ
小原孝(ピアノ)
「乙女の祈り」
バダジェフスカ
小原孝(ピアノ)

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