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これまでの放送 2017年11月3日(金)の放送

ドボルザークのチェロ協奏曲 ~心ゆさぶるチェロの男泣き~ 「チェロ音楽の王様」とも言われるドボルザーク作曲のチェロ協奏曲。
壮大なオーケストラの響きのなかで、チェロが胸をしめつけるような
切ないメロディを奏でる。チェコの大作曲家が新大陸アメリカで生み
だした名曲。誕生の背景には、ある女性との30年にも及ぶひそやか
な愛があった。心ゆさぶる男泣きの響き、その秘密に迫る。
ドボルザークのチェロ協奏曲
~心ゆさぶるチェロの男泣き~
「チェロ音楽の王様」とも言われるドボルザーク作曲のチェロ協奏曲。壮大なオーケストラの響きのなかで、チェロが胸をしめつけるような切ないメロディを奏でる。チェコの大作曲家が新大陸アメリカで生みだした名曲。誕生の背景には、ある女性との30年にも及ぶひそやかな愛があった。心ゆさぶる男泣きの響き、その秘密に迫る。

アメリカでのチェロとの出会いが生んだ名曲

24歳の時、ドボルザークは初めてチェロ協奏曲の作曲に取り組んだが、作品は未完に終わった。後年、彼は「チェロは独奏楽器には向かない。高い音を出すとキーキー聴こえる」と語ったという。およそ30年後、新設された音楽学校の校長としてニューヨークに招かれたドボルザークは、大都会やナイアガラの滝など、アメリカで出会う様々なものから刺激を受けて、「新世界交響曲」をはじめ音楽の新機軸を打ち出した。さらに、若い頃から苦手としていたチェロの魅力を再発見する出来事にも遭遇する。音楽学校の同僚で当代最高峰のチェリストと言われたビクター・ハーバートのコンサートを聴き、チェロが高音域で歌い上げる様子に目の当たりにしたのだ。感激したドボルザークは、彼に抱きついて「すばらしい!」と大声で何度も叫んだという。これらの衝撃から、チェロ協奏曲は生まれたのである。

初恋の女性にささげた終結部

切ない響きが聴く者の心を揺るがすチェロ協奏曲。誕生の背景にはドボルザークの心を揺るがした大きな出来事があった。ピアノの家庭教師として生計を立てていた20代の頃、ドボルザークは、ピアノの生徒だったヨゼフィーナと恋に落ちた。プロポーズまでしたドボルザークだったがあえなく失恋。その後、彼はヨゼフィーナの妹アンナと結婚した。それから20年後、チェロ協奏曲を完成させてチェコに帰国したドボルザークにショッキングな知らせが届く。初恋の女性ヨゼフィーナが亡くなったというのだ。ドボルザークは完成していたチェロ協奏曲の改訂を決意。第3楽章に64小節もの長大な終結部を書き足し、そこに、かつてヨゼフィーナにささげた歌曲「ひとりにさせて」のメロディを埋め込んだのだ。50歳を前に亡くなった初恋の女性への哀悼の想いが込められた終結部によって、この曲は多くの人々を感動させる情緒豊かな名曲になったのである。

楽曲解説

チェロの高音域を駆使するこの曲。高音域を存分に生かすことを可能にした秘密は二つある。

1 演奏技術の高まり
高音域の演奏では、同じドレミを弾くのでも音が高くなるほど指の感覚が狭くなり、押さえる位置の正確さがミリ単位で求められる。高音域を駆使した演奏は、演奏者の厳しい鍛錬の賜物だ。

2 楽器の進化
ドボルザークが生きた時代は、チェロの楽器改良が進んだ時代でもあった。チェロは元々両足に挟んで演奏されていたが、19世紀後半、床にさして胴体を安定させる「エンドピン」が発明されたため、高音域を安定して演奏することが可能になった。これらの結果、高音域を駆使したチェロ協奏曲の演奏が可能になったのである。

ゲスト

「チェリストにとって宝物のような曲です」

「チェリストにとって宝物のような曲です」

長谷川陽子(チェリスト) 長谷川陽子(チェリスト)

長谷川陽子(チェリスト)

profile

日本を代表するチェリストの一人で、国内外のオーケストラと共演している。
ミニコーナー「チェロ道、一直線」では、高橋克典にチェロを教える。

楽曲情報

チェロ協奏曲ロ短調 第3楽章から
ドボルザーク
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
岡本侑也(チェロ)

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