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これまでの放送 2017年8月4日(金)の放送

ベートーベンの「田園」~苦しみの果ての平和な風景~ くる日もくる日も森を歩きまわり、耳が聞こえなくなった悲しみを
癒したベートーベン。ハイリゲンシュタットの田園風景に見出した
ものとは。宮沢賢治も愛した、自然への愛にあふれる交響曲に
せまります。
ベートーベンの「田園」~苦しみの果ての平和な風景~
くる日もくる日も森を歩きまわり、耳が聞こえなくなった悲しみを癒したベートーベン。ハイリゲンシュタットの田園風景に見出したものとは。宮沢賢治も愛した、自然への愛にあふれる交響曲にせまります。

宮沢賢治が愛した「田園」

ベートーベンをこよなく愛した、岩手出身の詩人・童話作家の宮沢賢治。田畑を背景にたたずむ有名なポートレイトは、なんとベートーベンの肖像画をまねて同じポーズで撮ったものでした。とりわけ「田園」を愛した賢治は、この曲にインスピレーションを受けた詩や小説をいくつも残しています。 5楽章からなる「田園」は、全体で一連の物語をしめす曲。田舎にやってきた心晴れやかな気分を描いた第1楽章。第2楽章は小川のほとりを散策。やがて農民たちのお祭りに出会う第3楽章。そこに激しい雷雨が降る第4楽章。そして第5楽章は雨がやみ、自然の恵みに感謝。賢治の胸にも深く響いた、ベートーベンの自然へのまなざし。日本の田園風景にも通じる普遍的な魅力こそベートーベンの凄さなのです。

ベートーベンの田園への思い

ベートーベンが夏になると訪れていた、ウィーン郊外のハイリゲンシュタット。「田園」は1808年、この地で作曲されました。しかし初めて訪れたとき、ベートーベンは絶望の淵にありました。耳が聞こえなくなるという音楽家として致命的な病が進行していたのです。悲しみに耐えかね、弟たちに宛てて手紙を書きます。難聴の果てに見出した自らの強い意志を綴ったこの手紙はのちに「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれました。くる日もくる日もハイリゲンシュタットの森を歩き、新しい音楽の構想を練ったベートーベン。そして完成したのが、自然への深い愛を描いた「田園」。ナポレオンが絶えず戦争を起こしていた時代、ベートーベンにとって田園はまさに平和な風景そのものだったのです。

「田園」びっくり解説!

作曲家の宮川彬良さんが「田園」を分析。彬良さんによると、この曲は森そのものだといいます。冒頭4小節に現れる1つのメロディーが、実は4つの小さなモチーフでできているのです。そして、モチーフが曲のいたるところに散りばめられ、活用されているのです。音のひとつひとつがまるで森の葉っぱや草のように意味があり、1か所とて無駄がない。まさに森の音が響きあうような交響曲なのです。

ゲスト

この曲、全部、森だったのですね!聴く耳が変わりました!

この曲、全部、森だったのですね!聴く耳が変わりました!

白井晃(演出家・俳優) 白井晃(演出家・俳優)

白井晃(演出家・俳優)

profile

演劇からオペラまで幅広く手がける
近年ベートーベンの半生を舞台化

楽曲情報

交響曲第6番「田園」第1楽章から
ベートーベン
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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