これまでの放送 2017年7月21日(金)の放送
20世紀最高のクラシック・ギタリスト、アンドレス・セゴビア。名演奏家であるだけでなく、ギターのための名曲を数多く生み出し、楽器の改良にも取り組んだ「ギターの革命家」でした。
彼の功績により、ギターはピアノやバイオリンと肩を並べるクラシック音楽のコンサート楽器になりました。今年で没後30年。世界中の人たちを魅了し続けるセゴビアの名旋律の魅力に迫ります。
アンドレス・セゴビア
1893-1987
解剖!伝説の名演奏家
~偉大なるギターの革命家 セゴビア~
20世紀最高のクラシック・ギタリスト、アンドレス・セゴビア。名演奏家であるだけでなく、ギターのための名曲を数多く生み出し、楽器の改良にも取り組んだ「ギターの革命家」でした。彼の功績により、ギターはピアノやバイオリンと肩を並べるクラシック音楽のコンサート楽器になりました。今年で没後30年。世界中の人たちを魅了し続けるセゴビアの名旋律の魅力に迫ります。

アンドレス・セゴビア 1893-1987
彼の功績により、ギターはピアノやバイオリンと肩を並べるクラシック音楽のコンサート楽器になりました。今年で没後30年。世界中の人たちを魅了し続けるセゴビアの名旋律の魅力に迫ります。

アンドレス・セゴビア
1893-1987


日本に来たセゴビア


セゴビアは日本に4回来日しています。彼が66歳の時、
2度目の来日の東京公演には、当時の皇太子殿下、つまり現在の天皇陛下も訪れ、演奏をお聴きになりました。会場を埋め尽くした聴衆は皆、セゴビアの神業のようなギターに酔いしれたのです。
セゴビアは滞在中12回のコンサートを行い、NHKのスタジオでは演奏の収録も行われました。放送によってセゴビアの名演奏は日本全国に知られたのです。


村治佳織・手塚健旨
2人のギタリストがセゴビアならではの音“セゴビアトーン"の秘密に迫ります。
セゴビアトーンの秘密




ポイント① 大きな手
セゴビアの手は、とても大きくやわらか。複数の弦を人さし指などでまとめて押さえる奏法「セーハ」を多用します。普通の人はかなりの力を必要としますが、セゴビアは少しの力でさりげなく楽々と押さえられる。響きの豊かさは、こうした点にも秘訣があるそうです。
ポイント② ビブラート
ビブラートとは、弦を押さえる左手をゆすって、音に揺らぎや余韻を持たせる奏法です。セゴビアの太く大きな指は、普通の人よりもビブラートを負担なく作り出すことができるといいます。
ポイント③ タッチ
弦を弾いている右手のタッチには、無駄な力は一切入っていません。しなやかなタッチから、太くやわらかく豊かな音が生まれます。それまでは白黒のような世界だったギターの音が、セゴビアによって色彩感あふれるカラーの世界になった…
それが“セゴビアトーン"と考えられています。
天才ギタリストは革命家


セゴビアはスペイン南部の街リナレスに生まれました。
生活が苦しく母親が出稼ぎに行くことになり、2歳で伯父夫婦の家に預けられます。ある日、街で出会ったのが、フラメンコを奏でる渡り者のギター。数日間、楽器の手ほどきを受けると、セゴビアはギターにのめり込んでいきました。めきめきと腕を上げ、スペイン各地の演奏会で聴衆を魅了するようになり、1924年、世界の音楽家達が憧れる、パリ音楽院ホールで大成功を収めます。
しかし、セゴビアはギターに対する認識の低さに憤っていました。彼はギターをクラシック音楽のコンサート楽器として認めさせようと、情熱を傾けます。先ずは、致命的に少ないギターの曲目を増やそうと、バロックから古典派、ロマン派に至るまで、おびただしい数の名曲を、自らギター用に編曲。また、著名な作曲家たちに、ギターが中心となる管弦楽曲を作るよう果敢にアプローチ。その結果、多くのギター協奏曲が誕生。さらに、大ホールでオーケストラと共演できるように楽器の改良も行いました。セゴビアはクラシック音楽におけるギターの存在を、揺るぎないものにしたのです。
不屈の音楽家魂

「光のないエチュード」セゴビアの自筆譜 1953年

「光のないエチュード」セゴビアの自筆譜 1953年
セゴビアの音楽人生を揺るがすほどの事件がありました。1953年7月、セゴビアは友人の車のガラスに頭を打ちつけ「網膜はく離」を起こしてしまいます。医師から失明の危機を告げられ、絶望の淵をさまよいました。
「私は失明しても ギターを弾き続けたい…」。そんなセゴビアの脳裏に一筋の光がさし、ある旋律が思い浮かびました。幸い手術は成功。療養を続けながら、セゴビアは曲を完成させます。題名は「光のないエチュード」。
暗闇の中でさえギターの音を探し続けた不屈の音楽家セゴビア。亡くなる2か月前までステージに立ち続け、5000回以上のコンサートを行いました。1987年6月 、惜しまれつつ94歳でこの世を去りましたが、彼の魂は後進たちによって今も生き続けています。
ゲスト


村治佳織(ギタリスト)
profile
3歳からレッスンを始め数々のギターコンクールで優勝
世界の様々なオーケストラとも共演を重ねる実力派

以前は白黒の世界だったギターをカラーの世界にした…それがセゴビアです


手塚健旨(ギタリスト)
profile
演奏活動の傍らスペインの音楽学校で教鞭も執る
ギター音楽の歴史に詳しいセゴビア研究の第一人者
楽曲情報
ギターは私の人生の最も重要な道具です
一人の芸術家が完全に身をささげれば楽器は生命あるものに変るのです
セゴビア1982年 インタビューから
セゴビア(ギター)

- 「スペイン舞曲 第5番」
- グラナードス
- 「スペイン舞曲 第10番」
- グラナードス
- 「リュートのためのプレリュード」
- バッハ
- セゴビア
- 「ギター協奏曲ニ長調 第3楽章」
- カステルヌオーヴォ・テデスコ
- 「モーツァルトの主題による変奏曲」
- フェルナンド・ソル
- 「ファンダンギーリョ」
- モレーノ・トローバ
セゴビアの言葉「夢見るようにギターを弾く…」素敵だなと