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これまでの放送 2017年6月2日(金)の放送

名曲集 舟歌 ~波に揺れる人生ドラマ~ 「舟歌」とは主にベネチアのゴンドラ漕ぎの歌を指すのだが、
このモチーフで多くの作曲家が作品を残している。
今回は、数多の舟歌の中から、著名な作曲家4人の作品に着目。
何が彼らの創作意欲を掻き立てたのか?
その秘密をベネチアの街の歴史や文化との関わりを通して
探っていく。
名曲集 舟歌
~波に揺れる人生ドラマ~
「舟歌」とは主にベネチアのゴンドラ漕ぎの歌を指すのだが、このモチーフで多くの作曲家が作品を残している。今回は、数多の舟歌の中から、著名な作曲家4人の作品に着目。何が彼らの創作意欲を掻き立てたのか?その秘密をベネチアの街の歴史や文化との関わりを通して探っていく。

“美と滅び”を映す鏡「ホフマンの舟歌」

オッフェンバック作曲の歌劇「ホフマン物語」の中に登場する二重唱。夜のベネチアで高級娼婦とその客が愛を交わす官能的な歌。MCの高橋克典さんも声楽家の母と一緒に歌ったこともある思い出の曲。この歌、とても美しいメロディで心地よい気分にさせてくれるが、ただそれだけの歌ではないという。京都大学人文科学研究所教授の岡田暁生さんによると、この歌を鑑賞する上で、是非知っておくと良いことがあるという。それは、ベネチアが絢爛豪華な建築物に囲まれた美しい街であると同時に、しばしば腐臭をはなつ運河の上に浮かぶ一種のあやうさを持った街だということ。
さらにベネチアは伝統的に高級娼婦の街であり、そこで交わされる愛は官能的ではあるが、同時に永遠には続かない滅びゆく愛であるということ。街のつくりにおいても、また文化においても「美と滅び」という二重性を持ち合わせた街が舞台であることを知って聴くとそれまでとは違った聞こえ方がするかもしれない。

二人の作曲家が残したピアノの小品


舟歌はピアノの作品が多い。ピアノ曲の場合、左手が漕ぎ進む舟や波の揺れを表し、右手が人生ドラマを描く。
数多有るピアノ作品の「舟歌」から2曲をご紹介。
1曲目はメンデルスゾーンのピアノ小品集「無言歌」の中の「ベネチアの舟歌」。21歳の時、イタリア旅行でベネチアを訪れたメンデルスゾーン。ゴンドラ漕ぎの歌が気に入ったのか、「舟歌」を3曲も残している。
一方、北のベネチアと呼ばれたサンクトペテルブルクでは、チャイコフスキーがピアノ小品集「四季」の中の1曲として「舟歌」を書いている。「四季」は1月から12月までの風物をモチーフに描いた作品で、「舟歌」は、暖かくなって人々が水辺に集まる6月の曲だ。
スタジオゲストの東京藝術大学准教授 林達也さんによると、これらの2曲は、少し練習すれば弾ける曲なので、当時ピアノを習うのが流行していた貴族や商人の娘たちの間で愛用された曲だという。

“在りし日の思い出”を描いたショパンの「舟歌」

ショパン晩年の傑作のひとつがピアノ曲「舟歌」だ。10分近い大作で、テクニック的にも難しい曲だという。この曲を書く頃のショパンは、病気が悪化していた上、恋人だったジョルジュ・サンドとも破局を迎え、失意の中にあったといえる。しかし、この曲には、きらめく水面や恋人たちが舟の上で愛をささやきあうような明るい場面も登場する。
番組では、ゲストの林達也先生が、この曲のいくつかのフレーズをピックアップしてショパンが「舟歌」を通して描きたかったのは、“在りし日の思い出”であり、さらにはそれらが幻想となって波間に散っていくような様を描いたものではないかと分析。波間に揺れる人生ドラマを見事に描いていることを紹介する。

ゲスト

舟が大きく揺れたとき、乗っていた恋人たちにドラマが起こる。それが作曲家たちの創造力の源。

舟が大きく揺れたとき、乗っていた恋人たちにドラマが起こる。それが作曲家たちの創造力の源。

林 達也(東京藝術大学准教授) 林 達也(東京藝術大学准教授)

林 達也(東京藝術大学准教授)

profile

大学では作曲法を指導。ピアニストとしても活躍。
ショパンの曲が大好きだという。

楽曲情報

「ホフマンの舟歌」
オッフェンバック
カミラ・ティリング(ソプラノ)
アンネ・ソフィー・フォン・オッター
(メゾ・ソプラノ)
「無言歌」から「ベネチアの舟歌」
メンデルスゾーン
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
「四季」から「六月 舟歌」
チャイコフスキー
ミハイル・ヴォスクレセンスキー(ピアノ)
「舟歌」
ショパン
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)

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