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これまでの放送 2017年2月18日(土)の放送

これぞ人生のクライマックス~ヴェルディの「レクイエム」~ CMや映画のBGMにも頻繁に使われるヴェルディの「レクイエム」。
中でも迫力と激しさに満ちた第2曲「怒りの日」は特にドラマチック!
元々は死を悼むための音楽なのに、どうしてあれほど激しいのか?
そこにはヴェルディの「死」への思いがつまっていた…。
これぞ人生のクライマックス
~ヴェルディの「レクイエム」~
CMや映画のBGMにも頻繁に使われるヴェルディの「レクイエム」。中でも迫力と激しさに満ちた第2曲「怒りの日」は特にドラマチック!
元々は死を悼むための音楽なのに、どうしてあれほど激しいのか?そこにはヴェルディの「死」への思いがつまっていたー

死者も目を覚ます!?レクイエム

演奏が1時間30分にも及び、7つの曲で構成されるこの大曲。死者が安らかに天国へ迎え入れられるよう、神に祈りを捧げる曲だが、第2曲「怒りの日」は、そんな厳かなイメージを打ち破るかのように激しい。死者を悼む音楽なのに「怒りの日」とは一体、何を表しているのか?それは、神が人間たちを裁く、いわゆるキリスト教の「最後の審判」の場面を描いているから。世界の最後の日、天から降りてきた神により、生前の行いが良かったものは天国に召され、行いの悪かった者は、地獄へ落とされる。審判を下された者に、一切の言い逃れは許されません。この神の怒りにおそれおののく人間の姿を、ヴェルディは音楽で表現したのです。他のレクイエムと比べてみても、ヴェルディの作品は、激しさが際立っています。しかも、インパクトあるメロディーが全曲を通し、4回も登場するんです。祈りのレクイエムというよりは、人間の「死の恐れ」というものを赤裸々に描いたレクエイムなのです。

死と向き合うことで見えたもの

この曲の誕生には、2人の人物が強く関わっています。当時ヴェルディはイタリアを代表するオペラのヒットメーカーで、大衆受けのする作品を次々と世に送り出していました。そんな一流のエンターテイナーである彼が尊敬していたのが、先輩作曲家であったロッシーニ。自らは早々とオペラの世界から身を引きながらも、傑作を発表し続けるヴェルディを、応援していました。ヴェルディも、彼を母国の偉大な音楽家として、深く敬愛していたのです。しかし、ヴェルデイ55歳の時にロッシーニは死去。この時の深い悲しみをきっかけに、ヴェルディは「レクイエム」の構想を練り始めます。さらに、イタリアを代表する詩人で作家のマンゾーニ。幼い頃から読書家だったヴェルディは、マンゾーニの詩や小説の大ファンで、その才能を、心から尊敬していました。しかし、マンゾーニも、ヴェルディ59才の時に、この世を去ります。「何もかも終わりです。最も神聖で気高いものが終わってしまいました。」偉大な人間でさえも、避けることのできない「死」。その残酷さを、受け止めざるを得なかったのです。葬儀から数日後、マンゾーニの墓を一人で訪ねたヴェルディは「レクイエム」を作曲し彼に捧げることを誓います。そして翌年、マンゾーニの一周忌で発表。これまでの娯楽性重視のオペラとは一味違った「レクイエム」は、ヴェルディが自分の内面と向き合ったからこそ生まれた、傑作なのです。

迫りくる“おそれ”の妙

迫りくる恐怖の印象を与える「怒りの日」について、特に重要なパートが合唱。「怒りの日」冒頭では大きく分けると2つのパートで歌われています。1つのグループは徐々に音がさがっていき、もう1つのグループは、「ソ」の音をずっと伸ばしている。この2つ、実はきれいなハモリではなく、所々音がぶつかり合うようなハーモニーになっているんです。そのため、人々の恐怖心をあおるような、音のうねりを生み出しています。さらにジワジワと音が上がり、そしてジワジワと下がっていくメロディーも、ズルズルと引きずり落とされる感覚を与える要因の一つ。オペラ作家ヴェルディならではの“おそれ”を劇的に表すテクニックが、随所に組み込まれているのです。

ゲスト

「ものすごい迫力!キレイじゃない音の瞬間、音のうねりに心がギュっとつかまれる」

「ものすごい迫力!キレイじゃない音の瞬間、音のうねりに心がギュっとつかまれる」

野々すみ花(女優) 野々すみ花(女優)

野々すみ花(女優)

profile

元宝塚歌劇団 宙組トップ娘役
学生時代は合唱部で活躍

楽曲情報

「レクイエム」第2曲「怒りの日」から
ヴェルディ
セミョーン・ビシュコフ(指揮)
NHK交響楽団(管弦楽)
新国立劇場合唱団(合唱)

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