これまでの放送 2017年2月11日(土)の放送
20世紀の初めに発表、初演時には鑑賞用の特別列車が走ったほどの
大ヒットとなったオペラ「ばらの騎士」。
このオペラのテーマの一つは「美しい恋の終わり」。
作曲したリヒャルト・シュトラウスがそれをいかに巧みに表現したかという
視点で作品の魅力に迫る。
最後の夢芝居
リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」
20世紀の初めに発表、初演時には鑑賞用の特別列車が走ったほどの大ヒットとなったオペラ「ばらの騎士」。
このオペラのテーマの一つは「美しい恋の終わり」。作曲したリヒャルト・シュトラウスがそれをいかに巧みに表現したかという視点で作品の魅力に迫る。


美しい恋の終わり


オペラのあらすじをごく簡単に整理すると、年上の元帥夫人が若き青年貴族オクタヴィアンと不倫を楽しんでいたところへ、若い娘のゾフィーが登場し、オクタヴィアンと恋仲になり最後に元帥夫人は身を引くという、まあよくある三角関係のメロドラマ。聴きどころは何といっても最後の幕の終盤に歌われる三重唱。若い二人が恋を謳歌する陰で、元帥夫人は美しい立ち居振る舞いで身を引く覚悟を歌う。この歌こそ、恋の終わりを美しく締めくくる人生のレッスンのような歌なのだ。
オペラ史上最後の夢芝居


このオペラは1909年から準備が始まった。台本作家のホフマンスタールとシュトラウスは何度も手紙をやりとりし、
このオペラをモーツァルト風の喜劇というコンセプトで作りあげた。当時のオペラ界は、プッチーニの「トスカ」に
代表される、舞台で人殺しの場面が登場するような作品が多く発表されており、シュトラウスたちは、観客たちに
新しいオペラを提供しようと考えたからだ。軽妙な会話劇はもちろん、ワーグナーを彷彿とさせる重厚な響き、
そしてウィンナ・ワルツ。様々なモチーフを一つにまとめあげ、夢のようなオペラに仕立て上げたのが「ばらの騎士」なのだ。
発表されたのは1911年。数年後には第一次世界対戦がヨーロッパを覆う少し前にあたる。このオペラは時代の空気を
予感するかのように、ヨーロッパの古き良き時代との別れを象徴する作品でもあったのだ。
美しい別れを描く3つの音


今回美濃さんが注目したのは、三重唱の中に何度も登場する ミ ファ レ という3つの音。曲が進んでいく中で、この3つの音に込められた意味を分析。リヒャルト・シュトラウスがこの歌で「美しく優雅な別れ」をいかに上手に描いているかを紹介する。
ゲスト


ロバート キャンベル(日本文学研究者)
profile
近世・近代日本文学が専門
芸術やファッションにも造詣が深い
楽曲情報
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元帥夫人
エリーザベト・シュワルツコップオクタヴィアン
セーナ・ユリナッチゾフィー
アンネリーゼ・ローテンベルガー - ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)
「元帥夫人の甘美な憂鬱と苦しみが伝わる」