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これまでの放送 2016年11月12日(土)の放送

 道ならぬ恋の果てに~ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」~
名曲「トリスタンとイゾルデ」の誕生の裏には、
彼のリアルな恋心が関係していた!?
そして20世紀音楽の扉を開いたともいわれるこの曲は、
現代のヒットソングにも大きな影響を与えていた!
道ならぬ恋の果てに~ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」~
名曲「トリスタンとイゾルデ」の誕生の裏には、彼のリアルな恋心が関係していた!?
そして20世紀音楽の扉を開いたともいわれるこの曲は、現代のヒットソングにも大きな影響を与えていた!

「愛」と「死」を見つめて

自ら台本を書き作曲も行ったワーグナー。「トリスタンとイゾルデ」は中世ヨーロッパの伝説を元に、彼が創作した音楽劇です。騎士トリスタンと伯父の妃であるイゾルデの道ならぬ恋物語。この世では結ばれることが許されないなら、死の世界で結ばれたいと願う様子が、およそ4時間にも渡り描かれます。そして音楽的にも「死」を予感させる響きに満ちているのです。前奏曲で登場する「トリスタン和音」と呼ばれる不思議な響きの和音。結ばれないのなら、死に憧れるしかないー。そんな2人の思いを映し出すかのように、繰り返し登場します。死をもって成就する愛の物語。ワーグナーは、それを音楽で見事に描きだしたのです。

許されざる愛の記念碑って本当?

許されざる愛の記念碑って本当?

「トリスタンとイゾルデ」を作曲したのは、ワーグナーが指名手配を受け、各地を転々としながら逃亡生活を送っている頃でした。窮地を救ったのは、スイスの大富豪オットー・ウェーゼンドンク。ワーグナーの才能に魅了され、自宅の敷地内に隠れ家まで提供し援助します。それにも関わらず、ワーグナーはその妻マティルデに思いを寄せるのです。道ならぬ恋に走る2人。それはまるで「トリスタンとイゾルデ」の物語そのものでした。「私はこれまで愛の本当の幸福というものを味わったことがありませんでした。ですから、あらゆる夢のうちで最も美しいこの夢にこれから記念碑を建てようと思っています。」ワーグナーは彼女との許されざる愛をエネルギーに、台本を一気に書き上げたのです。
しかしマティルデとの、夢のような恋はいつまでも続かず。ワーグナーの妻にバレてしまい、大騒ぎ!ついには、隠れ家も去らなければならなります。そうなると、ワーグナーの恋心も冷めてしまい、曲が完成してしばらくすると、また別の人妻に手を出すのです。
ワーグナーの女性への熱意って、すごいですね。

音に込めた“救済”

Jポップの売れっ子プロデューサーもヒット曲に使ったという「トリスタン和音」。この作品の前奏曲で、トリスタン和音が最初に登場するのが、トリスタンとイゾルデのテーマが最初に重なる部分。不安定で神秘的なこの響きを、ワーグナーは禁断の愛を表現する一つの手法として使いました。そして、この不安定な響きがようやく安定した和音に変わるのが、なんと終幕部分。2人の願いが叶い、死の世界に旅立つ場面で、心地よい安定した和音に変わるのです。トリスタンとイゾルデの思いが“救済"されるかのような音で響き、この作品は幕を閉じる、という緻密に練り上げられた作品なのです。

ゲスト

ため息しか出ません!映画監督としても活躍できた人だったのでは

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LiLiCo(映画コメンテーター) LiLiCo(映画コメンテーター)

LiLiCo(映画コメンテーター)

profile

スウェーデン出身
年間およそ500本の映画・ドラマを観賞

楽曲情報

楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「優しくかすかな彼のほほえみ」
ワーグナー
横山恵子(ソプラノ)、角田鋼亮(指揮)、
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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