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これまでの放送 2016年10月8日(土)の放送

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 第8番
旧ソ連を代表する作曲家 ショスタコーヴィチは、
生涯に15曲の弦楽四重奏曲を残しました。
その中で、今も頻繁に演奏され、録音の数も最も多い第8番をとりあげます。
この曲は、彼自身が“自らの人生に捧げた曲”と語っている自伝的な作品。
なぜ、“自らの人生に捧げた”と語ったのか?彼の思いに迫ります。
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 第8番
旧ソ連を代表する作曲家 ショスタコーヴィチは、生涯に15曲の弦楽四重奏曲を残しました。その中で、今も頻繁に演奏され、録音の数も最も多い第8番をとりあげます。この曲は、彼自身が“自らの人生に捧げた曲”と語っている自伝的な作品。
なぜ、“自らの人生に捧げた”と語ったのか?彼の思いに迫ります。

自らの人生に捧げた曲

この曲は、5つの楽章を休むことなく演奏するおよそ20分の作品。
とりわけ大切なのが、冒頭に登場する4つの音です。レ ミ♭ ド シという4つの音は、ドミートリ・ショスタコーヴィチのイニシャルを表す暗号になっているからです。
この4つの音は、全ての楽章に登場し、この曲全体を貫いています。もう一つこの曲の自伝的要素を深めているのが、自作をはじめとする多くの引用です。自分の人生を振り返るかのように、多くの交響曲やオペラ、チェロ協奏曲などを引用しています。

ショスタコーヴィチの名前と音の関係を解説

ショスタコーヴィチの名前と音の関係を解説

レ ミ♭ ド シの4つの音がなぜ、ショスタコーヴィチの名前の暗号になるのか?
ドミートリ・ショスタコーヴィチの名前をドイツ語で表記するとDmitri Schostakowitschとなります。その中からイニシャルとなる4つの文字D S C H を抜き出します。ここにドイツ語の音名を当てはめると、D→レ C→ド H→シ はすぐに結びつきます。しかし、Sの文字に直接あてはまる音名はありません。 そこで、登場するのがミ♭という音です。
この音はドイツ語でEsと表記します。発音はエスとなります。ですからここが暗号っぽいのですが、EsのかわりにSを当てはめたというわけです。
スタジオでは、ゲストのロバート キャンベルさんや石田衣良さんの名前を音にあらわすとどうなるのかを、様々な工夫をこらして紹介しました。けっこうおもしろいメロディが生まれました。

3日で書き上げた魂の告白

この曲が誕生する背景には、ショスタコーヴィチと当時の政治権力との確執がありました。ショスタコーヴィチは、1936年にオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を巡って当時のソ連共産党から批判を受け、最高権力者スターリンの粛清の恐怖を味わっています。
この曲はスターリンの死後7年後、1960年の作品ですが、この時期彼には、当時の最高権力者フルシチョフから
共産党員になるよう圧力がかかっていました。スターリンの時代にも党員にだけはならずにやりすごしてきた
彼にとって、党員になることは最後のプライドまで奪われるという悲しい出来事だったようです。
旅先のドレスデンでこの悩みを吐き出すかのように作曲に没頭し、わずか3日であげたのが、今回ご紹介している弦楽四重奏曲 第8番なのです。

ゲスト

何かに耐えている、こらえている、忍んでいる音楽

何かに耐えている、こらえている、忍んでいる音楽

ロバート キャンベル(日本文学研究者) ロバート キャンベル(日本文学研究者)

ロバート キャンベル(日本文学研究者)

profile

近世・近代日本文学が専門
芸術やファッションにも造詣が深い

楽曲情報

弦楽四重奏曲 第8番から第4楽章
ショスタコーヴィチ
フォルクハルト・シュトイデ弦楽四重奏団
(弦楽四重奏)

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