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これまでの放送 2016年10月1日(土)の放送

偽作?傑作!誰の策?~「アルビノーニのアダージョ」~
オルガンと弦楽器が奏でる切なく感傷的な旋律の「アルビノーニのアダージョ」は、数々の映画やテレビ番組のテーマ曲にもなった名曲です。
アルビノーニは、バロック時代に活躍したイタリアの作曲家ですが、この曲の作者は、全く別の人物とも言われています。
いったい誰がどんな経緯でこの曲を作り上げたのか。バロックムードあふれる名旋律の秘密に迫ります。
偽作?傑作!誰の策?~
「アルビノーニのアダージョ」~
オルガンと弦楽器が奏でる切なく感傷的な旋律の「アルビノーニのアダージョ」は、数々の映画やテレビ番組のテーマ曲にもなった名曲です。
アルビノーニは、バロック時代に活躍したイタリアの作曲家ですが、この曲の作者は、全く別の人物とも言われています。
いったい誰がどんな経緯でこの曲を作り上げたのか。バロックムードあふれる名旋律の秘密に迫ります。

極め付き バロックの名旋律!?

極め付き バロックの名旋律!?

1960年代に公開された映画『審判』で観るものに鮮烈な印象を与えた曲「アルビノーニのアダージョ」。映画の公開とともに大ヒットとなりました。楽譜の出版は1958年。タイトルは、「アルビノーニによる2つの主題のアイデア、通奏低音に基づく弦楽とオルガンのためのアダージョ ト短調」、その傍らに、「レーモ・ジャゾット」と記されています。ジャゾットは、20世紀に活躍したイタリアの音楽学者です。彼によれば、第2次大戦で破壊されたドイツ・ドレスデンの図書館でバロック時代の作曲家アルビノーニの自筆譜の断片を発見し、それを元にこの「アダージョ」を作り上げた、とのことでした。

この曲が発表された当時は、空前のバロック音楽ブーム。イタリアでは、イ・ムジチ合奏団がヴィヴァルディの「四季」を録音して爆発的な人気を博していました。そんなブームのさなかに登場したのが、この「アダージョ」。忘れ去られた作曲家アルビノーニの再発見だとして、センセーショナルな話題となりました。多くの演奏家たちが競い合うようにこの曲を取り上げ、巨匠カラヤンも1969年に「アダージョ」を録音。以後、この曲は、映画やテレビなどで繰り返し使われ、クラシック音楽の中でも指折りの人気曲となったのです。

世紀の偽作か本物か?

人気の一方で、研究者たちが発表当初から投げかけてきたのは、「アダージョの元の作者は、本当にアルビノーニなのか?」という疑問。この曲を世に出したジャゾットは、自筆譜の断片を発見したというものの、その証拠を示そうとはしませんでした。専門家たちからは、様々な批判の声が上がります。研究者たちは、ドレスデンの図書館を調べましたが、ジャゾットの説明を裏付ける記録は見つかりません。謎は深まるばかり…。そうした中、2007年、ジャゾットの秘書だった女性が、新たな資料を提示します。アルビノーニの自筆譜を書きとめたというメモです。

また、ジャゾットは亡くなる数年前に、次のようなコメントを残しています。「私は、アルビノーニを忘却の淵から救いたかった。アルビノーニが書いた音楽を実際に聴けば、彼への関心が高まるだろうと思い、この曲を作りました。それは、私自身の純粋な楽しみでもあったのです…」。様々な議論を巻き起こしたこの曲を、皆さんはどう受けとめますか。

“バロックムード”の秘密

アルビノーニのアダージョには、バロック音楽っぽさを感じる工夫が施されています。心臓の鼓動のような低音のリズムと、対話をするようなメロディのかけ合いです。これは、バロック音楽によく見られる形です。
もし、この形を取り入れずに演奏するとどうなるか。例えば、モーツァルトのような軽快な刻みの伴奏をつけたり、また、優雅に華麗にラフマニノフのようなアレンジを施して比べてみて下さい。
低音のリズムと、対話をするようなメロディのかけ合いを取り入れることで、バロック音楽らしいムードが醸し出されることが実感できると思います。

ゲスト

一人の人間の孤独を歌いあげているような感じ…何となくジャゾットさんの気持ちがわかる気がする…

一人の人間の孤独を歌いあげているような感じ…
何となくジャゾットさんの気持ちがわかる気がする…

中江有里(女優・作家) 中江有里(女優・作家)

中江有里(女優・作家)

profile

数多くのTVドラマや映画に出演
コメンテーターとしても活躍中

楽曲情報

「アルビノーニのアダージョ」
アルビノーニ ジャゾット
大井 剛史(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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