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これまでの放送 2016年7月2日(土)の放送

すべてを注ぎこんで ~交響曲第3番「オルガン付き」~
オルガンの響きが特徴的な
サン・サーンス最後の交響曲。
そこにはサン・サーンスのある思いが隠されていたー。
すべてを注ぎこんで ~交響曲第3番「オルガン付き」~
オルガンの響きが特徴的なサン・サーンス最後の交響曲。
そこにはサン・サーンスのある思いが隠されていたー。

創作スイッチはオルガンにあり

「創作スイッチはオルガンにあり」

サン・サーンスがオルガンに出会ったのは、パリ音楽院に入学した頃。そして一流オルガニストの証とも言われるマドレーヌ寺院で首席オルガニストとしておよそ20年務めます。特に即興演奏の評判は高く、その名はヨーロッパ中に広まりました。サン・サーンスにとってオルガンは、創作意欲を刺激する楽器だったのです。そして50才の時、ロンドンの有名な音楽団体の依頼により作曲したのが交響曲第3番「オルガン付き」。19世紀になり、それまで主に教会にしかなかったオルガンが、次第に一般のコンサートホールにも設置されるようになりました。初演が行われたホールにも、すでにオルガンが入っており、さらにそのオルガンをサン・サーンスは演奏した経験があったのです。そこで思いついたのが交響曲にオルガンを入れるという画期的なアイデアでした。これまでの交響曲にはない、オルガンの音色が際立った作品は、大きな注目を集め、初演は大成功を収めたのです。

よみがえれ!フランスの交響曲

「よみがえれ!フランスの交響曲」

19世紀後半パリのコンサートをにぎわせていたのは、ドイツの作曲家のものばかり。特にベートーベンは“交響曲の神"として大ブームになっていました。フランスにも交響曲を手掛ける作曲家はいるもののヒットに恵まれないという状況。そして1871年フランスは普仏戦争で敗北。敗戦の悔しさから、フランス国内で自国の文化を盛り返そうという空気が生まれます。そしてその影響は音楽界にも及び、フランス独自の音楽を発展させるための「国民音楽協会」という音楽団体が結成されたのです。サン・サーンスは創設メンバーでした。フランスの作曲家たちの作品を広めるために力を尽くし、自身も、いつかフランス独自の交響曲を作りたいと思い続けていました。そんな中、不幸が彼を襲います。二人の子供の死、妻との別れ、さらに当時フランスで人気があったワーグナーをめぐりフランス国内で大きなバッシングを受けたのです。交響曲の新作依頼が舞い込んだのはそんな時でした。「この作品に私が注ぎこめるすべてを注ぎこんだ。」サン・サーンスが最後と語った交響曲は、フランス音楽史にさんぜんと輝く傑作となったのです。

めぐりめぐるメロディー

この作品には、全曲を通してあるメロディーがたびたび登場しています。
調を変化させたり、さまざまな楽器で奏でられたりすることで、印象を変えていくのです。さらに繰り返されるメロディーの一部が、リズムを変えながら次々に現れる箇所もあります。絶妙に変化を加えながらも、同じメロディーを繰り返し使うことで、曲に統一感を生み出しているのです。

ゲスト

オルガンの響きって、人間をふかんでみているような音ですね

オルガンの響きって、人間をふかんでみているような音ですね

森口博子(歌手) 森口博子(歌手)

森口博子(歌手)

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ポップスはもちろんアニメソングから
ジャズまで幅広いレパートリーで活躍

楽曲情報

交響曲第3番「オルガン付き」第2楽章から
サン・サーンス
円光寺雅彦(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

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