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これまでの放送 2016年5月28日(土)の放送

ブラームス「弦楽六重奏曲第1番」
ブラームスの「弦楽六重奏曲第1番」は特に第2楽章が有名で、
その情熱的なメロディーは映画でも使われ、多くの人々の心を
揺さぶった名旋律だ。当時、ほとんど作曲されることのなかった
「弦楽六重奏」というジャンルにブラームスが挑戦したその影には
彼が尊敬してやまなかった大作曲家からの重圧があった!
そして、この曲の背景に見える二人の女性とはいったい!?
ブラームス「弦楽六重奏曲第1番」
ブラームスの「弦楽六重奏曲第1番」は特に第2楽章が有名で、その情熱的なメロディーは映画でも使われ、多くの人々の心を揺さぶった名旋律だ。当時、ほとんど作曲されることのなかった「弦楽六重奏」というジャンルにブラームスが挑戦したその影には彼が尊敬してやまなかった大作曲家からの重圧があった!そして、この曲の背景に見える二人の女性とはいったい!?

未知の世界で見つけた個性

「弦楽六重奏曲第1番」はブラームスが27歳の時に書いた作品です。4楽章からなり、特に第2楽章が有名で、深く陰影に富んだメロディーは映画でも使われました。さて、この作品はバイオリンが2つ、ビオラが2つ、チェロが2つの計6つの弦楽器で構成された「弦楽六重奏」。この編成による楽曲は当時、ほとんど作曲されていませんでした。ブラームスはどうして、弦楽六重奏を書こうとしたのでしょうか?当時、室内楽の花形といえば 「弦楽四重奏」。ハイドン、モーツァルト、ベートーベンなど大作曲家が数々の名曲を遺してきたジャンルでした。偉大な作曲家たちが遺した作品以上のものを書こうとしたブラームス。しかし、そのプレッシャーが重くのしかかり、満足のいく弦楽四重奏を書き上げることが出来ませんでした。そんな中、若きブラームスが挑んだのが弦楽六重奏でした。弦楽四重奏にビオラ、チェロを加え、中低音の厚みが増した弦楽六重奏への挑戦は、ブラームスの音楽の持つ独特の魅力を引き出すことに繋がりました。

叶わぬ恋の果てに

ブラームスは生涯独身でしたが、長年にわたって思いをはせた女性がいます。大作曲家シューマンの妻、クララ・シューマンです。ブラームスの14歳年上にあたるクララは、当時、ヨーロッパ中にその名を轟かせた一流のピアニストで、ブラームスはそんなクララを一人の音楽家として敬う一方、一人の女性として恋心を抱き始めたのです。しかし、クララは人妻。ブラームスにとっては決して叶うことのない恋でした。24歳のブラームスは、クララの元を離れると、やがて2歳年下のアガーテ・フォン・ジーボルトという人目をひく美貌と、甘く美しい声を持つソプラノ歌手と恋に落ちます。クララへの叶わぬ恋とは対称的に、ブラームスはアガーテとの現実的な恋愛を始めたのです。しかし、二人の明るい未来は訪れることはありませんでした。「アガーテに自分の芸術活動について色々あれこれと話題にしてもらいたくない。心の支えのようなものをブラームスはむしろクララのほうに求めていって、アガーテに対しては、その心の支えになりきれなかったのではないか」と桐朋学園大学西原稔さんは推測します。アガーテと別れ、まもなくしてとりかかり始めたのが「弦楽六重奏曲第1番」でした。ブラームスの心の中には再び、クララへの熱い思いが沸々と沸き上がり始めていました。この「弦楽六重奏曲」を書き上げたブラームスは、第2楽章をピアノ曲に編曲し、クララの誕生日にプレゼントしたのです。

中低音で心に迫れ

「弦楽六重奏曲第1番」の第2楽章は冒頭から重厚なメロディーで始まりますが、なぜ、これほど人の心に迫るのか、作曲家の加羽沢美濃さんが解説します。メロディーをよく見てみると、レミファソラシドと、四分音符が階段を一段一段上がっていくように音が高くなっているのです。それによって、厳格さ、規則性のようなものが生まれ、人の心に迫っていくように感じるのです。また、ただ単純に上がるわけでなく、演歌の「こぶし」のように「ターラー、タララー」のタの部分が毎回下がり、念を押しながら上がっていくことで、武骨さ、生真面目さのようなものが生まれます。さらにこの冒頭のメロディーはビオラで始まりますが、次に繰り返される時にはバイオリンに受け継がれます。あえて低い中音域の楽器から始めることで高音域のバイオリンに渡された時に、より劇的にドラマチックに感じるのです。また、バイオリンの時にはビオラの時よりメロディー以外に出ている音の厚みが倍以上に増しています。ブラームスは弦楽六重奏の編成をうまく生かし、中低音の厚み、新しい音の魅力を開拓したのです。

ゲスト

「六人六色の演奏。色んな気持ちが複雑に伝わってきました!ブラームスの決意が見えた気がします」

「六人六色の演奏。色んな気持ちが複雑に伝わってきました!ブラームスの決意が見えた気がします」

野々すみ花(女優) 野々すみ花(女優)

野々すみ花(女優)

profile

元宝塚歌劇団 宙組トップ娘役
朝ドラをはじめテレビや舞台で活躍

楽曲情報

「弦楽六重奏曲第1番」第2楽章から
ブラームス
東京フィルハーモニー交響楽団

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