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これまでの放送 2016年4月16日(土)の放送

~レオンカヴァルロの「衣装をつけろ」~ 数あるテノールのアリアの中でも傑作中の傑作であり、
人気の「衣装をつけろ」。
イタリアの作曲家レオンカヴァルロを一躍有名にしたこの曲。
作曲のきっかけは、なんと殺人事件?! レオンカヴァルロが描いた
男の悲哀とは?
そこにはある驚きのアイデアがあった!
~レオンカヴァルロの「衣装をつけろ」~
数あるテノールのアリアの中でも傑作中の傑作であり、人気の「衣装をつけろ」。イタリアの作曲家レオンカヴァルロを一躍有名にしたこの曲。作曲のきっかけは、なんと殺人事件?! レオンカヴァルロが描いた男の悲哀とは?

男はつらいよ

「衣装をつけろ」は、イタリアの作曲家レオンカヴァルロのオペラ・デビュー作、歌劇「道化師」の最高の見せ場で歌われます。
 19世紀のイタリアでは、ヴェリズモ・オペラといわれるオペラが話題となっていました。ヴェリズモとは現実主義の事で、日常生活で起こる男女の愛憎劇、庶民が巻き起こす悲劇がリアルに描かれています。
歌劇「道化師」も、旅回りの一座に起きた悲劇。道化師を演じる座長のカニオは、妻の浮気を知り、絶望に打ちひしがれます。そんな時でも、お客を笑わせるために道化師を演じなければならない…、舞台に上がる前、カニオが歌うのが「衣装をつけろ」です。そして、道化師の妻が浮気をするという内容の芝居が進行していくうちに、現実との区別がつかなくなったカニオは妻を殺してしまうのでした。これまでも、数々のテノール歌手が名演を残して来た歌劇「道化師」は、ヴェリズモ・オペラの代表作として、歌い継がれているのです。

夢みるばかりじゃいられない

夢みるばかりじゃいられない

オペラ作家を目指していたレオンカヴァルロの憧れの存在は、ドイツ・ロマン派の巨匠ワーグナー。彼は「ワーグナーのようなスケールの大きなオペラを作るぞ!」と創作意欲に燃えていたのです。しかし、無名の新人作曲家の大作には、誰も見向きはせず、作品は認められないまま、34歳となっていました。
そんな時、自分よりも年下の無名の作曲家マスカーニが、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の成功で、一夜にして大スターとなるのを目の当たりにします。その内容は、男女の愛のもつれから殺人にいたる、現実主義のオペラ、ヴェリズモ・オペラ!
 「そうか、夢見るばかりじゃいられない!現実だ!」と気付いたレオンカヴァルロは、初めてヴェリズモ・オペラに取り組みます。父親が判事だったため、子どもの頃からよく耳にしていた庶民の事件。当時パリで流行していた「道化師が妻を殺す」という芝居やオペラ。それらを元にして、レオンカヴァルロは、歌劇「道化師」を、半年もかけずに一気に書き上げたのです。そして、初演は大成功! 夢見るだけでなく、現実を描き、現実を生きたレオンカヴァルロは、ついに名声を手に入れたのです。

悲哀の音符と休符

「衣装をつけろ」の魅力は、男の悲哀。それがどのように表現されているのか? まずは、「悲哀の音符」。それは、シャープがついて半音上がった音符。この音符があることで、メロディの中に、増音程という不安な雰囲気が漂う音の響きが出来ます。それが、道化師の乱れる心の内を表現しています。
 続いて、「悲哀の休符」。一番盛り上げる部分で、短い休みがあるのです。3連符という割り切れない長さの休みがあることで、ぐっと感情を抑え込む、そんな道化師の堪え忍ぶ心の内が表現されているのです。

ゲスト

「50歳、60歳の大御所の先生では無く、僕らの世代が作ったんだとびっくりしました。」

「50歳、60歳の大御所の先生では無く、僕らの世代が作ったんだとびっくりしました。」

田代万里生(歌手・俳優) 田代万里生(歌手・俳優)

田代万里生(歌手・俳優)

profile

1984年生まれ 東京藝術大学声楽科卒業
オペラ・ミュージカルなどで活躍

楽曲情報

歌劇「道化師」から 「衣装をつけろ」
レオンカヴァルロ
ジュゼッペ・モレルリ(指揮)、NHK交響楽団(管弦楽)、マリオ・デル・モナコ(テノール)
*イタリア歌劇団公演(1961年 東京文化会館)

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