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これまでの放送 2016年3月26日(土)の放送

雨音は天から落ちる涙の調べ 雨音で彩られた、ショパンの代表作「雨だれ」。
名曲誕生の裏には地中海で花開いた愛の物語がありました。
しかし甘いロマンスだけでは語れない、
作曲家ショパンのある壮大な野望がこの曲に
隠されていたのです!
「雨だれ」誕生の軌跡を追います。
雨音は天から落ちる涙の調べ
雨音で彩られた、ショパンの代表作「雨だれ」。名曲誕生の裏には地中海で花開いた愛の物語がありました。
しかし甘いロマンスだけでは語れない、作曲家ショパンのある壮大な野望がこの曲に隠されていたのです!「雨だれ」誕生の軌跡を追います。

愛と死の旋律

「雨だれ」が生まれた背景には、ショパンの恋人の存在がありました。恋人の名は女流作家のジョルジュ・サンド。ショパンとサンドが出会ったのは、パリのある夜会。しかしショパンのサンドに対する第一印象は良くありませんでした。
それもそのはず、二人の性格は正反対。サンドは周囲に何人もの男をはべらせているような、いわゆる"肉食系"の女性。一方のショパンは、病弱で繊細な心を持つ"草食系"の性格でした。しかしながら、そんな二人が出会いから一年ほど経ったところで急接近、恋人関係になります。ショパンの音楽に対する、サンドの深い理解と共感が二人の距離を縮めたといわれています。
そんな二人が地中海に浮かぶ島マヨルカ島へ逃避行。有名人カップルのスキャンダラスな噂で騒ぎ立てるパリから逃れること、そして病弱なショパンの静養も兼ねての長期旅行でした。しかし島に到着後、ショパンが持病の肺結核をこじらせてしまいます。サンドによる献身的な看病を受け続けるも、ショパンの病状は死の淵をさまようほど悪化してしまいました。
そんなある日、サンドはショパンを修道院に残して買い物に出かけます。しかし突然の嵐が島を襲い、サンドの帰りが夜遅くに。彼女が修道院に帰ると、一人残されたショパンは不安に苛まれながら作曲したばかりの曲を弾いていました。その曲こそ「雨だれ」なのです。「雨だれ」には愛するサンドと共に聞いた雨音、そして死の淵をさまよった時の雨音が刻み込まれていたのです。

前奏曲で創る小宇宙

ショパンのマヨルカ島への旅には、病の療養以外にも目的がありました。彼は島へ渡る数年前から、ある壮大な曲集の構想をあたためていたのです。それはショパンが最も敬愛していた作曲家、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」にヒントを得たもの。この作品は24ある全ての調性が使われた音楽史上初の作品でした。「平均律クラヴィーア曲集」を徹底的に研究していたショパンは、いつしか自分も24の調性全てを使った曲集を作りたいと考えるようになったのです。しかしながら、ショパンは単にバッハをまねるような作品にはしたくありませんでした。それぞれの調性の特徴を際立たせて、24の全く異なる表現を目指し、「24の前奏曲」として曲集にまとめあげようとしたのです。
マヨルカ島で死の淵をさまようほど肺結核が悪化してしまったショパンですが、なんとしても曲集を完成させるために作曲の筆を止めることはありませんでした。ピアノの詩人、ショパンのありとあらゆる音楽表現が詰め込まれた「24の前奏曲」。曲集の第15番として書かれた名曲「雨だれ」はそんな小宇宙の一角を成す、ショパン入魂の作品だったのです。

アメ~ジングな雨音!

「雨だれ」はA・B・Aという3つの部分から成る三部形式で書かれた曲です。「雨だれ」はその名の通り、雨音のように曲を貫いて鳴り響く連打音が特徴の曲。A、Bそれぞれの「雨音」を聴き比べてみましょう。Aの部分は変ニ長調で書かれ、優美な雰囲気を醸し出しています。Bの部分は嬰ハ短調で厳しい現実を表現しています。全く雰囲気の異なるAとBですが、使われている雨音はなんと同じ音なのです。そこにショパンの巧みな作曲技法がみてとれます。
そして「雨だれ」の自筆譜を見てみると、AとBのつなぎの部分で何度も書き直した跡があります。同じ雨音を使ってAからBへどうやって橋渡しをするのか、天才ショパンでも大変悩んだのですね。是非ショパンの熱い思いが込められた雨音と、つなぎの部分に注目して聴いてみてください。

ゲスト

「実はこの曲、弾いたことがあります!」

「実はこの曲、弾いたことがあります!」

長谷川初範(俳優) 長谷川初範(俳優)

長谷川初範(俳優)

profile

ドラマ 舞台で音楽家役を多数演じる
ニックネームは名前の読みから「ショパンさん」。

楽曲情報

『雨だれ』
ショパン
反田恭平(ピアノ)

profile

反田恭平(ピアノ)

第81回日本音楽コンクール第1位
現在ロシアを拠点に国内外で活躍中

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