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これまでの放送 2014年8月9日(土)の放送

魔性の女に魅せられて世界的に有名なこのオペラは、作られた当初、
あらゆる方面から反発を招く問題作だった。
その主人公カルメンが歌う名曲の誕生の背景に、
カルメンのような2人の女性がいたと言われている。
彼女たちとの間に何があったのか…
魔性の女に魅せられて
世界的に有名なこのオペラは、作られた当初、あらゆる方面から反発を招く問題作だった。その主人公カルメンが歌う名曲の誕生の背景に、カルメンのような2人の女性がいたと言われている。彼女たちとの間に何があったのか…

歌劇「カルメン」から ハバネラ「恋は野の鳥」
歌劇「カルメン」から ハバネラ「恋は野の鳥」

“野蛮なオペラ”の厚い壁

劇場が好きだったビゼーは、10代でオペラを書きはじめると、ありとあらゆるテーマに挑戦します。軽妙な喜劇や歴史もの、文学作品、東洋が舞台のもの…。しかしなかなか満足できず完成させた作品を破棄してしまうことも多かったといいます。そんな中で出会ったのがメリメの小説『カルメン』でした。なまめかし女に脱走兵、密輸人などが登場し、ありのままの感情をぶつけ合います。時には人間のずるさや醜さまでもがリアルに描かれるこの小説に、ビゼーはかつてない興奮を覚え、オペラ化に向け作曲に着手。彼の自信作「カルメン」が完成しました。ところが、劇場支配人は、「柄の良くない人物が舞台に多く登場し人殺しが行われるのは劇場の伝統に反する」と難色を示し、歌手やオーケストラなどからは演奏を拒否され、何とかこぎつけた初演の日、観客や批評家は「卑猥だ」、「不愉快だ」と酷評。「カルメン」は野蛮なオペラとされてしまったのです。ほどなくビゼーは病に倒れ、初演から3か月後「カルメン」の成功の十分な手ごたえを得ぬまま短い生涯を終えます。しかし、その音楽の豊かさやドラマチックな展開に感動する人々は日ましに増えていきました。ビゼーの自信作は今や世界の人々に愛されるオペラの定番となっています。

カルメンのような女!?

男たちを翻弄する魔性の女カルメン。オペラの中の見せ場のひとつが、彼女が歌うハバネラ『恋は野の鳥』。実は、この曲の誕生の背景に、カルメンのような2人の女性がいたと言われています。1人目は、ビゼーが27歳で出会ったセレスト・モガドール。小説家であり女優、そして歌手、さらに高級売春婦の肩書もありました。怠惰でなまめかしく、欲しいものは何としてでも手に入れる女性でした。ビゼーは、この不思議な女性に心ひかれ、彼女の家に入り浸るようになったある日、彼女が歌うハバネラ『エル・アレグリート』を耳にしました。2人目は、セレスティーヌ・ガリ・マリエ。「カルメン」のヒロイン役に抜てきされたオペラ歌手でした。生意気で人を食ったような演技もできる彼女は「カルメン」の雰囲気を持ち合わせていました。ビゼーが最初に作ったカルメンの歌が気に入らなかった彼女は、何と、ビゼーに曲の作り直しを要求。悩んだ彼の頭に浮かんだのは、かつてモガドールが歌ったハバネラでした。ビゼーは耳に残る旋律をたよりに『恋は野の鳥』を作曲。さらに自ら歌詞までも書き、この曲を完成させたのです。

男を誘う魔性のメロディー

カルメンが歌うハバネラ『恋は野の鳥』では、女性の妖艶さが見事に表現されています。その妖艶さがどのように生まれてくるのか。先ず注目すべき点は、ヒロインのパートのメゾソプラノ。オペラの中では、メゾソプラノが主役をやることは珍しいと言われ、高く軽やかな声ではない低めの声が、女性の妖しさやなまめかしさを醸し出すのです。

音楽的な工夫①「滑らかに誘い込む」 カルメンのパートには、音を滑らせながら上げ下げするポルタメントが使われています。試しに、ポルタメントを使わないで歌ったときの感じと比較してみてください。ポルタメントによって色っぽさや誘われるような感じが出ることがご理解いただけると思います。

音楽的な工夫②「ミステリアスに誘い込む」こぶしのような揺らぎを付けて半音づつ下がってくる旋律も、カルメンのパートに色気を持たせるポイントです。カルメンのこの旋律は短調ですが、実は、ほぼ同じメロディーを合唱が長調で歌っています。短調と長調、暗さと明るさの対比が、カルメンのミステリアスさをより際立たせています。

ゲスト

チラっと見せる情念とか本当のものに男は惹かれていく

チラっと見せる情念とか本当のものに男は惹かれていく

石田純一(俳優) 石田純一(俳優)

石田純一(俳優)

恋がテーマのクラシックに興味あり
オペラの迫力に圧倒される

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映画やテレビドラマなど幅広いジャンルで活躍中

楽曲情報

歌劇「カルメン」から
ハバネラ「恋は野の鳥」
ビゼー
ヴェローナ野外オペラ・フェスティバル2014

演奏:ヴェローナ野外劇場管弦楽団・合唱団
カルメン:エカテリーナ・セメンチュク
指揮:ヘンリク・ナナシ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ

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