これまでの放送 2014年6月7日(土)の放送
日本でも「遠き山に日は落ちて」「家路」など日本語詞のカバーで
長く愛されてきたこの曲
懐かしい気持ちにさせてくれるのには、ちゃんと理由があった!? いとしさと切なさと・・・
日本でも「遠き山に日は落ちて」「家路」など日本語詞のカバーで長く愛されてきたこの曲
懐かしい気持ちにさせてくれるのには、ちゃんと理由があった!?


刺激的!新世界


曲名にもある「新世界」とはドボルザークが見たアメリカのことです。19世紀後半のアメリカは産業が急速に成長した時代で、音楽の分野においても大きなオペラハウスがオープンしオーケストラが次々と生まれるなど活気に満ちていましたが、一方で演奏されるのはヨーロッパの音楽ばかりでアメリカならではの音楽を作る人材の育成は進んでいませんでした。そこで白羽の矢が立ったのが母国チェコの民謡や舞踊を取り入れた民族色豊かな音楽が世界的に評価を受けていたドボルザークでした。彼はアメリカに渡りますが、同国の巨大さと活気に大きな衝撃を受けます。また、作曲の指導をつとめることになっていたニューヨークの音楽学校で彼は黒人霊歌や先住民の音楽などアメリカ的な音楽に触れます。それらの刺激的な体験をもとに彼は1893年「新世界から」を発表したのです。
新世界で思う ふるさと

新世界アメリカに刺激を受けて書いた「新世界から」はアメリカ国民から喝采を受けたものの、中には「ただアメリカのモチーフを使っただけではないか」という批判を浴びせる者もいました。しかし、ドボルザークはそれに対し「これはチェコの音楽だ」と反論したのです。彼はアメリカ滞在中、ホームシックにかかっていました。チェコの小さな農村で幼い頃から音楽に触れあいながら生まれ育ったドボルザークにとってニューヨークの刺激的な生活は肌に合いませんでした。彼はたびたび近くの公園を訪れ、そこでハトを眺めていました。ハトは彼がチェコで大切に飼っていた動物。彼は公園のハトの姿に遠い故郷を重ねていたのかもしれません。アメリカにインスピレーションを受けた「新世界から」ですが、曲中にはチェコの民謡のリズムなどチェコらしさを感じさせるモチーフも見られます。彼の心はいつもふるさとにあったのです。
アレがいないと寂しくなるの

「新世界から」の中でも特に私たちに馴染みのある第二楽章。日本でも「家路」「遠き山に日は落ちて」など歌詞をつけてカバーされ長く愛されてきた曲ですが、この曲を聴くと誰もが郷愁を感じます。実はそう感じるのは、ある音のヒミツが関係していたのです。第二楽章のメインとなるメロディーは4番目のファと7番目のシが抜けたヨナ抜き音階で書かれています。ヨナ抜き音階とは世界中の民謡などで使われる音階で、日本では「赤とんぼ」「蛍の光」にも使われています。古くから民謡などで親しまれる音階が使われていることから、自然と懐かしい気持ちにさせてくれるメロディーなのです。
ゲスト


野々すみ花(女優)
今、目にするすべてが新世界
profile
元宝塚歌劇団 宙組トップ娘役。
現在は舞台やドラマ リポーターとして活躍。
楽曲情報
- 交響曲第9番「新世界から」第2楽章
- ドボルザーク
- 尾高忠明(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
(ヨナ抜き音階って)こんなにも切なくなるんですね!