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これまでの放送 2014年2月8日(土)の放送

仮装?奇想?名演奏! 20世紀前半を代表する天才バイオリニスト クライスラー。ウィーンのワルツの様式
を取り入れて作ったこの曲は世界的にヒットした。しかし彼は、作曲家としては非常
に奇妙なことをしていた…
仮装?奇想?名演奏!
20世紀前半を代表する天才バイオリニスト クライスラー。ウィーンのワルツの様式を取り入れて作ったこの曲は世界的にヒットした。
しかし彼は、作曲家としては非常に奇妙なことをしていた…

愛の喜び<
愛の喜び<

ワルツに乾杯

ウィーンに生まれたフリッツ・クライスラーは音楽好きの父親からバイオリンの手ほどきを受け、7歳でウィーン音楽院に入学。10歳のとき1等賞で卒業。フランス政府の奨学金を得て、パリ国立高等音楽院に留学し、ここでも1等賞を得て12歳で卒業。翌年からアメリカでデビュー。その後は、人にバイオリンを学ぶことは無かったといいます。世界を巡る演奏旅行で名声を手にしましたが、そんなクライスラーは、故郷ウィーンの人たちの誇りとも言える音楽ウィンナワルツをこよなく愛し、その特徴を取り入れたいくつもの作品を残しました。中でも特に人気が高かったのが「愛の喜び」です。彼自身のリサイタルだけでなく、当時の先端技術だったSP盤レコードに録音されたことなどにより、世界的なヒットとなったのです。

音楽家と批評家の闘い!?

クライスラーは、数々の名曲を残しましたが、自分のいくつもの作品の作曲者名を当初は、“昔の作曲家の作品"と偽って紹介していました。「愛の喜び」もそんな作品の一つでした。クライスラーが35歳の時、ベルリンで行ったリサイタルのプログラムに、彼は、「愛の喜び」を過去の作曲家ランナーの作品として載せ、一方の「ウィーン奇想曲」は、事実通り自作曲として載せました。すると当時の著名な批評家がクライスラーに対し、「ランナーの名曲と自分の作品を並べるとはずうずうしい!」と非難しました。これに対しクライスラーは、「自分の曲だ!」と告白しましたが、批評家たちは彼の話を信じませんでした。しかしその後、クライスラーが一連の作品についての偽装を認め、自分の作品であるという事実を公表したため、彼の行動の是非をめぐって大騒ぎになりました。クライスラーは、自分の音楽を先入観なしに、正当に評価して欲しいと願っていたのかもしれません。

ようこそ!ウィーンへ

「愛の喜び」は、ウィーンの薫り満載の曲です。この曲には、いわゆるウィンナワルツの特徴が取り入れられていますが、ポイントはリズムです。例えば、ピアノの伴奏は、均等な3拍子「ズンチャッチャー、ズンチャッチャー」ではなく、2拍目をわずかに先取りして、3拍目までの間に少々ためをもたせて「ズチャッ…チャー、ズチャッ…チャー」という感じに演奏すると、ウィンナワルツらしいリズムが生まれます。同じ伴奏を、均等な3拍子で演奏すると、その違いが解ると思います。また、バイオリンの後を追うように、ピアノがよく似たメロディーを返し、再びバイオリン、そしてピアノ…と互いにかけ合うところは、ひと組の男女がワルツを踊っているような、対話しているような光景が目に浮かぶパートでもあります。

ゲスト

紺野まひる
(女優)

紺野まひる(女優) 紺野まひる(女優)

楽曲情報

愛の喜び
クライスラー
奥村 愛 (バイオリン)
加藤 昌則 (ピアノ)
バイオリン 弓

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