これまでの放送 2013年12月14日(土)の放送
ベートーベンのよろこびが音楽に結実した傑作「第9」
歓喜の歌にこめられたさまざまな思いに迫る たどり着いた“よろこび
ベートーベンのよろこびが音楽に結実した傑作「第9」
歓喜の歌にこめられたさまざまな思いに迫る


よろこびを探して
ベートーベンが「第9」を書き上げたのは1824年、53歳のとき。歌詞に使われたのがシラーの詩「歓喜に寄せて」です。青年期、フランス革命の「自由・平等・博愛」に共感したベートーベンはこの詩にフランス革命の精神を見出し、いつか音楽にしたいと心に決めます。しかしフランスはナポレオン専制国家となり周辺国を攻撃。ベートーベンは傷つき、シラーの詩も作曲することなく時が過ぎました。50代になり、合唱曲の大作「荘厳ミサ曲」を手掛けた彼は、歌声の持つ力を実感し、交響曲に合唱を取り入れることを思いつきます。今こそシラーの「歓喜に寄せて」を歌おう!ベートーベンが歓喜に辿り着いた瞬間でした。
究極の歓喜!
シラーの詩「歓喜によせて」からベートーベンが「第9」の歌詞に使ったのは、およそ3分の1。エッセンスを抽出し、大事な言葉を繰り返し使ったのです。詩の中でもっとも多く使われている2大フレーズにあてられたメロディーは「歓喜の主題」と「抱擁の主題」と呼ばれるもの。2つのメロディーはやがて同時に流れ、より歓喜を際立たせます。歌詞においても2つのメッセージを同時に歌い、歓喜がどんどん広がっていくのです!
歌いたい!日本人の第9魂
老若男女問わずアマチュアが合唱する参加型「第9」。そのはじまりは太平洋戦争のときに遡ります。戦地に赴く学生たちの壮行会で自主的に「第9」が演奏されたのです。彼らにとって「第9」は戦時下を生き抜くための音楽だったのでしょう。戦後復興とともに、大都市を中心に「第9」演奏会が行われはじめますが、演奏会の数は多くはありません。それなら自分たちで歌おう!と大勢の人々が集まり、東京で大規模な参加型「第9」が実現。それをきっかけに市民合唱団の「第9」を歌う会が次々誕生しました。よろこびとともに「第9」を歌える、そんな時代になったのです。
ゲスト
石野真子
(歌手・女優)


楽曲情報
- 交響曲第9番 第4楽章から
- ベートーベン
- NHK交響楽団(管弦楽)
ズービン・メータ(指揮)
東京オペラ・シンガーズ(合唱)

