― 「熊本空港民営化構想」ってなに? ―

国土交通省は、熊本空港を3年後の2020年に民営化する方針を決め、ことし6月末に募集に向けた「基本的な枠組み」を公表しました。

九州では、福岡空港でも民営化に向けた準備が進められているほか、広島空港や新千歳空港など全国各地の地方空港でも準備や検討が進められています。

そもそも、この「空港民営化」。
空港に、そして地域に、どんな変化をもたらすのでしょうか?
(平成29年11月作成) 

― 「民営化」で、空港はどう変わるの? ―

空港民営化とは、
国が滑走路を所有したまま、運営業務の多くを民間企業に任せるものです。

熊本空港は現在、
滑走路などの設備は国が管理し、国内線と国際線のターミナルビルは、県などが出資する第3セクターが運営しています。

これに対して「民営化構想」では、
飛行機の離着陸に関する管制業務は、引き続き国が担うものの、滑走路や空港ビルなど空港の運営業務の多くを、すべて同じ民間企業に運営を任せます。

このように、民間主体で全体的な運営を行うことで、効率化を図るとともに、
活性化につながるチャンスを狙う
ものなんです。

― 民営化構想 きっかけは「熊本地震」 ―

この「民営化構想」。なぜ今、熊本空港に持ち上がっているのでしょうか?

きっかけは、去年の「熊本地震」です。
一連の地震で、熊本では観光などの地域経済にも大きな被害が出て、依然その影響は続いています。
そこで、地震の前よりも熊本を発展させる『創造的復興』を掲げる熊本県は、
復興の象徴の1つとして、交通と物流の拠点である熊本空港の活性化に注目したのです。

熊本空港は年間300万人余りが利用し、1万6000トン余りの貨物取扱量がある、
全国的にも主要な空港です。県は、九州の中央に位置するという地の利からみても、
熊本空港は大きな潜在力を秘めていると考えていて、
民営化によって国の内外からヒトとモノを呼び寄せ、最終的に地域全体の活性化を目指す構想を描き、
実現に向けて国に働きかけてきたのです。

― 全国初! 新空港ビルを設計段階から民間に ―

また全国で初めての取り組みとして、
老朽化が進む旅客ターミナルビルの建て替えについて、空港運営を担う民間企業に設計段階から建設工事、そして完成後の運営まで、一貫して任される点も、熊本空港の民営化構想の特徴です。

実は、これも熊本地震が背景です。
熊本空港は、旅客ターミナルビルなど施設が大きな被害を受けました。
これまでに応急的な修復工事は終えましたが、老朽化が進むなか十分な耐震性の確保が課題です。

そこで、新しいビルの建設を民間企業に任せることで公費の負担を減らすとともに、
企業側にとっても自前の資金で使い勝手のよい空港ビルにして、収益の確保につなげるという、
いわば『一石二鳥』のメリットを狙う仕組みを取り入れたのです。

― 利用者へのメリットは? ―

このように、熊本地震からの復興をにらんだ「戦略性」をもった空港民営化構想。
利用者にとっては何がメリットなのでしょうか?

まず、就航する路線や便数が拡大される可能性が高まります。
ポイントとなるのが、航空会社が空港側に支払っている『着陸料』です。
民営化すれば、それまで国の基準で決まっていた着陸料を、空港の運営会社が
自由に設定できるようになります。新規路線の就航や増便を考えている航空会社に対して、
独自の判断で着陸料を引き下げてアピールすることが可能になるのです。

もう一つは「空港自体の魅力度アップ」です。


仙台空港の“市民ランナー向け”施設

去年7月に国が管理する全国の地方空港の中で初めて民営化された、宮城県の仙台空港では、この春に大規模な改修が行われ、飲食店や観光案内所が増えたほか、シャワールームや更衣室、ロッカーを有料で使える施設もオープンしました。
実はこの施設、搭乗客だけをターゲットにしたものではなく、空港周辺をランニングするいわゆる“市民ランナー”の取り組みを狙ったものなのです。
搭乗客以外にも、「気軽に空港に立ち寄ってもらえるような施設」を拡充させることで、新たな収益の確保を狙っています。

空港の運営会社が航空会社に対しても、また利用者に対しても、
いかに魅力的な施策を打ち出せるかどうかが、民営化空港の「成長のカギ」といえそうです。

― 民営化実現へのスケジュールは? ―

では、「空港民営化」実現に向けて、今後どのように進んでいくのでしょうか?
国は今回の「基本的な枠組み」で、民営化の実現を3年後の2020年4月ごろ、新たな空港ビルの運用開始を6年後の2023年3月までと、具体的な時期を初めて示しました。

国はこの「枠組み」を基に、ことしの夏、運営に関心を持つ民間企業から意見や提案を募る『市場調査』を行いました。その結果を踏まえて、来年1月ごろに計画をより具体化した『民営化の実施方針』を公表することにしています。その腕来年3月ごろには『募集要項』を公表し、2年後の2019年3月ごろには、運営企業の候補が選ばれる見通しとなっています。

― 地元経済界、参入の可能性は? ―

空港民営化への『ゴール』が示されたことを受けて、
今後の焦点は「熊本空港の運営に魅力を感じる有力な民間企業が現れるか?」です。

ことし8月初めには、広く運営への参入に関心を高めてもらおうと、県が熊本空港の施設見学会を開き、東京や福岡などから100社を超える企業が参加。その後熊本市内で開かれた説明会でも、会場が満席となる200人が参加し、蒲島知事自ら会場で熊本の魅力を売り込みました。

「空港民営化」には、地元・熊本の経済界でも「経済復興」の原動力にしようと関心が高まっていて、6月には熊本経済同友会が県側に空港民営化に関する提言をしています。
ただ、新たな空港ビルは、現在分かれている国内線と国際線用を一体化したものとなる見通しで、民営化を担う企業は、「一定の資本力」や「大規模な施設の運営ノウハウ」などを持っている必要があります。
こうした条件のなかで、空港の運営企業を決めるにあたっては、県内の資本力をどう組み合わせていくかも焦点といえそうで、今後、国のほか「熊本地震からの復興の象徴の1つ」にしたい県や経済界も交えて、動きが活発化していきそうです。

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