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NHK熊本WEB特集 クマガジン

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  3. 企業が学ぶ水俣の教訓

今回取材したのは、東京に本社がある大手企業の社員研修です。
全国に展開している物流会社で、熊本に特別なゆかりがあるというわけではありませんが、
水俣病をテーマに研修を行っています。
なぜ水俣を学ぶのか。取材してきました。
(NHK熊本放送局アナウンサー 佐藤茉那)

企業からみた水俣の教訓

東京に本社がある大手物流会社です。

20代~30代の若手社員が全国から集まっています。
これは次世代の経営幹部を担う企業リーダーを育成するための研修です。

テーマのひとつが「水俣病」。

ホワイトボードにびっしりと書かれたメモ

原因企業チッソと地元の人たちが水俣病とどう向き合ってきたのか。
難しい問題を考えます。

(参加者)「水俣病っていうのが遠い存在っていうか」

(参加者)「最終的に原因でしたっていうふうに公表された企業があそこでまだやっているわけではあるので。それの意味みたいなものも含めて我々としてどう向き合うべきなのか」

企業の生産活動が原因となった水俣病を学ぶことで、
一企業が担う地域での役割や社会的責任などを考えます。

NXホールディングス(株) 人財戦略統括部 岡本匡史次長

「将来のリーダーを育成するということで、意思決定をするときにいろんな人が関わりますよね。そこでどう考えるかということが課題になっていますので、社会学のなかでの1つの事象・事例というようなところでは(水俣は)非常に重要な1つなのかなというふうに私は思っています」。

現地で見て学ぶ

参加者たちは、2泊3日で水俣を訪れました。

研修に参加する社員

「やっぱり本とかあるいは映像とかで、水俣病の概略みたいなものはある程度わかっているつもりではあるんですけれども、やっぱりそれだけでは語れてないというか、わからない部分。
そういうところをなるべく知れたらいいなっていうふうに思っています」。

歴史を感じられる場所をめぐっていきます。

この日訪れたのは、当時、チッソが水俣病の原因となったメチル水銀を流した排水口です。

排水口

(水俣ガイドの男性)
「廃液がずっと排水路を流れてここに到達しています。
ここから排水された水銀はずっと海の方にここから流れていった」。

研修では、水俣病資料館も訪れ、
参加者たちは、原因企業と地域社会の関わりなど水俣病の実態を伝える展示に見入っていました。

そのほか、県や国の研究機関など、行政側からも水俣病について説明を受けました。

資料館の展示

地元の人の声にも耳を傾けました。

家族がチッソに勤めるなかで、長年、患者を支援してきた藤本壽子(ふじもととしこ)さんです。
現在は、水俣市議会議員もつとめています。

(藤本壽子さん)
「企業が一つ道を誤っていくときどれほどの犠牲を負わすことになるか」。

(参加者)
「我々企業側の人間であるので、やっぱり企業として今後どういうふうにあり方が必要なのかっていうのを」。

「JNC・チッソにある意味世話になってるところもあるけれども、でもそこでズブズブになっちゃいけないし、それ以上の被害を自分たちは受けて、親も子も狂い死にしましたとかいうのを抱えているからこそ(患者は)闘わざるをえなかったわけですよね。そこでやっぱりしてはならないこと、企業がしてはならないということを私は自ら訴えて(患者は)闘われたんじゃないかなって」。

研修に参加する社員

「まだ整理ができていないですね。それはこれからチームなり、今日一緒に参加した皆さんと考えていければいいなと思っています」。

現地で暮らす人たちの思いに触れ、一人ひとりが水俣と向き合う時間をすごしました。

自分なりの答えを導きだす

水俣から戻ってきた参加者たち。
それぞれが学んだことを共有する報告会が開かれました。

「今回フィールドワークを通じて、そもそもこのフィールドワークに行く前の水俣病に対する見方が、すごく単純すぎたなっていう反省があって。
今回行ったことでその複雑さに非常に我々も驚いた。歴史の教科書で一行で表れる水俣病の話っていうのは本当に表面上でしかないと」。

「やはり我々通常ですね、業務を行っていると、やはり目の前のことであったりとか起きている事象というところに目が行きがちかなというふうに思います。
いま起きている表面上の問題は、これが本当に問題なのかっていうのをちゃんと考えないといけないかなと」。

報告会では、水俣にも詳しい批評家の若松英輔さんに講評をもらいました。
 

若松英輔さん

「皆さんの言いたいことは伝わってくる。人を忘れない。自分の弱さを自覚する。過ちを認める。止める決断に勇気を持つこと。本当にそうだと思うんですよ。とても大事。我々が本当に未来に進んでいこうと思うんだったら、過去を消すんじゃなくて、そこと向き合って、その今まで顕在化していなかった問いすら、掘り返していかなきゃいけないんだと」。

研修を終えて、参加者は。

「実際に経験することって大事なのかなって。特に想像しづらい事象とかに対しては、やっぱり行ってみないと。やってみないとわからないこともいっぱいあるんじゃないかなと思いましたね」。

「利便性を求めたことによって苦しんでいる人たちがいる。
(水俣病を)教訓に自分たちがどう考え、生活していくのかというところは改めて考えていかないといけない」。

取材後記

 

複雑な問題で言語化しづらい部分も多かったと思いますが、
参加した社員のみなさん、各自で感じ取ったことをそれぞれのことばで表現していたほか、
水俣の教訓を”物流会社に勤める自分の立場”とつなげて考えていました。

例えば、ものを届けるときによりよいサービスを提供しようとすると、携わる人・ドライバーの長時間労働につながってしまう。企業活動のプラス面、マイナス面のバランスも慎重に考えなければいけないと感じたという声もありました。

さらに、今回取材したのは水俣の研修でしたが、
この会社では、ほかにもいろんな社会問題について考えていらっしゃいました。
そういった答えがすぐに出ない問題を考え続ける力や、自分たちの心で感じ取ったことを大事に、
企業リーダーとしてのあり方を学んでいくということです。

(NHK熊本放送局アナウンサー 佐藤茉那)

  • 佐藤茉那

    熊本局アナウンサー

    佐藤茉那

     神奈川県横浜市出身
    2020年入局 初任が熊本
    定時ニュースや中継リポートを担当

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