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NHK熊本局 アニメ「しゅわわん!」展開催レポート

  • 2024年01月09日

「手話のある暮らし」を伝える展覧会

手話(日本手話)は、手や指、顔の動きを使って表現する、日本語とは異なる独自の文法体系を持つ言語です。近年、手話を題材にしたドラマや映画、アニメが数多く発表されています。2023年はNHKでもろう者の父と聴者の娘のホームコメディ「しずかちゃんとパパ」や、手話通訳士が主人公のミステリー「デフ・ヴォイス」が放送されました。
テレビ画面やスクリーンの中だけではなく、ろう者や手話を話す人たちは現実に暮らしています。熊本県内で障がい者手帳を所持している聴覚障がい者は約8800人。そのご家族も含めれば、手話をことばとして暮らしている人はもっと多くいることになります。

NHKで2023年に放送したアニメ「しゅわわん!」。その原作者で、写真家・文筆家の齋藤陽道(さいとう・はるみち)さんも、熊本で手話をことばとして暮らしている人のひとりです。齋藤さんの妻のまなみさんもろう者、2人の息子は聴者で、家族は手話で会話をしています。アニメ「しゅわわん!」は、齋藤さんの育児日記が題材となっていて、一家の手話のある生活と、子どもたちの「ことば」の成長がユーモラスに描かれています。アニメで主人公はるみちの心の声を演じるのは、俳優の窪田正孝さんです。

NHK熊本局では2023年11月25日(土)から12月10日(日)、 アニメ「しゅわわん!」展~手話のある暮らしと熊本~を開催。1500人余りの方にご来場いただきました。アニメの原作となった齋藤陽道さんの育児日記や写真作品を展示し、より多くの人に「しゅわわん!」の魅力を伝え、アニメで描かれているような「手話のある暮らし」やろう文化の世界に触れる機会にしていただきたいと企画しました。この記事では、会場に展示した齋藤さんご自身によるキャプションを紹介しながら、会期中の展示の様子をお伝えします。

開催概要
NHKアニメ「しゅわわん!」展~手話のある暮らしと熊本~
主催 NHK熊本放送局
会期 2023年11月25日(土)~12月10日(日)
会場 NHK熊本放送局1階

220インチモニターで「しゅわわん!」本編を上映

展覧会の会場はNHK熊本放送局1階。入口から入ってすぐの220インチモニターでは、アニメ「しゅわわん!」1話~10話を上映しました。齋藤さんの育児日記の雰囲気そのままに、やさしいタッチと色づかいで繊細に手話を表現したアニメーションは、大画面で見るとキャラクターたちの顔や手の表情などがより鮮明に感じられました。

「手話によるメッセージ・作品解説」の上映

会場内では齋藤さん出演の手話によるメッセージ・作品紹介を上映しました。こちらは今回の展覧会のために撮影したもので、齋藤さんがご自身のことばとして大切にしている手話でお話しいただきました。

(齋藤陽道さんのメッセージより)
アニメ「しゅわわん!」でも描かれている、手と目で、そして全身で伝え合う「見ることば」の世界を知って、ろう者の世界や手話のある生活について、感じてもらえるとうれしいです。それではゆっくりとご覧ください。

齋藤さんの育児日記がアニメになるまで

齋藤さんが2018年から描き始めて今や19冊目になったという育児日記。ふだん執筆の際に使っている鉛筆と消しゴムも一緒に展示しました。

ノートの表紙には息子のいつきさんとほとりさんの年齢や二人のイラストが書き込まれています。使い込まれた小さな鉛筆とともに、齋藤さんがご家族と過ごしてきた時間も感じられました。
 

アニメ1話~10話のもとになった22のエピソードの育児日記をパネルにして展示しました。マンガを描き始めたきっかけを、齋藤さんはこう語っています。

(作品のキャプションより)
子どものことばの成長を、始めは文章で記録していました。でも日毎に成長して、複雑になっていく手話表現を文章で残すのが大変になってきました。手の形や動き、うつりかわる表情、文章ではとても書ききれません。
困っていたところ、ふと「マンガなら、手の形も表情もいっぺんで表現できるのではないか」と思いました。マンガは書いたこともなかったのですが、下手でもいいからとにかく残すことが大事だと思って始めました。それがこうしてアニメになるとは、夢がありますね。

会場入口近くの大画面モニターで上映されているアニメは、齋藤さんが真っ白なノートに鉛筆と消しゴムで描き始めた日記から始まったもの。齋藤さんが家族とことばを交わしてきた日々の個人的な記録は、今やアニメになって多くの人に伝わっています。

「しゅわわん!」な家族の日常を、さまざまな表現で

熊本局1階スタジオ内では、アニメにちなんだ「手話のある暮らし」を題材にした齋藤さんの作品を展示しました。

「ぼくの家族」のコーナーでは、齋藤さんが撮影したご家族の写真や熊本日日新聞で連載している「おはようと今日も手は」の記事、アニメにはなっていない日記の一部を壁一面に並べました。齋藤さんの写真家としての作品あり、文筆家としての作品あり、さまざまな形で手話でおしゃべりする家族の日常を味わえる、盛りだくさんの展示になりました。
 

それぞれの写真には齋藤さん直筆のことばを添えていただきました。家族を思う祈るような文章は、ことばを大切にされてきた齋藤さんだからこそのやさしさに溢れていました。

「手話を話す人」をテーマにした写真作品

「MY NAME IS MINE」は齋藤さんが写真家としてのキャリアをスタートさせたばかりの頃の作品です。街のなかにいるろう者の写真と、手話で自分の名前を表している同一人物の写真を左右に並べています。自分のことばで自分の名前を語るろう者の姿に引き込まれていくような感覚が表現されています。

 

「働くろう者を訪ねて」は、齋藤さんが熊本に移住した後、2021年から発表し続けているシリーズです。熊本や九州の各地に住んでいる、働くろう者12人の写真を展示しました。画家、牧師、八百屋、料理人…さまざまな職業のろう者の方たちが、何かを訴えるようにこちらを見つめています。

(作品のキャプションより)
若いろう者たちたちや、聞こえない子どもの周りにいる大人たちに、手話をことばとして働いている多様な職業のろう者の存在を伝えたい。この思いが作品のきっかけです。

写真の隣では、それぞれの働くろう者の映像も上映しました。3分の映像には、音声も字幕もテロップもありません。

(作品のキャプションより)
たとえ手話がわからなくても、見て、感じてみてください。
「こういう表情で話す人なんだなあ」と知ってもらった上で、もう一度写真を見てもらうと、きっと見え方が変わると思います。

写真家としてこれまで手話を題材にした作品を制作してきただけでなく、日常的に手話でお話ししている齋藤さんだからこそ表現できる作品だと感じました。

「齋藤陽道の熊本」

齋藤さんが熊本で暮らしながら撮影した写真も展示しました。迫力のある大きなプリント作品からは、熊本の自然の雄大さが感じられました。

(作品のキャプションより)
ぼくたち家族が熊本に引っ越してきて3年が経ちました。
熊本を選んだのは、阿蘇市にある草千里ヶ浜にほれこんだからです。鳥取県の鳥取砂丘が植田正治さん(写真家)を連想させるように、「熊本の草千里ヶ浜は齋藤陽道」と思われるくらいにここで作品を撮っていきたいなと思っています。

阿蘇の草千里ヶ浜や宇土の海、熊本局からもすぐ近くの江津湖まで、齋藤さんの作品は見慣れた熊本の風景を全く違うもののように感じさせます。多くの方が足を止めてじっくり鑑賞していました。

展示のラストは齋藤さん直筆イラストとメッセージ!

展示の最後を飾るのは齋藤さんの直筆イラスト。「ありがとう」の手話をする齋藤さんとご家族のイラストを描いていただきました。

お越しいただいたみなさんから寄せられたメッセージで、真っ白だった壁がこんなに賑やかになりました。いただいたメッセージはすべて、会期終了後に齋藤さんにお渡ししました。
会場にお越しいただいた方に、少しでもアニメ「しゅわわん!」の魅力、そしてろうの世界や手話のある暮らしを感じていただけていたら幸いです。改めてお越しいただいたみなさん、ありがとうございました!

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