幻のかんきつ “くねぶ” 村の特産品に
- 2023年11月20日

熊本の豊かな食材や郷土料理を映像でつづる「熊本 食の映像詩」
五木村では幻のかんきつと呼ばれる「くねぶ」が栽培されています
村に伝わる幻のかんきつ「くねぶ」
「くねぶ」は東南アジア原産のかんきつ類で、室町時代に五木村に伝わったとされます。気品のある香りと甘みが特徴です。11月初め、五木村の山あいにある畑では、大きさ5~6センチほどの黄色く色づいた「くねぶ」がたくさん実り、岡本正さん(77歳)が1つずつ丁寧に手でもぎ取っていました。五木村では昔から「くねぶ」が各家庭の庭先に植えられ、子どものおやつや酢の物などの料理に使われるなど、親しまれてきました。


「くねぶ」を村の特産品に
五木村の人々にはなじみ深い「くねぶ」ですが、村内では「くねぶ」を販売のために栽培する人はいませんでした。こうしたなか、五木村生まれで村役場に勤めていた岡本さんは、20年前から本格的に「くねぶ」の栽培を開始しました。「くねぶ」の栽培が、五木村の村おこしにつながればとの思いからでした。


五木にある物で土産物ができないかと調べたら、「ゆず」はどこにでもあるので「くねぶ」なら昔から五木にしかないので、やってみようと始めました。
動物の食害を乗り越えて
岡本さんは私費で村内に土地を借り、苗を植え、たった1人で「くねぶ」の栽培を始めました。最初の数年間は、新芽を鹿やウサギに食べられるなど苦労をしましたが、防護ネットを張るなどの対策を施すことで「くねぶ」も順調に育ち、6年目にして初めて「くねぶ」の実を収穫することができました。現在は50アールほどの農地に約50本の「くねぶ」の木が育ち、黄色く色づいた実がたわわに実るようになりました。岡本さんのこだわりは、できるだけ農薬を使わずに栽培することです。落ち葉を拾い集めて「くねぶ」の幹のまわりに敷き詰めるなど、手入れも欠かしません。


土の保湿対策と肥料にするために落ち葉をまいています。
落ち葉を入れると土が軟らかくなるので、根が伸びやすくなる効果もあります。
ついに村の特産品に
その後、岡本さんの「くねぶ」が道の駅で販売されるなどして、村内でも「くねぶ」への関心が高まっていきました。そして8年前からは村が希望者に「くねぶ」の苗を配るなど、村を挙げて特産品としての栽培を奨励しています。現在、道の駅では「くねぶ」を使ったゼリーやケーキ、それにお酒など約10種類以上の加工品が販売され、村を代表する特産品となりました。


これからの夢は、くねぶをさらに多く栽培して、五木村の特産品として全国に売り出したいです。
動画はこちら
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