TSMC熊本進出⑤台湾企業の住宅探しに同行してみた
- 2023年05月16日
TSMC熊本進出⑤ 台湾企業の住宅探しに同行してみた
台湾の世界的な半導体メーカー、TSMCの工場建設が急ピッチで進む熊本。
ことしの夏以降、台湾から駐在員や家族600人余りが、熊本へやってきます。
関連企業も進出するなか、課題となっているのが「住まい探し」です。
台湾の企業はどうやって住宅を探しているのか、同行することにしました。
浮かび上がってきたのは「相場の高騰」、「風水など文化の違い」、そして数千万円の購入を即決する「スピード感」でした。
(熊本放送局 記者 馬場健夫)
(2023年5月11日放送動画はこちら)
台湾から企業進出の動き相次ぐ
4月、熊本市で開かれた商談会。
半導体関連を中心に、台湾と熊本の企業など計41団体が参加しました。
TSMCが進出する熊本に、台湾企業から高い関心が集まっていました。
進出に向け視察に訪れた台湾企業
4月、熊本での拠点設置に向けて、TSMC工場の工事現場など現地の視察に訪れた企業があります。
台湾の半導体関連企業の工場長、呉勁毅(ご・けいき)さんです。
TSMCの工場は、2024年12月までに操業予定です。
呉さんは、それにあわせて来年、熊本に社員寮と事務所を設置する計画です。
日本への留学経験を生かして、自らその場所を探しに来ました。
台湾の半導体関連設備メーカー 呉勁毅 工場長
「感動ですね。台湾のTSMCと同じで、大きい企業が短い時間にできて、すばらしいですね。初めて熊本のTSMCの工場に来て、心配よりも期待の気持ちがいっぱいあります。わが社はどんどんTSMCとともに成長していきます。日本に投資することで、今後、日本企業とも商売することを期待しています」
呉さんの会社は、従業員が約150人。
半導体工場向けのガス処理設備を作っています。
熊本ではTSMC向けに、設備のメンテナンスを行う予定です。
課題は「住まい探し」
熊本進出で課題となっているのが、台湾から来る駐在員の「住まい探し」です。
この日は社員寮を探すため、不動産業者などと、建て売りの住宅や、土地を見て回りました。
県によりますと、熊本ではTSMC向けだけで、約1000戸の住宅が必要になると見込まれています。
加えて関連企業の進出も相次ぎ、住宅や土地の獲得競争が激しくなっているのです。
物件が限られるなか、地元の不動産業者にはオファーが相次ぎ、相場が高騰してきているといいます。
熊本市の不動産業者 ランドフォーメーション 中川ますみさん
「去年ぐらいから台湾のお客様が増えていて、来週もいらっしゃいます。土地の価格、相場も2倍以上。もう相場じゃない金額で取り引きされている。いま本当にいいバブルにさしかかっている」
一方で、懸念していることもあるといいます。
「相場じゃなくなってきたので、一般の方が買えない値段に、つり上がってきたかなと思います。ビジネスチャンスではあるんですけど、新築の値段も上がってくるので、その辺は今後、見ていきたいと思います」
文化の違い 「風水」
住まいを探すなかで、浮かび上がってきた問題がありました。
1つ目が「文化の違い」です。
台湾では商売や住まいで、「風水」を重視する人が少なくないといいます。
台湾の半導体関連設備メーカー 呉勁毅 工場長
「トイレが部屋の真ん中、中心にあるのは、ちょっと気になる」
「道路のつきあたりにある家は、あまりよくない」
呉さんは、風水の観点から、土地の形や間取り、周辺の環境を、念入りに確認していました。
不動産業者は、文化の違いへの対応が一つの鍵だと考えています。
熊本市の不動産業者 中川ますみさん
「風水を一番に気にされるので、日本の文化とは全く違うものだと思って、話をしています」
交通渋滞が問題
さらに2つ目の問題は「交通渋滞」です。
半導体関連企業が集積する、菊陽町と合志市にまたがる「セミコンテクノパーク」周辺では、すでに渋滞が深刻な問題です。
TSMC進出で、さらなる悪化が懸念されています。
24時間体制で動く半導体の工場。
トラブルがあった場合、すぐに駆けつける必要があるため、交通アクセスの良さが重要です。
台湾の呉さん
渋滞は結構あります?
熊本市の不動産業者 中川さん
ここはすごい密集しているので、避けた方がいい。こちらからならスムーズ。
TSMCの工場に近い物件を探しますが、争奪戦となっているため、容易ではありません。
数千万円を即決
この日、視察した物件は7件。
ビジネスのスピード感が早い台湾。
呉さんは、最後に訪れたこの土地を見て30分ほどで、購入を決めました。
価格は数千万円。
駅や工場が近いため渋滞の影響も大きくなく、土地の形や周辺環境が良いことも決め手でした。
今後、ここに社員寮を建設する予定です。
台湾の呉さん
「決めました。99%。なかなかいい物件ですよね。ここに4LDKの建物を2つ作りたいです」
熊本市の不動産業者 中川ますみさん
台湾の方は、物件を気に入られたら、もう即決っていう形で、スピードは日本に比べて早い。決断力がある方が多い。
TSMCの工場の操業開始まで、あと1年半余り。
台湾企業の動きが加速するなか、呉さんは熊本の姿も変わっていくと感じています。
台湾の半導体関連設備メーカー 呉勁毅 工場長
「TSMCの工場がある台湾の台南も、以前は同じ状況でした。前は全部畑でしたが、いまは建物に変わりました。ここはTSMCのおかげで、にぎやかになると思います。将来は、日本のもっと大きな都市になると思います」
日本貿易振興機構、JETRO熊本によりますと、今回の企業を含めて、熊本進出を検討している台湾企業は10社あり、進出の相談や支援にあたっているということです(5月11日時点)。
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