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幸せ願う草履

熊本地震 7年目の春
  • 2023年05月08日

益城町に、縁起物の「草履」を30年以上前から作り、無償で人々に配り続けている人がいます。自宅が地震で全壊しても中断せず作り続けてきました。その理由とは。

幸せ願う草履づくり

益城町に住む長尾美智子さん(86)の特技は「草履」づくりです。「チカラシバ」というイネ科の葉を干してつくったわらを使い、器用に編みあげていきます。15センチほどの子どもサイズの草履は、わずか5分ぐらいで完成させてしまいます。農家育ちの長尾さんは、この草履づくりを、幼い頃に祖母から教わりました。大人になってからはつくることはありませんでしたが、30年ほど前に、地域の神社から神事で使う草履をつくって欲しいと要望がありました。昔を思い出しながらつくったところ、あっという間に草履が出来上がり、出来の良さが評判となりました。それがきかっけとなり、本格的に草履づくりを始め、縁起物として人々に無償で配るようになりました。

よどみなく一気に編み上げる
長尾美智子さん
カラフルな鼻緒がチャームポイント

長尾美智子さん
「昔は、旅に出る時に、草履を馬のくらに結んでいけば難を逃れ、無事帰るといわれていました。草履を渡した人たちが、健康で、病気をしないよう願って今はつくっています。」

地震で自宅は全壊 九死に一生を得る

7年前の熊本地震では自宅が全壊し、長尾さんは家の下敷きになりました。息子さんに救助され、九死に一生を得たと言います。

全壊した自宅周辺
全壊した自宅

長尾美智子さん
「焼夷弾が落ちた時のように、いきなりズーンと2階が落ちました。命があっただけでも感謝しています。」

中断せず、草履づくりを続ける

地震後は倒壊した家の前に車を駐めて、5か月にわたり車中泊を重ねましたが、その間も倒れかかった倉庫の中で草履づくりを続けました。自宅の前には、10数台の車が駐車し、車中泊をする人々がいました。同じ境遇の人々の慰めになればと、長尾さんはつくった草履を配りました。人々からは「これからの励みになった」という声が寄せられ、その喜ぶ姿が長尾さんを草履づくりの原動力になったといいます。

地震後も草履をつくり続けた

つらい経験乗り越え 年間3000足も

全壊した自宅は3年前に再建を果たしました。みなし仮設に入ったことで途絶えていた近所の人たちとの交流も戻り、今ではようやく世間話に花を咲かせることも出来るようになりました。近所の人たちも、大なり小なり地震で被害を受けた身です。近所の人たちにとって、そして長尾さんにとって、地震後の気持ちの支えとなったのが「草履」だったと言います。長尾さんがつくる草履はいまでは年間3000足に及ぶようになりました。

近所の人たちとの語らい
たくさんの草履で描いた花
長尾美智子さん

長尾美智子さん
「みなさんが一日でも長生きしますように願ってつくっています。みなさんが喜んでくれるのが何より楽しいですね。」

動画はこちら

 

  • 松永佳奈子

    福岡局・カメラマン

    松永佳奈子

    令和4年入局
    静岡県出身
    阿蘇でピクニックがしたい


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