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高校野球九州大会開幕!熊本代表4校に法性アナ迫る!【有明】

  • 2023年04月20日

春の高校野球九州大会に出場する県大会4強の有明、文徳、熊本商、城北に迫る企画。今回は県大会で優勝した「有明」です。

【“走力”に手ごたえ 49季ぶり県優勝 25年ぶり九州大会】 

春の県大会を制し、25年ぶりの九州大会出場を果たした荒尾市にある有明高校。 優勝の大きなカギは“走力”です。県大会6試合で仕掛けた盗塁は21回。その中でアウトになったのは、たった3回だけです。その秘密が、ボールを使う前のアップにありました。

 

ウォーミングアップ

 ミニハードルを使ったり、両手を上にあげたり、横向きで腿をあげたり・・・。様々なバリエーションで走っていく選手たち。しかもその走り方は、野球選手というよりも、陸上選手に近い感じがしました。実は、去年冬から「走り専門のトレーナー」を招き、走りに特化したトレーニングを行ってきたのです。

高見一茂監督(43)

春の県大会で、正直、走力の手ごたえをここまで感じられるとは思っていなかった。基本、サインは出さずに、選手たちが行ける時に行くという方式。新たなトレーニングによる純粋な走力アップのほか、普段の練習でも、実戦形式を多く入れているので、その中でスタートの技術や、キャッチャーの配球を踏まえ、どのタイミングだとスタートが切りやすいかなど、盗塁に必要な様々な素養も身についてきた結果だと思う。この春で「有明は機動力がある」と印象付けられたはずなので、夏に向けては、これをどう生かしていくかがポイントになる。

 

 【「このランニング意味ありますか?」飛躍のきっかけは選手からの言葉】

 走ることに特化したトレーニングを取り入れたのには理由があります。新チームが発足したばかりの去年夏。有明高校は、多くの中距離、長距離系のハードなランニングメニューをこなしてきました。満を持して臨んだ、去年秋の県大会。結果は、熊本国府に敗れ、初戦敗退。大会後、キャプテンの山下選手と高見監督が今後のことを話し合う中で出てきたのが「夏、あれだけ走ったのに勝てなかった。あのランニングメニューで僕らは本当に強くなっているんでしょうか?」という意見でした。 

山下登阿キャプテン

しんどいことをたくさんやってきているのに、思うような結果が出ない。このランニングで足は本当に速くなるのだろうか?メンタル強化のためにやっているだけなのではないか?と選手たちの中でも不満がたまっていた。「もっと技術的な練習に時間を割くべき」「トレーニングのアプローチを変えるべき」という意見も選手たちから出ていたため、この思いと、選手たちがどんな目的で、どんな練習をしたいか、キャプテンや副キャプテンなどのチームの幹部が書くノートにまとめて高見監督に伝えました。

高見監督に提出した通称“幹部ノート”

 

新チームが発足後から、夏やってきた練習量や、練習試合での他県の強豪校との戦績などを踏まえ「今年の秋はいけるかもしれない」という自信が自分自身の中にあった。しかし、蓋を開けたら、秋の大会は初戦敗退。これまでの自分の価値観や考えを一新して、何か新しいことをやらないと勝てないのではないかと思っている時の、選手たちからの意見だった。「何を目的に」「なぜ」「どのようにして」というアプローチを改めて大切にした。

 高見監督は「県内のキャッチャーは抜群に肩の強い選手はいないから、勝つなら「足」だと思っている。だからこそ走力を鍛えたい」という「目的」をまず選手たちに伝え、共通認識を持った上で、これまでやみくもに走っていたトレーニングを廃止。繋がりがあった「走り専門のトレーナー」を招き、“質”を重視するトレーニングにシフトチェンジしたのです。 
 

【「見える化」で客観的な評価を】

また、選手たちがランニングトレー二ングに主体的に、納得して取り組めるよう、定期的な測定を行い、客観的なデータで共有し、紙で貼り出しました。

走力測定データ

30m、50mそれぞれのタイムのほか、目標タイム、また赤色で塗られているのは、前回の測定よりもタイムが悪くなった選手です。また、試合の結果なども同じように共有したのです。

個人試合成績データ

 

走ることに限らず、全員が見られる形で客観的なデータで共有することで、自分にはいま何が足りないのか、そのために何をすればいいのか、目的と手段を明確になり、一人一人の意識が圧倒的に変わったと感じている。

 新たなトレーニングや「見える化」により、様々な数値が飛躍的に伸び、結果、春の県大会優勝という結果に繋がりました。

結果を出すきっかけを高見監督はじめ指導者の皆さんがくれた。この冬を経て、指導者と選手が本音でぶつかれるようになったし、結果的にチームとして成長していると感じている。

 

 【「チームを一つに」3年生が本音で語った冬】 

同じ時期、選手もばらばらになっていたとキャプテンの山下選手は感じていました。

秋に初戦で負けた挫折や、試合もなく、目標が見えづらい中で、冬という期間は難しい時期だったと思うが、キャプテンの自分の意見も通りづらく、不満や弱音が選手間で多く出ていました。簡単に言えば「ばらばら」。どうにかチームを立て直さないと、春以降もまずいと思った。

山下キャプテンは、3年生1人1人と個別のミーティングを行い、「相手から見て自分(山下キャプテン)に改善してほしい点」、「山下キャプテンが相手に改善してほしい点」、「2人の目標」を共有する場を設け、それを、選手ごとに、自らがつける“キャプテンノート”に書きました。

 

ある選手とのやりとりが書かれているページ
ある選手とのやりとりが書かれているページ

日常のコミュニケーションだけでは話せない本音を、1対1で、それぞれと話したことで、チームとして向かうべきベクトルの方向や強さが定まり、練習の雰囲気、何よりチーム状況が大きく変わったと言います。

最低限のところ以外は、いまは、ほとんどこちらから何も言っていない。一人一人が考えてやっているように感じる。それぞれの力はもちろんあるが、山下がキャプテンだから、いまのこのチームになっていると感じている。

 

【「甲子園に導かれるチームへ」逆算し臨む九州大会】

チームのことを適宜記載する、通称“幹部ノート”

 いまのチームスローガンは「甲子園に導かれるチームになること」。そのために、野球で、日常生活で、何をすべきなのかが、逆算して書いてあります。

 

幹部ノート

九州大会に向けてすべきことは「自分たちの野球をすること」と「相手から収穫を得ること」。そして夏の甲子園に向けては「あいさつ・整理整頓などの人間力向上」も欠かせません。

冬、そして春の優勝を超え、さらに成長している有明の初戦は、今大会の開幕ゲーム22日(土)午前10時~、藤崎台球場で「日南学園(宮崎)」との対戦です。

  • 法性亮太

    NHK熊本 アナウンサー

    法性亮太

    大学まで野球一筋15年
    世田谷西シニア(全国優勝)-慶應高-慶應大

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