ことば塾「似ていることば」法性アナ
- 2023年05月17日
今回のテーマ「すえ」と「まつ」
「すえ」と「まつ」 違いは?
「〇月すえ」と「〇月まつ」のように、日付の表し方で使いますよね。以下のような違いがあります。
「すえ」には「幅がある」
「すえ」には、物の端(はし)の部分という意味があります。たとえば「こずえ」は「木の『すえ』の部分」というのが語源です。
「端の部分」ですから、ある程度の幅・長さがあります。この言い方を時間表現に当てはめたのが「〇月すえ」です。ですから「〇月最後の数日」を表したいときに使われます。
「まつ」は、その背景から「限定的」
公的な場面で使われる「まつ」。公的な場面では正確さが要求されますから、幅を持っているのはあまり好ましくなかったのかもしれません。 そこから「〇月まつ」と言ったら、限定的に「月の最終日」のことを指すというニュアンスになるようです。
ややこしいですが、例外も!
ただし同じ「~まつ」でも、放送で「年末」や「年度末」という場合には、「時間的に幅がある」期間を指すものとして使うことにしていて「すえ」と同じ用法です。
「あす」と「あした」 違うことばなの!?
いまでこそ、特に区別することなく使っている言葉ですが、元々は違う意味をもっていたそうで・・・
この使い分け、あの平安時代の随筆「枕草子」でもされていたんです。
意味は「次の日は、一日中外出を控える日なので、家に閉じこもらなければならない」。
意味は「山と空の間が明るくなる次の日の朝」。「あす」と「あした」が明確に使い分けられていることがわかります。
なぜ「あす」「あした」は曖昧に使われるようになった?
意味が曖昧になった背景にあったのは「文明の力」の存在でした。
それは、時計です。
時計がない時代は、日の出とともに働き、日が暮れると家に帰るという生活スタイル。 日が出て動き出す頃を「あした」、日が暮れ家に帰る頃を「ゆうべ」と表現していました。 つまり1日の区切りの時間帯を表すときに「あした」は使われていました。
しかし、時計が登場し、いまが1日の中のどのくらいの時間なのかわかるようになると、次の日の朝、日が出て動き出す頃を表す「あした」はあまり重要ではなくなっていきました。いつの間にか「あす」も「あした」も次の日1日を指すようになったと一説では言われています。
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