花壇に祈りを込めて
- 2023年04月14日
かつて南阿蘇村のアパートで、学生たちの世話をしていた女性が、花壇をつくって四季折々の花を育てています。その理由とは。
亡き学生を偲ぶ花壇
南阿蘇村黒川地区。雨上がりの花壇で、赤いラナンキュラスの花が早春の風に揺れていました。ささやかな広さの花壇で、手入れをしている人を見つけました。渡邉ヒロ子さん(78)です。花壇のある場所は、実は学生が亡くなった場所でもありました。
楽しかった学生との交流
かつて南阿蘇村黒川地区には、東海大学阿蘇キャンパスがあり、学生向けの下宿アパートがいくつもありました。そのひとつで、40年ほど前から下宿アパートを経営してきた渡邉さんは、まかないもするなど学生の世話をしてきました。渡邉さんは、「もう家の子どもたちみたいに接していました。」と懐かしそうに語ります。
アパート倒壊で学生が犠牲に
7年前の4月16日。南阿蘇村は激震に見舞われました。いくつものアパートが倒壊し、学生3名の尊い命が失われました。そのなかの1名が、渡邊さんのアパートで犠牲となってしまいました。渡邊さんは、「見た瞬間に気絶するくらいショックを受けました。でも自分がちゃんとしていないと、ほかの学生さんたちが心配すると思い、なんとか気丈に振る舞うしかありませんでした。」と当時を振り返ります。
跡地につくった花壇
下宿アパート近くにあった渡邊さんの自宅も全壊しました。渡邊さんは、アパート跡地に自宅を再建しましたが、夫の馨さんと話し合い、庭に花壇をつくって四季折々の花を植えるようにしました。亡くなった学生を偲んで、花を絶やさないようにしようと決めたそうです。この春はシバザクラ、ラナンキュラス、ナデシコ、チューリップが美しく咲いてくれました。
いつまでも花を育てたい
渡邉さんは「亡くなった学生さんにも見てもらえるように、これからも夫婦で話し合って、寒い時も暑い時も花を途切れさせないように一生懸命花を育てていきたいです。」と語ってくれました。
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