熊本冬点描③ 幻想 氷に包まれた茶畑
- 2023年02月09日

カメラマンが冬の表情を映像で切り取るシリーズ 第3弾
茶畑が凍る!
菊池市旭志では、なんと茶畑全体が凍る光景が見られるんです。地元の農家、中山繁雄さんが栽培する30アールの茶畑は「さえみどり」という品種が栽培されています。この品種は寒さに弱く、気温が氷点下になると葉が傷んでしまい、春の収穫に影響が出てしまいます。そこで、あえて茶畑を凍らしてしまうんです。

日中も氷点下でスプリンクラー作動
1月下旬。数年に一度の寒波が茶畑を襲来しました。日中からはやくも氷点下となったため、茶畑ではいっせいにスプリンクラーが自動で水をまきはじめました。茶葉にかかった水滴は、徐々に氷となり、固まっていきます。


日が暮れて真っ暗になってもスプリンクラーは回り続け、水はかけられ続けます。

そして現れた氷の世界
翌朝。マイナス7.7度まで冷えこんだ茶畑は一変。一面が分厚い氷で包まれていました。葉っぱの上にはまるでキノコの傘のように丸く、さらに下にはつららが下がり、まるでたくさんのクラゲが泳ぐかのような形へと成長していました。まさに氷が作り出す芸術です。


氷で包む秘密とは
茶葉を氷で包むとかえって良くないのでは、と思いますが、実は水が氷に変わるときに「潜熱」とよばれる熱が出るそうで、そのおかげで茶葉のまわりの温度が下がりすぎず、0度の気温に保つことが出来るそうです。今回の取材の日のようにマイナス7度にも下がると、氷の中の方が温かいことになります。いわば「氷のダウンジャケット」を茶葉に着せているようなものなんです。

寒さに耐え、まろやかな味へ
撮影では、機材にかかった水もすぐ凍るほどで、私も足先から体と携帯用のカイロをいくつも着けていましたが、我慢出来ないほどの寒さでした。こんな寒さに耐えたお茶は、一体どんなお茶になるのか気になります。生産者の中山繁雄さんによると、甘みがあってまろやかな味のお茶に仕上がるそうです。中山さんは、「家族団らんで飲んでいただきたいです。」と話していました。氷で包まれたお茶は、春になると新芽がすくすくと伸び、4月下旬には新茶として出荷されます。

動画はこちら