ページの本文へ

NHK熊本WEB特集 クマガジン

  1. NHK熊本
  2. 熊本WEB特集 クマガジン
  3. 2023年1月 熊本の「大雪」を結城気象予報士が分析!

2023年1月 熊本の「大雪」を結城気象予報士が分析!

「風向き」が雪の運命を決めた?
  • 2023年02月06日

気象予報士の結城弘汰(ゆうき・こうた)です。

1月24日から25日にかけての大雪、みなさん大丈夫でしたか?

私が出演する「クマロク!」の気象情報では「およそ7年前(2016年1月24日〜25日)と同程度の寒気が流れ込み、大雪そして厳しい冷え込みのおそれがある」とお伝えしました。

実際に厳しい冷え込みとなり、天草芦北地方では大雪になったところもありましたが、熊本市内など県の北部では、雪はあまり降りませんでした。

この違いはなぜ起きたのでしょうか。
今回の大雪と7年前の大雪を、特に「風」に着目して解説してみます。

自信たっぷりに解説する結城予報士でしたが…(1月23日)

「熊本県は西側が海ということ」が重要

まず熊本県の地形を確認しましょう。
熊本県は西側がおおむね東シナ海に面している一方、北、東、南側が山に囲まれています。

このため西高東低の冬型の気圧配置で西よりの風が吹く場合に、海側から雲が流れ込んで、全域で雪が降りやすいのです。
7年前の大雪が、まさしくこのパターンでした。

7年前の大雪、上空は西北西の風だった

2016年1月24日、上空では西北西の風が吹いていました。

気象レーダーの画像はこちらです。

7年前の大雪の特徴やその原因について熊本地方気象台の地域防災官、沖吉久司氏に伺いました。
沖吉氏によると、「7年前は上空の西北西の風にのって、発達した雪雲が長崎県の五島列島や島原半島などを乗り越えて県内に流入した。このため熊本市内や水俣市など広い範囲で雪が降った」ということです。

7年前は県内の広い範囲で雪が降って、1月24日には熊本市で4センチ、1月25日には人吉市や水俣市の多いところでは20センチの積雪がありました。
この大雪や低温の影響で、農業施設や水道管の破損などが確認され、県内の広い範囲に影響が及びました。

今回の大雪 上空は北西の風だった

では今回の大雪、上空の風はどうだったのでしょうか?
風向を見てみますと、上空では北西の風が吹いていました。

気象レーダーの画像はこちらです。

天草芦北地方では長崎県の五島列島を越えて雪雲が流れ込んだため、雪の量が増えました。
天草市牛深では、1月25日午前3時に13センチの積雪を観測したのです。

一方、熊本市など県の北部では、あまり雪が降りませんでした。

この原因について熊本地方気象台の沖吉氏に伺いました。

沖吉氏によると「今回は長崎県・佐賀県などの地形の影響を受けた」ということです。
海上で発生した雪雲が、長崎県や佐賀県の山などに阻まれたため、県の北部では雪雲が入りにくかったということなのです。

雪の降ったところとあまり降らなかったところ……県内でもさまざまとなりました。

地形と気象の関係性は深い

今回と7年前の上空の風を比較すると、風向は「北西」と「西北西」とわずかな違いでした。
このわずかな風向きの違いによって地形の影響も大きく変わり、雪の降る場所、その量も変わってくるのです。

このように、地形と気象の関係性は切っても切れないものなのです。
また7年前の方が上空の寒気が強かったため、広い範囲で大雪となったようです。

実は私は、天草で今回、これほどの大雪になるとはイメージできていませんでした。
九州・熊本では、あまり大雪の予報が出ることはありませんが、それだけに、ひとたび大雪になった場合は影響が大きくなることが考えられます。
改めて、気象を予測することの難しさを痛感しました。

今回、気象予報士として初めての大雪を経験し、たくさんのことを学べました。
今後の気象情報に生かしていきたいと思います。(気象予報士 結城弘汰)

  • 結城弘汰

    気象予報士

    結城弘汰

    2022年4月からNHK熊本放送局で気象キャスター
    ことしの目標はゴルフで「100」を切ること!

ページトップに戻る