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シリーズ 67年目の水俣病「健康調査の行方」

第1回「何が被害か」最先端技術を頼った国
  • 2023年02月22日

「水俣病で被害を受けた人が何人いるのか」

みなさんはその答えを知っていますか?

実は、被害が公式確認されてから67年となる今も、その数は明らかとなっていません。

「公害の原点」と言われながら、今なお分からない被害の全体像。その解明に向けて、国が行ったある発表が、新たな波紋を呼んでいます。
いま、現地で何が起きているのか、シリーズでお伝えします。

(熊本放送局 記者 西村雄介 ディレクター 吉田渉)

被害者側の怒り「早く健康調査を」

「茶番劇としか言いようがない。本当に残念だ」

2022年12月、水俣市にある「国立水俣病情報センター」で行われた説明会。その場で相次いだのは、水俣病の患者や支援者たちの国に対する怒りの声でした。

この日、国は、最先端の技術で水俣病の症状を調べるという新たな手法を発表。15年以上をかけた研究の成果でした。

(環境省担当者)
「メチル水銀による脳への影響をある程度客観的に評価できるようになった」

発表を行った国への被害者側の反発。そこには、新たな手法の研究に時間を費やすのではなく、「広い範囲での健康調査を、一刻も早く実施してほしい」という思いがありました。

(被害者団体・支援者)
「明日からでも出来るじゃないですか、健康調査。あなたたちがやっていることは全く欺瞞」

今も被害の全貌が分からない水俣病

化学メーカー・チッソが工場から流した排水に含まれる有機水銀によって、不知火海一帯の魚介類が汚染されて起きた公害、水俣病。

1956年に公式確認されて以来、その被害をどこまで認めるのか、論争が続いてきました。

これまでに熊本県と鹿児島県で「患者」として認定されたのは、2284人。国の基準で審査され、補償金が支払われた人たちです。

さらに、患者とは認定されていないものの、一時金が支払われるなど政治的な救済策の対象になった人たちが、あわせておよそ4万8000人います。(写真表示は、重複を除いた実人数)

ただ、不知火海の沿岸にはおよそ47万人が住んでいたとされていて、被害者がどれぐらいいるのか、その全体像は分かっていません。

そのため、被害者側は行政に対し、不知火海沿岸で健康調査を行い、実態を明らかにしてほしいと長年、求めてきました。

「何を被害と認めるか」最先端技術を頼った国

一方、行政はどこまでを被害として認めるのか、ある症状をひとつの基準にしてきました。

それが「感覚障害」という症状です。

感覚障害は手や足などがしびれたり、感覚が鈍くなったりする症状で、水俣病の場合は全身に現れます。

これまでは医師が筆や針などで体に触れ、その反応を頼りに診断をしていました。

しかし、こうした方法は主観に左右されて誤差が生じやすいとして、国は新たに感覚障害を機械で調べる手法を発表しました。

この手法ではまず、手首に電気で刺激を与え、それが脳に伝わったときの反応を、脳磁計という機器で計測をします。

さらにMRIで脳の断面を調べ、水俣病特有の脳の異常を検知できるというものです。

手法の開発に取り組んできた「国立水俣病総合研究センター」の医師、中村政明さんは、感覚障害を主観に頼らずに検知できるよう研究を続けてきました。

(中村政明医師)
「水俣病の神経症候の中で感覚障害が一番重要であると。それを客観的に評価をできないかということで。水俣病の可能性を見いだす検査になるかなと思います」

この手法を発表した国に対し、怒りの声を上げた被害者たち。

その背景のひとつには、感覚障害だけではない多様な症状の訴えがありました。

第2回に続く

  • 西村雄介

    熊本局記者

    西村雄介

    2014年入局 熊本局が初任地
    2016年の水俣病公式確認60年以降、取材を継続

  • 吉田渉

    熊本局ディレクター

    吉田渉

    2019年入局 熊本局が初任地
    2年目から水俣病の取材を継続

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