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答申第79号 |
平成20年7月22日 |
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の諮問第74号に対する意見 |
1. |
審議委員会の結論 |
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視聴者から開示を求められた「秋葉原タワー直下における電子機器への妨害実験」の実験内容および結果を示す資料(以下、本件文書という)について、被測定機器のメーカー名および機種名を不開示とし、当該部分を除いた部分を開示するとしたNHKの判断は妥当である。 |
2. |
再検討の求めに至る経緯 |
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視聴者から本件文書の開示の求めがあった。本件文書における実験は、在京民放5社およびNHKで構成するプロジェクトが実施したものであり、実施にあたってはNHK放送技術研究所が協力した。これに対しNHKは、本件文書が開示された場合、在京民放5社およびNHKの事業活動に支障を及ぼすおそれがあり、NHK情報公開規程(以下、規程という)8条1項1号および4号の不開示情報に当たるとして不開示とした。これに対しこの視聴者から、秋葉原タワーと同様の目的・規模の新タワーが墨田区に建設される計画があるが、これは主として在京テレビ6社の利益のために建設されるものであり、新タワー建設に伴う影響等について当該6社は周辺住民への説明責任を負う、などとして再検討の求めがあった(諮問第74号)。
NHKでは、在京民放5社に対して意見照会を行ったが、在京民放5社からは、現実には発生し得ない環境での実験測定データが含まれており、このデータが開示されると無用の誤解を招くおそれがある、などとして開示に反対する意見が提出された。NHKとしては、視聴者および民放各社の意見について検討した結果、本件文書のうち、被測定機器のメーカー名および機種名を除いた部分については、誤解を生じさせないための説明を加えた形で開示すると判断するに至った。そこで規程12条3項に基づき、在京民放5社に対し一部開示を行う旨の連絡を行った。
この一部開示の連絡に対して、日本テレビ放送網株式会社から「今回の資料を参考に悪意の第三者が情報テロを企てた場合の損失と混乱を懸念する」などとする再検討の求めがあった(諮問第74−2号)。株式会社フジテレビジョンからは、「タワーからの各角度に於ける受信点での電界強度が正確に記述されており、悪意を持った第三者がその方向と電波の強さをもって妨害電波を発射して社会を混乱せしめる行為が容易にできると想像される」などとする再検討の求めがあった(諮問第74−3号)。株式会社テレビ朝日からは、本情報は一定の条件を満たす妨害電波を発射すれば、通信機器に影響を与えることができるとも読み取れるとしたうえで、「開示することにより、条件を満たす特殊機器を製作し電波を発射し社会に混乱を与えたいとの考えを惹起するおそれがある」などとする再検討の求めがあった(諮問第74−4号)。 |
3. |
NHKの見解の要旨 |
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この実験は、平成13年当時に構想された秋葉原地区における新たなテレビ塔(秋葉原タワー)からデジタル波を送信した場合を想定して行われたものである。計算で求めたタワー近傍の電界強度に一定のマージンを加えた電波環境をつくり、電子機器(ラジオおよびパソコン)を持ち込んで影響を調べたもので、実験の結果は、日常の放送では何ら影響はない、というものであった。しかしながら、本件文書にはこの実験結果に加え、どの程度の電界強度で電子機器にノイズが発生するかという参考実験の結果も合わせて記載されているため、開示した場合、実験結果が誤解される可能性が高く、墨田区における新タワーの建設計画ひいてはデジタル放送事業の実施に支障をおよぼすおそれがあるとして不開示とした。しかし、再度検討を行った結果、実験について説明を付加することで誤解を避けることが可能であると判断するに至った。なお、本件文書のうち被測定機器のメーカー名および機種名については規程8条1項4号の不開示情報に当たり、開示することはできない。
在京民放3社が再検討を求めた理由については、安定した放送電波を送出し続けることが放送事業者の使命であり、各社が抱く懸念はNHKとしても理解できないわけではないが、上記一部開示の判断を覆すには至らないと考える。 |
4. |
審議委員会の判断 |
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本件文書のうち、被測定機器のメーカー名および機種名については規程8条1項4号の不開示情報に当たると認められる。
本件文書のうち被測定機器のメーカー名および機種名を除いた部分について、在京民放3社は開示されると放送を妨害する行為に利用されるおそれがあると主張しているが、当該部分が開示されても電波妨害を誘発する要因にはならないと考えられ、事業の遂行を害するおそれがあるとは認められない。
したがって、一部開示するとしたNHKの判断は妥当である。 |
5. |
審議の経過 |
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平成19年 |
5月24日 |
(第84回審議委員会) |
諮問、審議 |
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6月28日 |
(第86回審議委員会) |
審議 |
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7月12日 |
(第87回審議委員会) |
審議 |
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7月30日 |
(第88回審議委員会) |
審議 |
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9月26日 |
(第90回審議委員会) |
審議 |
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10月11日 |
(第91回審議委員会) |
審議 |
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11月22日 |
(第93回審議委員会) |
審議 |
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12月13日 |
(第94回審議委員会) |
審議 |
平成20年 |
1月10日 |
(第95回審議委員会) |
審議 |
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1月24日 |
(第96回審議委員会) |
審議 |
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2月14日 |
(第97回審議委員会) |
第74−2,3,4号
諮問、審議 |
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2月28日 |
(第98回審議委員会) |
審議 |
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3月13日 |
(第99回審議委員会) |
審議 |
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4月 3日 |
(第100回審議委員会) |
審議 |
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4月24日 |
(第101回審議委員会) |
審議 |
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5月21日 |
(第102回審議委員会) |
審議 |
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6月 5日 |
(第103回審議委員会) |
審議 |
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7月 4日 |
(第104回審議委員会) |
審議 |
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7月22日 |
(第105回審議委員会) |
審議、答申 |
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